万年筆

   万年筆

 原稿は万年筆で書いています。高いものではありません。千円くらいで買えるやつです。外国製の高い万年筆もあったのですが、インクをどうしようかとあれこれやっているうちに、どこかに行ってしまいました。無くす癖がある私には、千円ので十分です。
 細字と中字の二種類があります。今は細字を使っています。ちょっと引っかかる感じがします。中字のほうがすらすらとペンが走ってくれるのですが、いかんせんインクを多く使ってしまうで、今は使っていません(たまたまお休みという意味です。細字のカリカリ感は、長いこと使ってゆくと感じなくなります)。
 紙はレポート用紙を使っています。そう、万年筆というのは、とにかく紙を選びます。紙によってはインクをはじいてしまったり、吸いすぎたりします。紙だけでも、だいぶ書き味が変わってしまうのです。マス目の入ったノートや原稿用紙(安物です)も試してみましたが、結局、レポート用紙に落ち着きました。下敷きは使わず、紙束の厚みをクッションにして書いています。
 インクは黒を使っています。紫は電気スタンドのオレンジの光で見えなくなってしまいますし、ブルーブラックは色あせると読めない字が出てしまいます。インクを買いにゆくたび、今度は茶色にしようか赤にしようかと迷うのですが、結局、黒を持ってレジに向かいます。インクはカートリッジ式のを使っています。これは単に、近所のお店ではそれしか手に入らないからです(インクの色に迷いがあるうちはカートリッジで宜しいと、啓示がおりているのかもしれません)。

 万年筆は手入れが大変です。長く使わないときは、水で洗っておかないといけません。イチゴのパックは必需品です。当面使わないペンは、先を外して水を張ったイチゴのパックにポチっと一晩漬けておきます(そこまで長く漬けておかななくても良いのですが、結局忘れて気づくのは翌朝になるので、一晩になってしまいます)。
 万年筆は疲れないというのは本当です。手が疲れるよりも早く、紙が無くなるか、インクが無くなるか、書き終えるか、眠くなります(眠くなるまで書き続けられるのは、ちょっとした魔法みたいで面白いかもしれません)。万年筆に慣れてしまうと、まずボールペンが使えなくなり、シャープペンシルも使いづらく感じます。逆に、ボールペンやシャープペンシルを使ったあとに万年筆を持つと、えらく力が入ってしまい、紙に彫っているようになってしまいます。(もちろん、抜群の書き味で見事殿堂入りを果たしたボールペンもありますし、使い勝手ナンバーワンで見事筆箱入りを果たしたシャープペンシルもあります)
 楽なことこの上ない万年筆ですが、乾燥に弱いのも欠点です。次の文を考えているうちに乾いてしまい、いざペンを動かしてみるとインクが出ない。ということが、よくあります。思いついたことを思いついたときに書き留めるには、使いづらい道具かもしれません。指の間にすっと収まってくれので、持っていることが気になりません。指に挟んだまま調べ物をしようとマウスをカチクリやっていると、うっかりペン先をどこかにぶつけてしまわないかと、ひやっとします。デスクペンのように、書き終えたらストンと収めるものがあるタイプのほうが、向いているのかもしれません。

 そうそう、ペン先の太さや紙にもよりますが、細字だと、カートリッジ一本でレポート用紙四十枚は書けます。中字だと半分くらいでしょうか(もう少し書けるかもしれません)。インクひと箱五本入り(二百円弱)を買ったあとは一冊百円のレポート用紙を買い足してゆくだけなので、趣味としては安上がりです。

 万年筆で書くと聞くと、なにかこう、壇の文机に座布団を敷いてどんというイメージがありますが、実際は無様なものです。枕元に一式置いて、うつぶせになり、枕に顔をうずめながら書いています(寝る前につらつらと書くことが多いのいです)。早い話し、布団から頭を出してお手をしているトドです。角度が丁度よいのか、寝っ転がって書いた原稿はインクがしっかりと乗っています。字はへろへろなので、次の日読むとき苦労します。

万年筆

レポート用紙はA5を使っています。不思議なもので、一枚書くと、だいたい四百字になります。
全稿手書き

万年筆

普段使っている筆記用具(万年筆)についてのつれづれ話し

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-12

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