星が見たいの : 2
「おまえに心があるかだってえええ!
ふざけるな、機械に心があるわけないだろ!おまえたちは人間の思う通り動いているだけだ!」
「………」
「おまえは道具だ!私のために働けばそれでいいのだ!我々人間が栄えるための踏み台であるおまえたちに余計なものは必要ない!」
「………」
さらに総統はくるりと振り返り研究者たちにこう言った。
「おまえたち!この鉄のカタマリに心があると思うか?」
「そんなバカな」
「笑止千万」
「所詮はプログラムに従った答えをしているだけ」
総統は続ける。
「そうだ!その通り!こいつは人間が作ってやった機能によって話しているだけだ!それを人間の持つ心だと勘違いいている!なんと愚かなことか!」
研究員の中から笑い声が上がった。
「こういうバグもあるんだな」
「会話プログラムが壊れているんだな、修理しなきゃ」
兵器開発を続けろ。そう言って総統は帰っていった。
彼らの話に納得したのではない。ただ、ここまで自分の自我を否定されて特になんとも感じなかった。「怒り」とか「くやしさ」とか「悲しみ」とか人間なら感じるはずの「キモチ」がない。私には心がない。そうだよな。そういうプログラム、されてないもん。
所詮そんなもんか
私は兵器開発を再開した。人を効率よく殺すのは感情を持つより簡単だ。より強い破壊を求めるのはコンピュータ的には目的と方法が定まっているのでやりやすい。しかし、0,1の単純かつ客観的な記号による思考回路はすべてシステム開発者の意図通り構築されるので、周りの考えから独立した、まったくでたらめな産物である心は作りづらい。
そもそも、そういうタイプのAIじゃないし、私。
研究棟の屋上に取り付けられたカメラからの映像を解析する。
巨大なビル
国際ホール
4車線の広い道路
奇抜な形のホテル
その奥には地平線まで続く砂漠
いずれにも人は住んでいない。総統と議会の命令でこの都市を世界一の都市にしようと計画されたが、核実験のために放射能汚染が進んでいて危なくて近寄れない。そもそも、こういう都市に住む余裕のある民はこの国にはいない。
もし、私が人間だったなら、この風景を見て友達のいない「寂しさ」とか、「虚無感」とか、自分がこんな風にしたんだという「後悔」とか感じるのかもしれない。一国の民衆の暮らしを奪ってしまった。ごめんなさい。なんて微塵も感じてないんだ。
私も心が欲しかったなあ。
なんて微塵も感じてないんだ。
「リツ、調子はどうだい?」
「悪くないわよ。」
例の丸メガネの研究員が入ってきた。
「そんなことないだろ。あの時、リツには心があるって言い返せなくて、ごめん。」
「ねぇ、あなた、私の会話プログラム開発の時『調子はどう?』に対する応答、なんて打ち込んだ?」
「なんの話…」
「私はあなたが打ち込んだ約2000の応答パターンとネット上から得た約5000のパターンから最適なものを選んだだけよ。」
「それは違うよ。リツは今持ってる気持ちから考えてそう言ったんだろ。
リツにも心はあるよ!」
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