いつか東京が砕ける

いつか東京が砕ける

   







   
   







   








いつか東京が砕ける


   







   






金融工学とか、親殺し子殺しとか、アルカロイドとか、やさしいニヒリズムが渦巻く街は

無垢な命乞いを無残に抹殺して 壊滅へのエントロピーの暴走を止められない


   







   






いつか東京が砕ける

こんな優しい歌までもが潰される?


   







   






いつか東京が砕ける

いつか全ての悲鳴は 灰となる

そんな無思慮で無慈悲な死が

記憶も亡くし 無の物質へと蒸発する前に

僕は 愛する人たちの薄れゆく魂を 

蒼ざめたビー球の中にでも 永久に眠らせてやるさ


   







   






いつか 失望の詩を

君は僕のポケットに 押し込む

君は君の ありきたりの幸せを

君の人生のコップに詰め込んで 歌っていたよね


   







   






ここは 沈黙がいっぱい 不自然な正常さの幸せがひとかけら

あちこちの交差点で無数の日々をすれ違って、

僕や、君、彼に、彼女は、うすうす気がつきながら ここにいた

もはや顔がなく、おしゃべりな沈黙が覆い尽くすこの街では

「いつか」の繰り返しに何度も何度も崩壊し続けているから


   







   






いつか東京が砕ける

それは たとえば

レトロウイルスのやつらによる皆殺しか

定めを悟ったスーパーコンピューターの発狂か

生き延びる算段など遠い昔の諦念の屑箱に落とした人々の遺骸が、

日常が壊滅したビルの一室、空のない屋上のコンクリート、

物語が息を引き取った舗道の上で

抱き合って、手を結んで、

儚く 灰色の街角 散ってゆくのだろう

あちらにも・・・・・・  

こちらにも・・・・・・


   







   






そのとき君は、

僕のポケットに押し込んだ失望の詩篇のことを

思い出してくれるだろうか 

君は僕の詩か、僕の名前、  最後に呟いてくれるだろうか


   







   






そのとき僕は

ありきたりの幸せの歌を詰め込んだ君の人生のコップを見つめ

君が息を引き取るその間際に 

僕は 君の残した歌に   どれだけ打ちのめされることだろうね


   







   






いつか東京が砕ける

いつか東京が砕けるだろう


   







   






優しい歌と

優しい風と

優しい色と

優しい言葉と  心を 胸に


   







   






いつか東京が砕ける


   
   







   
   







   

いつか東京が砕ける

むかし女友達が書いてくれた詩を、僕が書き換えたり加筆した作品。
言葉に柔らかさを感じたら、それはきっと彼女の表現で、
言葉が尖って感じられたら、それはきっと僕が書き加えた言葉だろう。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich
先端KANQ38ツイッター https://twitter.com/kanq38

いつか東京が砕ける

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-11

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