ただそこにあるだけで
あらすじのない短編小説シリーズパート2
処女作の「この世界に、ありがとうを」の読み方を解説している面があるかもなのです☆
「何度注意されたらわかるんだ!お前は!」
「なンだよ~面倒だから早く終わらせてくんないかナ~?」
「そういう態度をまず改めろと言っているんだ!!!」
バンッ!!!!!!
・・・・おぉ、怖い怖い、生徒会長様は全く持って仕事熱心だねぇ・・・・
・・ただ、あの机は僕が居る間に壊れるかどうか、壊れた時どーすんだか全く。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・
「ンじゃー帰ってイイっすかー、生・徒・会・長・サマ?」
「・・・今日のところは帰って良し!しかぁし!次はないと思いたまえ!胡桃クン!」
「ハイハイ、これで何度目の『次はない』なんスカ?」
「・・・何か言ったかね・・・!?」
「イーエ、マッタク。それじゃー失礼しやしたー」
バタン。
と、ヒートアップしている生徒会長に対して特段感情の篭っていない音を立てて、
案外小さい女の子なんだと思わせる背中と可愛い絆創膏の貼られた細い腕を見せて去っていく胡桃さん。
まーあの扉重いし普通なんだけど、なんだか笑いがこみ上げてくる程の温度差。
「フン・・・さて、ボクは胡桃クン相手で疲れた、キミたち生徒会諸君はどうすればいいか判るね?」
「「「・・・生徒会長お疲れ様です。残りはお任せください」」」
「それでよぉし!それじゃ、皆の者、アディオス!」
そう言うと、意気揚々と生徒会長殿は帰り支度をし始める。同時に他の役員がこっそりため息をつく。
そうして去っていく背丈の長い生徒会長の立てた扉の音は、どこかいやらしさを持ったハイテンションなリズムを刻んでいるように聞こえた・・・
「あーあ、毎度のことだけど、生徒会長、外面だけはいいってのにも限度があるわよ・・・」
「本当、アレはこの学園の腐敗の根にしか思えないね」
「まーでも、誰も逆らえないのも事実だしねぇ・・・」
そんなことを言いながら揃ってため息をつく、僕と生徒会長以外の、残り二人の役員
「風間も毎度毎度アレ見てて、疲れない?ほい、お茶」
「ありがと。でもいつものことじゃないか」
僕もため息をつきたいものだけどね、とは言えなかったけど、そんなことはお構いなしに
「ねーねー風間くん、生徒会長どうにかする術とかないの?合気道有段者なんでしょ?」
「そんな便利なものあったらとっくにやってるよ・・・」
それもそーか、と頷きあう二人の役員
「とりあえず仕事しよう?今日も夜遅くなりたくないし」
「そうだな」
「そうだね」
こうして、生徒会長サマの残した、生徒会長自身の仕事は、いつものように僕達三人によって片付けることとなるのであった・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・
「それじゃねー」
「それじゃなー」
「うん、また明日」
去っていく二人の役員、もうカップルでいいよね。
「はー、寒い・・・」
・・・・夜遅く、僕は一人で、彼らは二人で。
「・・・なんだか虚しい・・・」
「・・・ん?何かある・・・?」
目の前に、拾ってくださいと言わんばかりに、自販機の光に照らされて落ちている、一枚の紙のようなもの。
拾ってみると、何か書いてある。
『君が知りたい真実は体育館の前の大きな木のところにあるよ』
「なんだろ、これ」
「・・・気にならないわけないよね、うん」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・
「・・・あれは・・・小柄な生徒と・・・生徒会長のような・・・人影?」
「一体何をやって・・・んん!?」
「しっ、静かに」
コクコク。
「驚いた?」
「・・・まず、目の前にいる君に驚きだよ、胡桃さん」
「あは、生徒会副会長の風間クンに言われるとは思わなかったけど、生徒会長サマより全然いいや♪」
「・・・まず比べられたくないんだけど・・・」
「あ、ゴメンね、そりゃそーだよねー・・・お詫びの紅茶♪」
「なんか買収されたね僕」
「イイじゃんお互い悪いことないし~♪」
「まぁ、ねぇ・・・」
そして気づく。ここに胡桃さんがいるということは・・・
「あの手紙モドキを置いたの、胡桃さん?」
「ソーダヨー」
「棒読み感ありすぎて、本当かどうかわからないね・・・」
「あはは、実際そのとーり♪」
「どうしてあんなことを?」
「それより、アッチ見て」
・・・・!?・・・・何をしているんだ、生徒会長・・・・!?
~Another View~
そりゃこんな風になれば普通は動揺するよね。でも『感づいた』様子はないし、もう少し様子見、と♪
~Another View End~
「何をやっているんだ・・・!!?」
「生徒会長サマの裏の顔よ、怖い怖い」
「それにしてむぐぅ!?」
「声が大きい」
電灯に照らされたその二人?の影は・・・
なんでさ、小柄な『女生徒』に、大ぶりのナイフを『生徒会長』が突き付けているんだ・・・!?!?
「酷いよねアレ、なにやってるんだと思う?」
「そそんな冷静に言ってられる状態なの!?」
「合気道有段者なら刃物を持った相手への対処法ぐらい身についてるでしょ、だから安心なの♪」
「それは、そうなんだけど・・・」
「すぐにどうこうすることはないよ、『毎回そうだから』ね」
「ま、毎回!?!?」
「声」
「あ、うん・・・」
アレってさ、どう考えても、襲おうとしてるってことだよね・・・
「君が手紙を拾ってくれて良かったヨ♪まさかあんな凶器まで持ってるとは思わなかったし、余程抵抗したんだろうね」
「・・・胡桃さん、こういうことって、何度もあるの?」
「ウン、まー手紙云々は別なんだけど、毎回こうやって私は見てる」
「見てるだけなの?」
「・・・その結果が今日の昼間ダヨ」
「あ・・・」
確かに、僕ら役員は、時折、生徒会長がわざわざ呼びつけて胡桃さんを叱っていることしか知らない。
毎度のごとく、生徒会長は、不良行為を確認したから、と言っていたが・・・
「毎回、止めようとしてたの?」
「ああいう可能性もあったし、介入まではできないけどネ、証拠は毎回貰ってるヨ♪」
そう言ってデジカメを取り出す胡桃さん。
「じゃあ、なんでそれを警察とかに・・・?」
「毎回呼び出されてるってトコロから想像してくれれば判ると思うケドネ」
「つまり、証拠没収?」
「ソーイウコト」
「なんで胡桃さんに直接、その、口封じしないんだろう?」
「それはネ・・・と、そろそろアッチが危ういんだけど、今回で私の役目も終えたいし、折角来てくれた風間クン、お手伝い願えるかな?」
「・・・どこまで計算ずく?」
「ドーダローネー♪ と、そろそろ遊んでる暇はなさそうダヨ?」
・・・確かに、生徒会長の凶刃は、もう、女生徒のブレザーを切り裂きかねないところまで近づいている・・・そして、追いつめられてる。
「やれと?」
「やれと」
僕、生徒会長の凶行を止められればいいけど、止められなければ最悪あの世行き、止められたとしても、この学園でどうなることか・・・
でも、見過ごすわけにも行かないし、(多分だけど)胡桃さんは僕を頼ってくれたんだろうし、やるしかない!
