薄く、灰色に近い、透明の白

花冷えの、稜稜とした日



眠れる魚は泳いでいく


混じりっ気のない、透き通った
ラムネの瓶の中に入っているビードロの様な瞳で


灰色に近い、白を映し込む


ほろ苦く感じる風
バレンタインでも無いのに



微笑み交わす、愛想笑い

あなたの様な人を何処かで見たことがある
ひとひら、ひとひら
舞い落ちる花


この感慨は、昔から存在していた様な気がする

もう、忘れてしまいたいのに



春雷
花が降ってくる
こんなに幸福な日も
またと無いだろう


この幸福な日に
空は病んで
滲みだす


もう、忘れてしまいたいのに



何かが私を誘い、導こうとしている

風に乗って、甘い香りが漂う
ホワイトデーでも無いのに



人の群れが、その波に浮かぶ花びらが、私の脳を泡立てる



雑踏


フェイク


リアルファー


つかまえた
その首に絡みつく
生気の無い温もり



空は白くて
花は薄い赤で



花が落ちる
ひとひら、ひとひら

こんなに幸福な日も無いのに

こんなに
こんなに幸福な


こんなに


幸福な、幸福な日も存在しない



この世界の何処かで
誰かが泣き崩れている様な
こんな日は



こんなに幸福な日に
あなたを抱きしめられもしない



こんなに
こんなに幸福な日も無いのに

こんなに幸福を感じる日はまたと無い


誰かが爆発に巻き込まれ、傷を負っている様な、こんな日は
 



こんなに
こんなに幸福な日はまたと無い

幸福な


こんな日は



ひとひら、ひとひら
落ちていく



爛漫の下
陰りゆく白


しんと冷えた
眼には映らぬ
淡く萌える
何かが大気に溶け入って



知らぬ間に色を変えていくのを、赴くままに、じっと眺めていたい

薄く、灰色に近い、透明の白

ちいさい春みつけた。
読んでくださりありがとうございました。

薄く、灰色に近い、透明の白

幸せなはずなのに、何となく心が痛む、そんな日は。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-12

Copyrighted
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