脳内RADIO番外編

脳内RADIO」番外編
1 永遠の言葉
時間なんてあっという間に過ぎていく。今は生き急ぐように
時間を使っている。ただ黙っていてもその瞬間今が終わっていく。
今ラジオから親友の歌が聞こえるあの日の
懐かしい人生の起点を思い出す。学生だった頃は、
時間の流れは遅くいつまで学生なのかともがいていた。
中学生のときのじぶん秋山孝平は親友と呼べるほどの友達は
いなかった。イヤそんなものはいらないと思っていたし、
誰も信じていなかった。悪戯から煙草を吸い酒を飲み、
どんどん悪いことに染まっていった。
悪いなんて思っていないしグレたつもりもなかった。ただそういうことが
楽しかった。人間なんて少しそれただけで白い目で見られる。
不良も怠け者も出来ない奴も病気の奴もそうゆう周りと違うズレが
若い性格を捻じ曲げていく。孝平もその中の一部だった。
気に入らないことには気に入らないと言い時には暴力になることもあった。
周りには捻じ曲がっているように見えるそれは、純粋さの表れだった。
人は強いものに従う先輩に従い先生に従い上司に従い生きている
だが影で文句を言い、さらに自分より弱い人には偉そうにする。
その全てが嫌いだった。テレビを付ければ効果があるかも怪しい嘘くさい
CM、死ぬ気で頑張りますと簡単に口にするスポーツ選手、
口パクで歌ったふりをする歌手、偉そうに語るコメンテーターや
評論家。偽善や嘘で溢れていると思っていた。
学校では誰にも文句も言われなかったが近寄ってくる奴も
あまりいない学校は冷たいコンクリートで囲まれた牢獄のようだ。
だから高校も行かないで働くつもりだった。
担任の三浦先生だけは見捨てなかった。孝平が頭が良かったのもあったが、
孝平の頑固と呼べる真直ぐな性格が好きだった。
孝平が進路のことで話しているときに先生が言った。
「なあ神様や仏様っていると思うか?」
孝平は50を過ぎたおっさんが何を言っているのかと思う
「俺はいると思うんだ。俺はとりあえず大学にいって
とりあえず公務員で安定した教師になったんだ」
「そしたら親友にお前は社会にブラ下がったままずっと生きていくのかと
言われたんだ」
「だがしばらくその意味もわからずにいたらテレビで障害者の
女の子が今まで人に助けられてばかりだったから、将来人の
役に立ちたいといってたんだ」
「その時に親友の言葉が胸に突き刺さったんだ。なぜか
俺は運命を感じたんだ教師という仕事に」
「運命や偶然ってあるぞ。なあ高校にいかないか?
その3年間はきっと無駄にならない遊びに行くつもりでいい
行って駄目なら辞めたら良いじゃないか」
「つまらないと感じている学生生活も、将来良いことも
悪いことも一生の思い出として残るよ、必ずな」
「直ぐにはは決められないが、よく考えてみるよ」と孝平は素直に言った。
この先生の偶然や運命と言う言葉には感じるものがあった。
それは少し前のことである。家に一人でいた孝平は
包丁をふと手に取った。考えたのはこれを腹に突き刺してみたら
どうゆう感覚なんだろうと思った。別に悩みもない。
死にたいわけじゃない。ただ若い不安定な少年と青年の
狭間で生きる感覚がそう思ったのだ。
そしておもいっきり腹に向かって包丁を振りかざした
なぜそんな事をしたのかは誰もわからない。
自分の腹を見ると皮一枚で止まっていた。
臆病になったのかと思い、もう一度試してみても
また皮一枚で止まっていた。
その時思ったのは、俺はきっと自分では死ねないんだ
生きなければならないんだと強く感じた。
こうゆう悪運のような物は昔から度々あった。
小さい頃トラックに轢かれそうにになった時転んでトラックの下を
潜りぬけたり、最近では歩いていると建築現場を通り過ぎた途端
背中ギリギリに大量の足場が崩れ落ちてきたことがあった。
全て無傷だったし、心は冷静だった。
そうゆう事があって先生の言葉に感じるものがあった。
孝平が帰ろうとすると先生がいった。
「人というのは塊で見るものじゃないぞ、日本という塊、
街という塊、学校という塊、そう見るとつまらないかも
しれないが、一人一人よく見てみろ必ずその人の
見方が変わるぞだから頑張れ」とにこりと笑った
「先生。俺は今日の先生の言葉一生忘れない気がするよ
なんかそんな気がするんだ」そう言って孝平は教室を出た。
将来の夢は未だ無い。イヤいまの自分に未来を描くほど
の想像力もない。努力も嫌いだし、頑張るという行為の
意味もわからない。ただわかっているのは自分の無力さ
を感じている。数少ない理解者の優しい言葉に少し
救われた気がした。
2 努力?