「生徒会長、そこまでにしてください」
「・・・!?」
「・・・これはこれは、風間クンじゃないですか~?こんな夜中に学園にいていいのはボクだけなんだけれどもね~?」
「これは生徒会長の残した仕事をこなしたから、いえ、押し付けられたからこんな時間に学園にいるんです」
「・・・風間クンにはオシオキが必要かな~?この学園でボクに逆らっていいと、本気で思っちゃってるのかな~?」
「・・・そもそもなんで僕がこの『学園』にいるのかすら、『僕は知らないんですよ』」
・・・そう、胡桃さんの手紙がなかったら、気づけなかったと思う。
・・・僕はどこに住んでいて、何歳で、というようなことに思いを馳せることなく、ただ『学園』に通う日々が続いていたんだと思う。
「・・・胡桃クンの仕業か」
雰囲気が途端に変わる、瞬間、周囲が見えなくなるほどの風が吹いたと思ったら、周囲は一転して『廃墟になった学園』になっていた・・・
そして『女生徒』と思っていたその人は『二十代ぐらいの女性』で、『生徒会長』と思っていた人は『紛れも無い怪物』としか言えない姿・・・
「ワタシのアそビにハむかうキャストがイるとはおモわなカった」
「胡桃クンはべツとシテも、まサかキミがトワ」
「キミはジブンのすガたをミタマエ」
「そこにあルすがタはナんて「風間クンは風間クンだから!貴方が思う貴方だから!!!」・・・ちッ、胡桃クンは徹底的に歯向かうようだね・・・」
胡桃さんの言葉を聞くまで、目の前の怪物(バケモノ)に何をすればいいのかもわからなかった『僕』は、自分が『風間』であると、認識した瞬間・・・
周囲は『元の綺麗な学園』に戻り、目の前には『大振りなナイフを持った生徒会長』、そして逃げていく『女生徒』
「・・・こうなっては仕方がない、キミは直々にボクが消さなくてはならないみたいだね。さぁ、永遠の闇へと消えたまえ。・・・キィェェェェェェェェェ!!!!!」
僕の腹めがけて生徒会長の持つ凶刃の刃先が迫る!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
胡桃さんが『僕』を『風間』だと言ってくれたお陰で!僕は合気道有段者で!!ナイフの捌き方も身についていて!!!
「・・・ふっ!はっ!・・・てやっ!!!!!」
ナイフを握った手の手首を恐れず掴み、そのまま反対の手でナイフを持つ手に手刀を当てナイフを落とさせ、その手刀と手首を元にそのまま生徒会長を投げる!
「想像より遥かにすっごいネー・・・」
「・・・呆気無いんだけど、この『生徒会長モドキ』目を回して気絶してるんだけど、『僕』はどうすればいいの?」
「ン、とりあえず、『元凶』サンには消えてもらわないとネ」
そう言うと、胡桃さんは、どこからともなく取り出した紙とペンでサラサラと何かを描き、生徒会長に触れさせる・・・
瞬間、『生徒会長だったもの』は、何処かいけ好かない雰囲気の青年が写った写真になった・・・
それを回収した胡桃さんは、忘れていたと言わんばかりに
「何処から話してほしいカナ?」
「出来るだけわかりやすく具体的に全部」
「すっごい無茶なコトいうネー・・・」
「とりあえず、移動シヨ?」
寒々しい夜に外にいるのもアレなので、自販機で温かい飲み物(何故か売り切れ商品が多い中紅茶ばっかり残っていた)を買って、学園へ。
誰も居ない学園、それは当たり前のはずなのに、さっきの体験のせいで凄く怖いけれども、実際に感じる寒さに負けて戻ってきた僕達。
それでも、その豪華な設備のもたらす空調による暖かさに、思わず安心しかけてしまう。でも、まだ何があってもいいようにと警戒はしている・・・
「ンー?風間クン警戒しなくても、大丈夫ダヨ?」
警戒しすぎて慎重に歩いていた僕がズッコケそうになることを言われ、実際に転びそうになりつつも・・・
「・・・大丈夫なの?」
「そもそも、まだそんなに危険なら、まず最初に怪しい私が不安要素の塊だと感じるハズなんだけどネ?」
「あ・・・」
「というわけでレッツゴー♪」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・
「THE、胡桃さんの一問一答コーナー♪」
「いや全部答えてよ」
「答えられることは全部答えるヨ?」
生徒会室に入って落ち着いて、胡桃さんの変わらないノリについていけない僕は思わずツッコミを入れてしまう・・・
なんにもわからないのに、胡桃さんは安心させてくれる。それだけは判る。
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・・・・
胡桃さん曰く、ここは魂が集う場所。だから本来はこんなにイメージが学園として固定されていることもないはずの場所。
そんなこの場所を自分のおもちゃのようにして、ストレス解消に励んでいた?生徒会長?のフリをした、いけ好かない青年。それが『元凶』
そして、胡桃さんは、ここの管理をしている会社の平社員みたいなものって言うお話らしく、僕はここに来た魂の一人(?)ってことらしい。
元凶をどうにかするにはその『意志』を消さなくてはならないということだったらしいのだけれども、ストレートに僕が気絶させちゃったものだからそのままあっさり。
でも、普通あんなにあっさり行くことないってブーたれる胡桃さん。
つまり、僕は完全に巻き込まれただけ。胡桃さんは問題を解決する役目で、生徒会長が元凶。
シンプルに言えばそれだけらしい。
更に、僕が死んでいるのかどうかという質問に対しては、胡桃さんは答えなかった。
つまり、Yesなんだと思う。
そして、それらの質問を終えた時、朝日が登り始めた・・・
「・・・お別れダネ」
「そうなんだろうね」
「本当に有難うネ、キミに手紙を送って正解だったヨ」
「案の定あの紙は僕宛てということなんだね・・・」
「他の人でもいいんだけど、他の人って、生徒会長サンにそれなりに自分が満足の行く状況を与えられてたから、ネ」
「あー・・・」
「ソユコトダヨ」
「また会えるかな?」
「また会いたいノ?」
「出来れば。胡桃さん面白いし」
「・・・ンー、じゃあ、せめて記念撮影シヨ!」
そう言ってデジカメを取り出す胡桃さん。
最後までペースを持って行かれているけど、不思議と嫌じゃない。
「ンー・・・自撮りで二人ってやったことないからネー、難しいヨ」
「貸してくれる?」
「あ・・・」
カシャッ!
朝日が登っている方がバックになっちゃって、写真コンクールに出したら0点間違いなしの写真が撮れたけど、なんか、僕は満足しちゃった。
胡桃さんも、不満には思っていないようで・・・
「ソレジャ、いつか何処かで会えるといいネ!」
「そうだね、僕としては胡桃さんともっと仲良くなりたいかな」
「もっと・・・仲良く・・・」
「何か勘違いしてそうだけど、そういうのではないよ?」
「ダヨネー」
「完全に棒読みだね」
・・・・・・・・
・・・・
「これ、キミにもあげるネ」
「・・・これは?」
「さっきの写真現像プリント♪」
「早すぎ!?」
「特急便じゃないと、間に合わないからネ・・・」
「・・・そっか・・・」
「それじゃ、バイバイだヨ」
「・・・うん、また会おうね」
「また会おうなんて、よく言えるネ」
「だって、会えると思うし、なんとなく」
「それじゃあ、またネ、だネ」
「ばい・・ばい・・・・・」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・
「陽ちゃんー?なんか、この前撮った写真の中に、逆光写真になってて、全然わかんないんだけど、なんか幸せそうって感じる不思議な写真が混じってるんだけどー?」
~Fin~
ただそこにあるだけで
はい、別サイトにて掲載していましたオリジナルSS第二弾の方をこちらに持ってきましたのです☆彡
※別サイトのユーザー登録は削除済み。Web広告なんて嫌です★←
ただ、ルビの振り直しだけ疲れたです☆彡
ちなみに、最後にチラッと出てきた人は、一作目の人と同一人物なのです☆彡
シリーズ的な繋がりはあるよ的なもの+αという感じ☆彡
オリジナル作品でしたが、お読みいただけて何よりなのです☆彡
気に入りましたら、まだお読み頂けていないのでしたらパート1の方も読んでいただければより幸いなのですすー☆彡