記憶は君の中にない。 第一話 ~再会~
「…裕…!来れたよ…!!」
「風雅高校に!!」
裕と『一旦』別れてから三年が経ちました。
あの頃短かった髪の毛は十分な位伸びました。
私は、成績をあれからぐんと上げ、
中三の最後の頃は常に学年一位の成績をとるまでになりました。
それもこれも、裕とのあの『約束』を果たすため。
―――――三年後また会おう――――――
君は今どんな風になっていますか?
背は伸びたかな。
前よりかっこよくなってるかな。
何より…
あたしを覚えているかな。
…いるよね。
『約束』を…忘れてなんかいないよね。
そんなことを考えながらあたしはクラスが書かれてある大きな掲示板に向かった。
「ちーーさっ!!」
後ろから聞き覚えのあるかわいらしい声。
「え?」
あたしが振り向いた先には親友の茜(あかね)がいた。
「おっはよーーっっ!!入学式楽しみだね!!」
茜は、明るくて、かわいくて、スポーツ万能で、風雅高校レベルの頭脳で。
まさに非の打ちどころのない女の子。
そんな子と親友でいられて、同じ高校に入学できて、とても嬉しい。
でも。
「おはよ、茜。入学式そんなに楽しいかなぁ?」
「違う違う!!入学式の間にイ・ケ・メ・ンを探すのが楽しみなんじゃーん♪」
「あぁ…なるほど…って入学式ってそういう目的の行事じゃないんですが…」
そう、茜は極度の「面食い」。
例えお金を持っていなかろうが、性格が超悪かろうが、「イケメンならOK☆」らしい。
そんなところも茜らしくて嫌いになれないけど。
「それより、千沙は約束の彼氏探しでしょ~?どこのクラス??」
「う~ん…あたし自身も見つけてなくてさー…」
「多いもんねー…今年過去最高の人数だってー。」
「そうなんだぁ…あ。」
あった。3組に『長谷川千沙』という名前が。
それに…『大川裕』も!
「3組!同じっ!!同じクラス!!茜!あたし裕と同じクラスだよ!!」
「まじで!?良かったじゃん!!っあ!!あたしも3組だ!!」
「うそ!?やったぁーー!!」
こんな漫画みたいなことがあるとは…。
早く…早く裕に会いたい。
裕…どこにいるの?
「あれ…」
「誰か俺の名前呼んだ?」
後ろの方から声がした。
懐かしい…やさしい声がした。
でも少し声変わりしたのかな。
トーンが低くなってる。
「裕じゃない!?千沙!千沙!?」
足がガクガクする。
三年間我慢してきた涙が溢れそうになる。
でも、今じゃない。
涙を流すのは今じゃない。
「ちょっと行って来る!!」
会いたい。
会いたい。
三年間あったこといろいろ話したいよ。
抱きしめて欲しいよ。
裕…。
「ゆっ裕っ!!」
声が震えていた。
「え…」
裕がこっちを向いた。
やっぱり。前よりカッコよくなってる。
背も高い。
「あたしっ!覚えてる!?」
…すぐにわかってくれると思ってたのに。
私たちには三年間という空白は長すぎたのかな。
「…だ…れ?」
「…え…?」
記憶は君の中にない。 第一話 ~再会~
初めまして。あめ玉★と申します。
切ない恋愛小説目指します。
みなさんの心に届きますように…