花待ち月夜/短歌7首
春の暮れ
宵の明星西に在りて
東の空に月昇るを待つ今宵
名残の雪に堅く閉ざされし
彼の愛しき花の蕾は
渡りくる春風の甘き誘いに
心ときめき緩みてはやがて
朧の月に照らされし野山の何処かで
訪れし春の喜びに身を打ち震わせ
恥じらいながらも秘かに
その花びらをば 開かんとすなり
朧月 東の方に昇りたり
西の空には宵の明星
伝えよや 渡る春風戯れに
触れし桜の蕾開くを
人知れず 蕾開くや乙女花
罪な夜風の甘き誘いに
今宵また通う祇園の恋月夜
紅ひく花のなびくを夢見て
出でにけり花待ち月も東山
紅の枝垂れに枕せんとて
君が弾く ほろ酔い気分の三味の音に
浮かれて今宵 花開くかも
君やくなかれ 我の恋する桜木は
ひと名にあらず花の樹なれば
また今宵にと 空に残りし明星に
ひと声掛けて 月入りにけり
花待ち月夜/短歌7首