蒼い空は雲一つ無く晴れ晴れしている。だがその空を
突き抜けてもっと突き抜けてさらにその向こうは暗く澄んだ闇に変わる
さらにその向こうは時間の流れは変わり自分という
存在すら忘れてしまう。だけどそこから後ろに振り返ると
晴れた空の蒼さに自分の立っている場所を想い出す。
春になった現在高校生になった孝平がいた。
少しだけ風貌も大人に近づいている。
教室に入ると知らない顔ばかりだった。
一人ひとりよく見てみると似た顔はいても同じ顔は
いない内面は見る事はできないがきっと
それぞれ生き方やもって生まれた物があり
同じ人はいないだろうと思う。
せっかく来たからには見ようと思う。
高校生という起点として変わってみようと
考えていた。
だが周りから見ると孝平は見た目が大人びていて
どこか冷めた感じがしている。
やはりどこかに見えない壁が出来ていて
誰かとあまり話をすることも無かった。
まあこんなもんだろうと思い
結局、1週間も経たずに今までの仲間と遊んでしまい
学校がある日でも、夜中まで遊んでいる始末である。
その日も夜が消え空が白んでいた。小鳥のさえずりが
聞こえていて普通は気持ちのよい朝だった。
だがその中を歩く孝平は遊びに行った帰り道の途中で
さらに寝ていないのでだるさしか感じなかった。
朝なんて大嫌いだった。
明るくなるとまた現実に帰らなければならないのが
イヤだった。
あくびをしながら今日は学校をさぼろうかと考えていた。
ふと歩道の反対車線を見ると一人走る女の子が見えた。
それは名前はわからないが同じクラスの奴だった。
向こうはこっちに気付かず黙々と走り抜けていった。
馬鹿じゃないかと思うこんな朝早く一人で走るなんて
何が楽しいのか全く理解できなかった。
結局その日は学校をサボった。人は一度
そうゆう事に甘えてしまうとそれを繰り返す。
数日後また同じ時間にまた朝帰りをした。
正直自分でも先が見えた気がするこのまま
ダラダラと過ごしていずれ学校も辞めてしまう。
それが行き着く先だろう。別にそれでいいと思っている。
「秋山君」と呼ぶ声がした。みるとこの前見た同じクラスの
女の子が自分を呼んでいた。未だに名前もわからない。
なので挨拶程度の会話して向こうも違うその空気を感じ取った。
じゃあと別れようとした瞬間
思わず「なんでこんな時間に走ってんの?」と聞いてしまった。
「私バスケやっているんだけど、みんなより出来ないから
毎日走っているのヘタだから中学の時から補欠で試合とかは
ほとんど出れないんだけどね」
「結果も出ないのによくやるよな」と思わず口にした。
「うん、結果も大事だけどどんなことでも出来ることは出来るだけやりたいの
そしたらいつかきっと誰かが見ていてくれて結果につながると
思っているの」
「ふーん」とし言えなかった。努力は結果があってこそするもんだし
頑張りなんて誰も見てはいないだろうとおもった。
その子は「じゃあ学校で」と言ってまた走り去った。
だがその日も学校をサボった。
次の日学校に行くとその女の子を見かけた。
名前もわからないし覚える気も無いのでアイツと
心の中で呼んでいる。見ているといそがしそうな
奴で先生やら友達やらに頼まれたかそうでないのか
わからないがいつも何かしている。授業中も黙々と
ノートを執り勉強している。
孝平はサボっていても授業には付いていけた。
昔からノートも執らない必要も無いからだ。
授業を見ればわかるだろうと思う。何故それが
出来るかと言うと全ては国語力というか理解力にある
それは教科書に説明がちゃんと書いてあるからだ。
だけどそれはほとんどの人が簡単には出来ないことで
だが孝平には「何故こんな簡単なことが出来ないのか?」と
思ってしまう。そこに壁が作られていた。
出来る人には出来ない人の気持ちはわからない逆に
出来ない人には出来る人の気持ちはわからない。
だからアイツのお人好しな姿や努力する姿には感動などしないし
むしろなぜか苛立ちすら感じる。
言ってやりたい。「頼まれるのは利用されているだけだし、
無駄な努力は意味がない」と
孝平はテレビなどでよくやる感動や不孝な話が嫌いだった
それらの感情は冷たい訳ではない。
確かにかわいそうだとか思うこともある。だが結局は
みんな嘆くだけで自分の身を削って何かをする人は
ごく一握りであとはただのその場の感情でむしろ
自分じゃなくて良かったと思っていてどこか不孝な
