舞姫の歌/二人娘道成寺(日舞)を観て

花の他には松ばかり

花の他には松ばかり


踏み出す歌の今始まりて

震える心ば打ち払い

日頃の精進ここぞとばかりに

すすっと袖より進み出で

舞台の芯にぞ控えたり


願わくば帰依する芸の諸神仏 
   
我を見守りならしめ給えと

心に念じて一振りを

袖を返して 初めにけり


ひと振りの袖を返して舞いければ
芸神降りて我を包めり

今われは我にあらずや情念の
虜となりたる彼の女となり

三味の音と囃子導く糸により
操り操る心と我が身を

舞うほどに無心となりし我が身をば
自然に委ねただ踊りつつ

我包む衣装の重みに滲む汗
ものともせずに天女の如く

気が付けば鐘の頭上の袖構え
拍子木清かに幕は締まりぬ

弾む息抑えて鏡に我を見て
新たな明日への精進を誓う


(尾上紫、市川ぼたん 両師に捧ぐ)

(2017.3.10)

舞姫の歌/二人娘道成寺(日舞)を観て

舞姫の歌/二人娘道成寺(日舞)を観て

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-11

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted