Sylmelia.

Sylmelia.

Artless Shinさん作詞作曲のシルメリアを小説として二次創作した作品です。

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「ありがとう、また逢う日まで。」

目を覚ました僕の脳内に、君の最後の言葉だけが残る。
君といた時間は僕にとってとても大切な時間で、君の仕草や話す声や言の葉の全て。何もかもが瑠璃色に輝く毎日だった。

静かな雨が降る中で、僕は傘をささずに歩き出す。早すぎる時間帯のせいか僕の心のせいか、すれ違う人の顔もはっきり見えなければ、色素を失ってしまったかの如く人は影の様に見える。その影も僕を通り過ぎた後、一つ、二つと消えていく。僕が君を探す旅に出ているのか、無くしてしまった自分自身を探してるのか、もう自分にもわからない。この地球という重力の星において、悲しみのひとひらすら拾う事のできない僕は空中分解でもしてしまったんではないかと非現実な事ばかり考えてしまう。

海辺に一人、真っ白なワンピースを風に靡かせて佇む君の姿に僕はただただ目を奪われた。枯れる事を知らなそうな海辺の花を手掴みで摘み取り、僕は君の掌をとって摘み取った花を君の手ごと握らせた。今思えばただただ不審者だった気がする。それでも君はそんな僕の掌を握り返して笑ってくれた。

「この世界には毎日に意味が有って、どれだけ意味があるか考えた事ってある?」

「今までの世界の意味は君に塗り替えられたから、もう世界の意味を考えるってなると君のことを考えろってことになるかな、僕は。」

そうして二人で沢山の日々と世界について考える日々を過ごした。風が優しい日も、雨が降り注ぐ日も、快晴の日も。静かに瞼を閉じた君の寝顔を眺めて心を落ち着けるのが、僕の意味を考える一日のエンドロールだった。

出会った海にもう一度足を運んだ時、静かな雨は止んでいて、そこには当然君の姿は無くて。大きく羽を広げて飛び立つ鳥の群れが、僕を現実へと引き戻す。

また一つ、明日が消えていく。
君の夢を見て、その記憶すら消えていく。
風とともに流離う僕の心と一緒に。

苦しくて流した涙も、悲しくて流した涙も、君があの時言ったみたいに意味があるのかな。これからの僕を創り出す糧になるのかな。今はまだ僕の涙はどんなに掌で受け止めようとしても手を添えてくれる君が居ないから。涙は掌からすり抜けて溜まらない。

だから、また夢で君に逢いに行くよ。その時は最後に言った言葉じゃない一言を僕にくれないかな。夢の中だけでもいいから、ノスタルジックに浸らせて。

Sylmelia.

初めてこの曲を聴いた時、自分の中で映像が再生される様な感覚になりました。歌詞の意味、情景音楽として楽しんでいただいたあと、言の葉を比較として使っていただければ幸いです。

二次創作に許可をいただいたArtless Shinさん、ありがとうございました。

Sylmelia.

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-10

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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