人を「かわいそう」という言葉で見下している
気さえする。そしてその感情は
テレビなどで注目されなくなると感情の隅に追いやられて
いずれ無いものとなる。だから孝平は「かわいそう」だとか
「頑張ります」とか口に出すなら同情や上辺ではなく結果
という形を求めてしまう。だからいろんな事に対して
常に疑いの目を向けてしまい真に人付き合いを出来ないでいる。
だから人には冷たいとか不真面目に見られがちだが
実は内面は純粋で正直な性格だった。
たぶんこのまま大人になっていくといずれ純粋さは
失われそこにはなにも生まれなくなるただ黒く深い
傷を広げてしまうだろう。だが今は空しくただゆっくりと無駄な
時間だけが流れていた。
3 自分の真ん中
信号を眺めていた。その信号は青に変わる。
だがその色は青ではない。青くはないのに
信号は青だと当たり前のように教わった。
白という何も無いように見える色でさえ
色々な白がある。明確ではないことがとても多い
世の中で、自分も信号の青みたいに青くは無いのに
青と呼ばれることがたまらなく嫌な気がした。
そう思っていると後ろからクラクションの音が
聞こえた。バイクにまたがった孝平が後ろを振り向いて
睨み付けた。すると車の運転手は目をそらし別の道へ
走り去った。夜の街を一人で走ることが楽しかった。
多分空を飛ぶのと同じぐらい嬉しかった。
100メートルを9秒台で走ることも何百キロも遠くに走ることは自分の足では
無理だろう。だけどバイクなら簡単にどこにでもいける
その鉄の塊は生きてるみたいに鼓動する。
走り出すと風が向かってきて周りの音が霞んで聞こえる
その風の中で突然音楽が聞こえた気がした。バイクを止めて周りを
見渡しても何も無かった公園の前に自動販売機が
あったのでコーヒーを買って飲むことにした。
上を向くと空には月が見えた。月は丸い実際には見たことは無いが
地球も丸い。地面を走ったり遠くを眺めると丸くは感じないのに
月を眺めるとここも丸いんだと感じる。
そのせいか昔から丸が好きだった。そしてその円の真ん中に立っていたい。
そうすれば真直ぐ迷うことなく生きていけると思う
今若い自分もいずれは年老いていく人は成長を続けるのではなく
年老いて不自由になって死んでいく。それが自分の立っている円から外れていく
みたいに思えて果てるぐらいならいっそとは思うが
これも違う気がする。正直なんで円から外れる将来が
あるのかと思う。
そう思っていたとき、公園から歩いてくる人影が見えた。
顔が見えた瞬間にふと見たことがある顔に気が付いた
その目はなんとも言いがたい不思議な目だった。
自分の目は鋭いとか言われたりするが、こいつの
目はそうゆう部類ではなく見られると沈黙してしまう
程の吸い込まれそうな感覚がある。
向こうもこちらに気付き軽く会釈してこっちも
うなずくように会釈したそのあとすたすたと
去っていった。
隣のクラスの奴だった。なぜ覚えているのかというと
今まで見たことの無いタイプの人間だからだ。
口数は多いほうではないのに周りから人が集まってきていた。
見た目も目立つタイプではない。
だがなにがあったかはわからないがこの前停学になっていた。
不思議な奴だ。まるで水みたいな人間だった。
4 才能
夜遊びに慣れすぎて学校で昼飯を食べると眠たくなる。
そうなると人気の無い体育館の倉庫にある
マットで昼寝をしていた。その日は少し寝すぎたみたいだ。
部活で走る音が聞こえていた。時間的に部活は
もう少しで終わるだろうから隙間から帰る
タイミングを窺っていた。するとバスケ部の
中に控え組みとしてバスケをするアイツがいた。
別に自分はバスケをやってはいないが見てるだけで
向いていないとすぐわかった。
そうこうしているうちに部活が終わったみたいなので
出て行くと片づけをしているアイツに声を掛けられた。
「秋山君が体育館にいるなんて珍しいね」
「昼寝をしていて寝過ごしただけだ」
「意外と天然なんだね」と嫌味なく笑った。
「お前こそバスケ向いてないな」とはっきり言った。
「だから練習しているんだよ」とあまり気にもしない様子だ。
「お前真面目すぎなんだよ。顔に右行きます。シュート
します。って書いてあるみたいだ」
「人間相手にやってんだから相手を見ろよ
逆をつけば能力なんていらない頭使えよ
せっかくの」といいかけたが孝平は途中で話をやめた。
せっかくの努力が泣いていると言おうとしたが、
