空が地面になったら

あるかもしれない奇跡?

4月

突然の事だった。

いきなり視界が、ぐるりと回って落ちていった。

仕事帰り1人で散りかけの桜を見ながら花見という名のやけ酒をしていた。
梅酒の缶チューハイ片手にそんなに強くない癖に煽るようにグイグイと梅酒を流し込んでいた。

今日は職場で嫌なことがあったのだ。
「今日はじゃない!」お酒の勢いでつい口に出てしまった。ノルマに嫌な上司。
女性特有の陰湿さ。男性の見て見ぬ振り。
社会人3年目。日常になりつつもやり切れなさを感じているのに毎日笑顔の仮面を被る日々。「しんどい」

毎日始発で出勤し帰るのは夜遅く
このところ日差しを浴びて無いなあっと
酔いが回った頭でぼーっと考えた。
「もう辞めようか」「いやいやまだまだ」
正社員という名にしがみ付かなければ不安になるから仕方ない。未来なんてわからないもの

花は好きだった。特に桜。見ていると苛々していた心も穏やかになる。仕事上夜桜しか見れないのが寂しいが、そのぶん静かでこんな夜にはぴったりだと思った。

嘘。
こんな夜にぴったりにはなりたくなかった。昼に見る暖かい桜の光景が恋しくて寂しくて少し泣きそうだった。

ふと見上げるとゆらりゆらりと桜が舞い落ちてくる。桜の上には微かな星空が煌めいた。

その言葉に何の意味もなかった。
ただふと思っただけだった。
「空が地面になればいいのに」と
遣る瀬無い現実から逃げたくてぼそっと呟いただけだった。

何かが弾けた。空に沢山の流れ星が瞬いた。体が宙に浮いた。桜の花びらと流れ星が重なり合って、とても綺麗だと思った。
酔い過ぎた。ふわふわする。

ドサッ

背中に微かな痛みが走った。
少し飲み過ぎたみたいだ。立つ力もないし明日休みだから寝てしまおう。
春だから凍死はしないだろう。ただの酔っ払いだ(笑)

何故か桜の花びらがそらを登っていく
「綺麗だ」呟いて意識は遠くなった。

空が地面になったら

空が地面になったら

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ホラー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-10

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted