詩が降りてくるのを待っている
誰かのために書く詩が降りてくるのを待っている
考えたこともなかった 誰かのために書くなんて
だけどいまむしょうに書きたい気持ちに誘われた
昨日の夜の寂しさがそうさせるのか
君が言った
「寂しいって綺麗な言葉だと思っているから」
僕が一番寂しいときに言ってくれた
誰かのための詩をここで待ってる
誰かの毎日を描く詩が降りてくるのを待っている
誰かの一日は林檎が舞踏しているかもしれない
誰かの毎日はピアノが泣いているかもしれない
君が言った
「嬉しくて楽しいね」
僕はそれを描きたかったんだ
夕べ寝る前にミルクティー飲んでいるとき
ミルクの淡いの中にいた人のことを描きたいと思った
誰かの願いを記す詩が来るのを待っている
できるだけあり余る願いの方がいい
君は言った
「毎日が死ぬまで幸せで続くね」
それを僕の知ってる言葉の中から探したかった
誰かが儚い夢想だと笑うかもしれない
でも構いやしない
今までそれを書きたかった
僕の最後にふさわしいのはそれだったから
君のような誰かを見つけた詩を書き留めたいと思った
できればシチューを作って僕に食べさせたときの君のような
僕の途惑いと迷いが一日の最後に終って君が言った
「どんなリルでもいいのよ」
あれが忘れられない
僕は守ってくれる誰かを探してここまできた
それを見つけたときの静かさが僕の終着だった
君のような誰かが人の愛を教えてくれる詩を書きたかった
いつも誰かに怒っていた僕
誰かを許せないと憤っていた僕
君が言ったんだ
「わたしの分まであの人を許してあげて」
君だけだ
僕の愚かさに寄り添ってくれて示してくれたのは
あの時からだ
僕が決して人を裁かなくなったのは
君のような誰かが僕を受け入れてくれる詩がほしくなった
いつも心配していた
人が去っていくこと
誰かと悲しい結末を迎えること
心配で僕は本当の僕ではいられなかった
君が言ってくれた
「リルが心配でも私は何も困らない」
地図を見つけたと思った
僕を取り戻してく物語の地図だった
君のような誰かが僕の人生を彩ってくれる詩が必要だった
大勢の人間が通り過ぎる中で出会ったあの時を覚えてる
君が聞いていた音楽に気を留めて見知らぬ君に訊いた
「母が好きだった曲です」
驚いた
曲以上に君の声が音楽だったから
僕の今までの恋に音楽はなかった
いつも誰かに音楽を吹き込んでほしいと願っていた
君のような誰かと恋に落ちる顛末の詩を書きたくて仕方ない
ひと月や一年で終わる恋でない
諦めてしまった人生を始めるための恋
恋が死ぬまでずっと続くために描かれる詩だ
終わるかもしれない怯えに震えた時
君が唐突に言った
「わたしはリルに命がけ」
僕は分かった
誰かは君だったと
君のことをいま詩に書いている
遠まわしだけど最初からこれは君に捧げた詩だった
君が言ってくれたから
「リルは私が一生守る」
犬のように僕は思ったさ
詩しか書けないけど
この人生を君で終わりたいってね
待っている
いつか僕たちの子供がこの詩を見つけること
誰かは笑うかもしれないね
詩が降りてくるのを待っている
何でもいいのでとにかく書いている。
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