ダラダラ過ごす自分に努力なんて言葉は似合わないと思ったからだ。
「すごい秋山君もバスケやったらいいのにきっと
才能あると思うよ」
「才能なんて言葉を簡単に使うなよ。おれに団体行動なんて
向いてない」とそのまま立ち去った。
才能って言葉が嫌いだった。みんな何か出来ると
才能という言葉で片付ける。テレビで1億円貰っている
スポーツ選手。羨ましい、貰い過ぎ、ちょっと態度悪いと
生意気だとか言うけど、その人生は見ない。
小さい頃からそればかりに打ち込んで友達と
遊びたいのも我慢して色んな事我慢して多分それしかしてきていない。
それでもプロになれるのは僅かでさらに活躍できるのは
ほんの一握りでやっとの思いで掴んだ栄光も
才能って軽い言葉で片付ける。まるで簡単に活躍して
簡単に生きてますみたいに。
人が見る物は明るい部分でその裏にある
日のあたらない部分は影になっている。
言葉なんて簡単で誰でも使える格闘技なんかで
負けると大した事無いとか弱いとか口にする。
だけど「じゃあやってみろ」と言われてできんのか
って思う。命がけでやっている事も見るものに
とってはなんの痛みも無い。
だからさっきの才能という言葉にイラついたが
なんの努力もしていない自分が簡単に言葉を発したことに
一番腹が立つ。結局簡単に物を見ているのは
自分のような気がした。だけど今の自分に努力するものも見つけられなかった。
5 心の共有
今日は雨が降っている。今年は記録的な雨が続いていて
近所の爺ちゃんなのか小父さんなのかわからない
小父さんが「まるでこの街の天井に穴が開いたみたいだな」
って言ってた。面白いと思うこうゆう古い人間の
使う言葉は冗談まじりでだけど何か考えさせられる気がして
好きだった。そんな事思いながらまた朝帰りしていた。
雨でバイクに乗れないので傘を差して久しぶりに歩いて帰っていた。
遠くで合羽を着て走るアイツが見えた。
思わず隠れてしまった。きっと「毎日走っている」という言葉は嘘ではなかった。
雨だろうと風だろうと走り続けているんだと思う。
自分は何やってんのかと空しくなる。
傘を放り投げてずぶ濡れになりながら帰った。
眠くて眠くて仕方なかった。本当は行かないつもりだった。
だけどなんかアイツに負けてるみたいで悔しくて
寝ないで学校に来てしまった。もう午後になり
授業も終わったので帰ろうと廊下を
ボーっとしながら歩いていた。ある教室の中から流れるようで
ふと立ち止まってしまうような儚いギターの
音が聞こえる見るとこの前公園で見た水みたいな
奴がギターを弾いていた。むこうがこっちに気付き
手を止めてこの前みたいに会釈をしてきた。
孝平もまた同じように頷いた。
「お前ギターうまいなそこまで弾けるやつ始めて見たよ」
孝平は思った言葉をただ口にした。
「イヤそんな事はないよ。そっちもギター弾くの」
「俺はベースをやっている。バンドとかやった事
はねえけどな」実は孝平はベースが弾ける
中学生の時だった。二つ上の先輩がベースを
弾いているのを見てこんなカッコいい物が
あるのかと思いそれから弾き始めていた。
そのゴリゴリとした低音とリズムをきざむ感じが
気持ちよく近所も家も気にせずアンプを繋いで
大音量で弾いていた。
割と暇さえあればずっと弾いていてそれは
人から見れば努力なのだが孝平はそれを
努力だと思っていないただ子供がゲーム
するみたいにただ遊んでいる感覚と同じだった。
「そうなんだだったら一緒にバンドやらない?
俺は伊藤亮。亮でいいよ」と優しい声で笑いながら言った。
孝平はビックリした。自分が誘われると思っていなかったし
こいつはもっと無口で話しづらいかと思ったが
自分を恐れずにまるで
子供みたいに無邪気に話しかけてくる。
「ああやろうぜ今度ベース持ってくるよ。
俺は秋山孝平だ俺も孝平でいい」
その後しばらく話しをしていると亮がかけていたラジオから
音楽が流れた「俺この曲好きなんだ」と亮が言った。
孝平も「俺もこのバンド好きだ」と言った。
そのバンドは終わったバンドと言われている。
デビューしてからヒットし続けていたが
ボーカルが病気で死んだ核を失ったバンドは
解散かと思われたが違うボーカルを入れて続けた。
だが前のボーカルの歌声には届かずすぐに脱退して
さらにドラムも脱退したベースとギターだけになっても
解散しなかった。だけど世間はもう終わったバンドで消えていく
