逆転満塁

どんなものにも主役の瞬間がある。例え平凡でちっぽけなものでも。

 これは、私の最期の物語だ。
 投手が全力の一投を放った時、私は強く願った。どうか打たないでくれ。まだ終わりたくない。直後、私は打者の渾身の一撃で夜空に舞っていた。高く、風の唸りが遅れる程の速度。願いは露と消えた。数秒後、ほつれた私は、大地で不燃の塵と化すだろう。自分の体の限界くらいは分かる。だが。
「これは珍しい!」
 遠くで実況者の叫びが聞こえた。そこで気づいた。宙を往く私は。
 主よ――私は感謝した。数多くの風船と歓声が私の最期を飾っている。こんな幸福があるだろうか?
 これは最期の物語だ。最後を、中空にて崩壊した、世にも珍しいホームラン・ボールとして迎えた、私の。

逆転満塁

逆転満塁

【Twitter300字ss】 使用お題:飾る ジャンル:オリジナル 備考:Twitterで開催している300字ssに参加した際の作品です。超! のつく短編です。主人公が珍しいかも。 あと「要素」に凄い悩みました。どれも当てはまらない……。 超備考:新作書いたらTwitterで告知してます。宜しければ。http://twitter.com/drawingwriting

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-26

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