上海BOPダイアリー
二日酔いで見る プラスティックな夢のあと
目覚めたら紅い絹の敷布は 罪と恥にまみれています。
革命の憂鬱を抱えてしまった上海人は
真夜中に がらくたの船を焼き払います。
短剣を玩具に遊び続ける子供たちは
ファイヤークラッカーが終ると、
みな どこかに消えてしまいます。
年上の女と 飲茶の約束をした少年は
沖仲仕のあと
ビードロのイヤリング 盗みに出かけます。
タロットのツキに見放された素描を画く男は
水上生活を離れ 妻となる女を買いにゆきます。
愛人のいない港の娘は こよなく紅楼夢を愛しながら
生きた時間を棄てて
桟橋での午睡を 彷徨うでしょう。
息も絶え絶えに
無知なることを悟った恋人たちは
買い物をやめて
廃れた寺院で二人 阿片を吸うでしょう。
揚子江の水死体のごとく 物事の理解をむかえた
あなたは
今に始まったことではない完結を
シンルーチュといっしょに
飲み干すでしょう。
・・・・・・ぼくは
八路軍の兵士を夢見て
今夜もアンニュイの 上海娘たちを訪ねて 山河を越えてゆきます。
彼女たちは 血筋のない秘密
男たちを ハッピーにする
あなたの憂鬱
どこかへ投げ去って。
ぼくを 夢に 見た あの少女は
上海BOPダイアリーを書いた後
白い麻の蚊帳の中で
もう一度 眠りにつくのです。
上海BOPダイアリー
1995年に書いた。オリエンタルなイメージに憧れがあった。
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