バンドだと誰もが思っている。
けど雑誌のインタビューに「俺たちはただ音楽が
好きなんだそれだけだ。だから辞める理由なんてない
それに何もしないで解散したらアイツに申し訳ない」
と答えた。それから二人はアコースティックギターだけで
二人で歌いベースがメインボーカルとしてしゃがれた声で歌い
もうひとりがギターを弾きキレイな高い声でハモっていた。
その歌が今ラジオに流れていた。その歌は投げているみたいだった。
空に向かって届かないとわかってるのにただ全力で腕が
ちぎれるぐらい振りかぶってそれが空に飛んでった。
その行為が無駄な事よりも諦める事のほうがかっこ悪い
って訴えているようなそんな歌だった。
6 背中の刺青
青って本当に青なのかって思う事がある。
亮をみているとそう思う事がある。感性が
物の見方が違っていて面白い。青が赤に見えている
みたいでそもそも人の景色はどう見えているのか
どこをみているのか言葉でしか共有できない。
恋人、夫婦、親友、親子だろうが同じ目線では見れない
だから海って俺の目には青く映るが青っていう
言葉なだけで他のひとには全く違う色に見えるのかもしれない。
バンドをやる事になって練習をしているバンドと言っても
3人しかいないもう一人はドラムの石田ってやつで隣の
クラスのやつだ。太っていて最初に見たとき本当に
出来んのか?って思ってたらかなり出来るやつだった。
石田は最初は孝平のことが怖くてイヤだったらしいが
音楽の話をしていたらすっかり打ち解けていた。
二人も孝平がベースを持ったときに驚いた。
その堂々とした立ち方と孝平の体格と
ベースが合っていて様になっていた。
まるで刀をかまえた侍みたいに
その白いベースが似合っている。
そして孝平がボーカルになった。
亮は歌は苦手と言っている他に歌う人を
探してもカラオケみたいに歌う人ばかりで
つまらないという事で孝平が歌うことになった。
正直目立つのは嫌いではない歌は特別上手い訳
ではないがその周りよりも大人びた声と強い喉で
日本人では珍しく歪んだ怒鳴るようなシャウトが
できてその見た目と合わさりバンドとして形に
なっていた。孝平は楽しかった今までバンドができる
仲間もいなかったけどそれでも音楽って良いなって
思っていた。だけどそれとは別物でなんだか一人
一個づつ羽があるみたいだった。
学校に毎日行くようになった少しづつだけど
教室で亮が話しかけてくるのを見て他のやつ
とも普通に話しをするようになった。
不思議なものだほんのちょっとの事
なのにこんなに変わっていくものなのか。
単純でたいした事じゃないのに
大きく自分が変わっていくのが見える。
だけど今悩みを抱えているそれは
今度ライブハウスでライブをする事になった。
チケットのノルマがあってこれが処理できない。
別に売らなくても配るだけで良いので亮と石田
は問題ない。だけど孝平はあまり音楽好きの
知り合いがいないためホトホト困っていた。
結局誰にも渡さず帰り道を歩いていたら
アイツに会った。帰る方向も同じで家も割と近所みたいだ
だけど中学の時には会った事も見たこともなかった。
高校からここに引っ越してきたらしい。
今日は部活も休みでたまたま遭遇した。
「お前音楽好きか?」と孝平は無愛想に唐突に聞いた。
「まあ普通に好きだけど何で?」
「ああイヤただ聞いただけだ。じゃあな」と言って帰った。
こいつに頼んだらきっと何とかしてくれるだろう。
色んな人に声かけてちゃんとしてくれるのは予想がつく。
だけどそれでいいのか?って思った。少し前なら
そんなの関係なくて利用出来るものは利用したし
騙されるほうが悪くて別にそうゆう事に悪いなんて
感じなかった。最近俺なんか変だ
「努力や頑張りなんて結果がでなきゃ意味がない」
1位以外は負けだし勝つための努力だと思っていた。
だけど亮にそれを言ったら「間違っていないけど
そんなのつまんないよ」と答えた。
オリンピックで走っていて転んだら失敗でもう勝てない
多分ほとんどの人がリタイアするだろう。だけど
一握りの中にそれでも最後までゴールを目指す
人がいてその人には背負う物がある。
それは見えないが胸に響くことがある。
その人が最下位でたとえどれだけ時間がかかったとしても
それを笑う人はいないむしろ頑張れって思うんじゃない
って亮が言ってた。「音楽でもそうだよ聞くとそうゆうものが
こみ上げてくる」って。
夢や将来はまだ見えない。だけど亮の言葉を聴いたとき
俺はおれらしく熱く真剣に生きようって思った。
だからライブは俺らしく誰にも頼らずやるべきだ
そう決めたから今回はアイツに言わなかった。
そのライブの日他のバンドも一緒なので
客は結構入っていた。初めてのライブなので
緊張していたが孝平はその緊張感が好きだ。
駆けっこのスタートの瞬間みたいでワクワク
して血が少しづつ沸騰してくるみたいで思わず笑みを
浮かべてしまう。孝平たちのバンドはちょうど
真ん中ぐらいでわりと中だるみする時間帯だった。
ステージに立つと会話しながら見てる人も多い
孝平がベースを持つと堂々としていてつい目を
向けてしまう。曲の始まりはギターからだった
しかし亮がミスってしまった。するとどこかから
空き缶が飛んできた。それを見て孝平がマイクで
「今投げた奴誰だかかってこいや」と叫ぶように
怒鳴った。シーンとなって誰も名乗りでなかった。
その後すぐに孝平が「行くぞ」と亮に向かって怒鳴った。
次の瞬間、亮はいつものように流れるみたいにギターを弾いた。
周りもさっきとは別人の存在感に圧倒されていてその中に
孝平のベースと歌が合わさると客も盛り上がりを見せた。
むしろさっきの客に対しての怒鳴りが効いていて
逆にカッコ良く見えていた。石田のドラムは安定感があって
前に出ず一歩後ろに下がった感じで前の二人の対極と言える
存在感を静かに支えている。亮と孝平は赤と青、白と黒みたい
にぶつかり合っていて。どっちも全く引かない荒々しさと
繊細さがかみ合っていて
それが今日一番の盛り上がりを見せた。ライブが終わっても
孝平はその熱が冷めない。それと一緒に今まであった胸の中の
もやもやした物が燃えて無くなっていくみたいだった。
亮が「ごめん」って謝ってきたけど感謝している。
その見た目は一歩引いているみたいだが誰よりも
熱く静かに人の前を歩いていく存在感と
優しく的確で響く言葉を聞いて今日生まれ変わったみたいな
自分がいる。だから笑って拳と拳を力強くかわした。
その瞬間背中に刺青が入った実際には入れてはいないが
自分の背中に誇りという一生消しても消えないような
刺青みたいなものが入った気がした。
6 重い言葉
人には避けては通れない悲しいことがある。生きている限り
必ず訪れる死ということだ。「死が悲しい」誰かに教わるより前に
心が知っている。三浦先生が死んだ。
急に倒れてそのまま眠るみたいに亡くなった。
それを聞いたときに孝平は嘘だと思った。
今その通夜に来ている。いまだに嘘みたいで
信じられない。だから悲しいと思わないし
涙も出ない。人は多くて見たことないぐらい
の人が集まっている。今の教え子やかつての教え子が集まっていて
皆泣いていた。尊敬されているそれに値する先生だった。
最後に線香をあげながらそう思った。
「尊敬する人」それは100であるその人の言葉
や行動すべて受け入れてしまう。たとえ他から見ると間違った言葉
でも尊敬に値する人から言われると当たり前に信じてしまう。
それほどの信頼を持つ尊敬という言葉だ。
孝平もいつかあんな人になりたいと言えなかったが思っている。
帰りに先生の奥さんの前でお辞儀をして帰った。
靴を履いて出ようとすると「待って」と止められた。
先生の奥さんだった。
「秋山孝平君でしょう?」
「そうですが」と答えた。
「やっぱりいつも君のことあの人が言っていたとおり
の子ですぐわかった」
「あの人喜んでたの君が高校入ったことに自分の
言葉が伝わったってその話ばかり」
「だから頑張ってね。君はいつか人のために
何か出来る人間だって言ってたよ」
孝平は「はい」とだけ真剣に答えた。
別れを告げて外に出ると込み上げてきた。
そして涙が止まらなかった。さっきの言葉を
聞いて理解した。もう先生に会えないんだって
もうあの学校に行ってもいないんだって。
どっかでまた学校に行けばいるんじゃないかって思ってた。
だから悲しくはなかった。今は涙がいつまでも止まらなくて
抑えきれない。その涙のなかに同じぐらい先生の言葉が
入っていてその言葉はどれも軽いものではなかった。
「頑張れ」そんな誰でも言えるかんたんな言葉ですら
大切な人から言われると軽くはない。
きっとみんなそうなんだその人の言葉は重くて一生心
の中に残っているだから涙が滝みたいに流れる悲しいけどそれが現実だから。
7 直感
真っ白いシーツみたいな空白の中何を描くか?
その奥行きは遠くどこまで続くのかわからない。
自由と言えば自由だけど簡単ではない。
決められた事をただ当たり前にこなす方が楽かも
でもそれを誰かに決められてそれを正しいとは思えない。
だけど何を描くのかわからない。そんな矛盾消えてしまえばいいのに。
とりあえず学校だけはちゃんと行こうと朝が苦手な自分に
言い聞かしている。そんな道の途中にアイツがいた。
別に最近では珍しくない。同じ地域に住んでいて同じ学校に
向かうから。孝平はバイクで学校の近くまで行っている。
アイツは今バス停でバスが来るのを待っている。
いつもの光景でこれが日常である。
今日はいつもと違う気がした。
直感なんて信じていないがそんな感じがする。
とりあえずバイクを止めて歩いて近づいて
「よお」と無愛想に声をかけた。
「おはよう珍しいね。今日はバスなの?」といつもと
変わらない感じで話しかけてきた。
「お前今日なんか変じゃない?なんかいつもと違うぞ」と
思うまま言葉にした。
「そんな風に見える?別に何にも無いよ」と笑っていた。
「ふーん」と孝平は少し考えて「なあ今日は学校さぼろうぜ」
とあまりに唐突の言葉なのでビックリした表情で「そんなの無理だよ」
と返ってきた。孝平は腕を掴んで「お前真面目すぎなんだよ行くぞ」
とほとんどムリヤリ引っ張ってバイクの方へ連れてきた。
最初は断っていたがなんだかどうでもよくなったのか
「じゃあ海行きたい」と言ってきた。
なんで海なのかと思ったが自分で行くぞと言った手前
少し遠いが仕方なく連れて行くことにした。
不思議なもので海は見えなくても近づくと海の匂いがして
風もまとわりつくような潮風が吹く。最初はあまり乗り気では
なかったがそれを感じながら海が見えると胸がスッとする
まるで自分は海から生まれてそこに帰って来たみたいに。
なぜそう思うのか?空から見たらきっとそれは偉大で
自分の存在なんて吹っ飛んでしまうくらい蒼いからだと思う。
だから静かに眺めていた。ただ沈黙でいいそれぐらい
のんびり出来ていればきっと色んな言葉が浮かんできて
誰かに伝えたくなる。
「晴れているね」
「ああ」
「今は3時間目ぐらいかな?」
「ああ」
「ありがとう」
「ああ」
また程好い沈黙になって
「なあ今度俺たちのバンド見に来いよ?」
「うん」
「じゃあ飯食って帰るぞ」
「うん」
言葉は大事でそれに勝るものはないかもしれない。けど
感じる物がある上手く言えないけどいつもと表情は変わらなくても
見えるときがある。詳しくはわからない細かい事はどうでもいい
直感みたいなものを今は信じる事にした。
8 約束
色んなところで目にすることがある。紙に書いたものを見て
演説をしたり誰かに話したりする言葉。
なぜそんなことをするのか?それってどれほど伝わるのか?
間違った言葉を使わないようになのかそれとも相手の事を思い返して真剣に
考えた言葉を使いたいのかもしれない。
おれ自身はその場で相応しいと思う言葉を使いたい。
たとえ選べなくても手元を見るより相手を見ればそれは伝わるとおもえるから。
そんな事を学校で話す先生を見て思った。
良い先生もいるのも当然知っている。しかし逆な奴もいる。
自分が悪い時もあるだけど自分みたいな人間を
最初から毛嫌いして入学した時に言われたのが「中学校からお前の事を
聞いているぞ、問題起こしたらすぐに退学にしてやるからな」
こうゆう奴は自分の言う事を聞く人間が好きでそれ以外は嫌い
ぐらいなものでまるで中身を見ようとはしない。自分だけではない他の
誰かにもそうなのを目にしている。一度でいい誰でもいいから
人の事を深く見て考えれば少しは見えてくるのに。
俺もそうだったから。塊で見てたから
でも塊ではないそれを教えてもらってから
見えないものが見えてきた。だけど同時にこうゆう
見たくないものまで見えるこいつにそれを教えてあげたい
だけど今は我慢するそれが自分に足りないものだと言い聞かせているから。
学校祭でバンドをやるつもりだった。だが
駄目らしい今年から禁止になったようだ。
学校上げての行事にバンドなんて見る人に悪い影響や
印象を与えるというわけのわからない理由で無くなった。
こっちには理由があるアイツに約束したからだ。
あの後アイツが「もう転校するんだ」って言った。
父親が事故にあって体が少し不自由になり父親の実家に移るらしい。
事故を起こした加害者は子供が飛び出してきて避けたところに
ぶつかって来たらしい。アイツは加害者は人間的にも良い人だったって
父親も家族も誰も攻める気も起きないぐらい。
アイツは「嫌な人なら良かったのにって心で思ったの
そしたら文句もぶつけられるのにって」
「少しでもそんな事思った自分がイヤで仕方ない」
それを聞いたとき何も言えなかった。
誰も悪くないそんな時でもやっぱり心には蟠りがあって
その感情は最後は自分自身に向けてしまう。
今俺が「そんな事はない」とか相手を言葉で
気遣っても足りるわけではない。
だから「転校する前に俺が見せてやるよ。お前がお前らしく出来るように」と言った。
タイミング的にも学校祭しかそれを実現できない。
ライブハウスもほかのバンドがいないと俺たちだけで
お金の工面も出来ない。答えは出ないので亮に相談した。
「そんなの無理やり学校祭で演ってしまえばいいんじゃない?」
亮はおとなしい性格の割に大胆なことを突然言ったり行動したりする。
「孝平がそんな事言うなんて好きなんでしょ?その子の事」とからかった。
「そんなんじゃない。けどお前にもそうだけどそいつに教わった気がする。
俺にない何かをだから俺の出来る事を出来るだけしてやりたいだけだ」
「わかったよやろうバンド」亮は笑いながら静かに言った。
二人はいつもみたいに拳と拳を強く合わせた。
石田はそれを聞いて嫌がっていたが亮が説得した。
当日隠れて楽器や機材を運んでそれを隠した。
もちろんそれらをステージに運んだりバンドを演るなんてことを
3人だけで出来るはずもない。だけど色んな人に話して説得して
協力してくれる人がいた。しっかりと話しをして相手に頼めば
その言葉を理解して助けてくれる。少し前に思っていたつまらない塊も
今は大事な塊に変わっている。先生もその時間は体育館のステージには
来ないようにした。15分それが与えられた時間だった。
アイツにもその時間に体育館に来いと言っておいた。
意外にも人がたくさん集まっている。
準備をしてステージに立った幕がゆっくりと上がっていった。
その瞬間は今も忘れない幕が上がりきると体育館は暗かったが
不思議な事にアイツの場所がすぐわかった。
だからその方向へ熱く握った拳を高く向けた。
曲が始まると集まった人が歓声を上げた。
熱くて熱くて燃えるみたいなステージだった。
その曲が終わると一気にその熱が冷めた。
突然体育館の扉が開いて先生方が割り込んで止めに入った。
15分はなく5分だけのステージになった。
孝平はそれで少しは伝わったかと思う。
5分だけど熱く力を搾り出した。
そんな事思いながら体育館から出されて歩いて教室に戻っていた。
「孝平まだだ」と亮が言った。
「何が」
「まだ終わってないよ」
「もう楽器も機材もないだろ」
「いやある急ごう」と言って亮は走り出した。
孝平も何がなんだかよくわからないがついて行った。
亮が向かったのは音楽室だった。そこの奥にはアコースティックギターが
あった。
孝平は「そんなんじゃ何も出来ないだろ?」と呆れた顔で言った。
「イヤ出来るよ」とまた走って体育館に向かった。
まだ体育館には人が残っていた。
そのなかにアイツもいた。
心配なのかこっちを不安そうな顔で見てた。
すると亮は体育館のちょうど真ん中でアコースティックギターを
弾き始めたあの曲だった。
終わったバンドと呼ばれているバンドの
あの曲だった。孝平はそれに気付いて亮の横に立って
全力で歌い始めた。ちぎれてもかまわないそれぐらい本気で歌った。
するとそこに亮がキレイな声でハモった。
歌が苦手だと言っていた奴とは思えないようなとてつもない声だった。
だが聞いている人は孝平がメインで歌っているのでそれに気付かない。
まるで背中を押されているみたいだった。二人の背中に一個づつ
羽が生えてそれで飛んでった。その歌はどこまでも高く遠くへ。
その歌が終わると何故か皆シーンとなった。
その後誰かが拍手した。その後にみんな続いた。
孝平は思った。「亮で良かった」と
才能そんなものをさっき見た気がした。
持っていたのが他のやつではなく亮が持っていて
本当に良かったと心から思う。
二人はまたいつもみたいに拳と拳を強く合わせた。二人はその後
職員室に連れて行かれ怒られていたがとりあえず問題にはならず
帰ろうとしたが一人の教師が孝平の髪を引っ張り言った。
「秋山お前あれだけ問題起こすなと言ったろ馬鹿なのかお前は」
孝平は歯を食いしばり血が滲むほど拳を握った
だが堪えて立ち去ろうとした。
その教師は小さな声で「このクズが」と言った。
その瞬間その教師を殴っていた。
孝平ではなく亮が。
それからは何がなんだか覚えていないだけど
亮はそれで退学になった。前の停学と合わさり
いくらその教師が暴言を吐いたと言っても
それは撤回できないらしい。
亮は笑っていた。「別に俺は大丈夫だよ元から頭良くないしだから孝平は卒業してくれよ」と言った。
「ああ必ずするよそれに俺も夢が出来たからいつかお前にも話すよ」
二人はまた拳と拳を強く合わせた。
孝平は言わなかった。亮の才能の事を何故ならそうゆうものは自分で
気付かなければいけないからだ。自分みたいに。
きっと運命や偶然が導いてくれる。そう今は
それを心から信じている。だから亮が間違った道を選べば俺が貰った三浦先生の言葉を伝えようと思う。お金に困れば何とか工面しよう。
目を失えば片目をあげよう。救ってくれた友だから親友だから
あれから10数年長かったが亮は見つけていた。
俺も教師になった。アイツと結婚して子供も出来た。
友も親友もいる。全て大切でこれ以上ない幸せだ。
だけどこれで終りではない。学生の頃の自分みたいに
言葉や心を必要としている人達がいる。
だから伝えようと思う俺が感じたことや
大切な人達から貰った言葉や心を。
出来てるとは思わないし出来たとは絶対に言わない。
けど信じているから偶然や運が導いて
それが心に突き刺さるから。ラジオから聞こえる亮の歌みたいに。
終り                                       

脳内RADIO番外編

脳内RADIO番外編

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-31

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