紫の瞳
私の初作品です。
短いですが、連載ものなので続けて読んでいただけたら嬉しいです^^
少々現実離れした主人公と本当に存在しそうな街、友達、学校を楽しんでいただけたら嬉しいです。
「ねぇ、今の人見た?」「見た見た!」「カラコンだよねぇ…?」
そんな女子高生の会話を背中で聞き流しながらその青年は静かに歩き去った。
名前は東雲 雲雀(しののめ ひばり)
どこにでもいる普通の男子高校生では―――――なかった。
普通の人間とは違うところ。それは、深く吸い込まれそうな紫の瞳を持っていることだった。
大通りを少しそれた路地に入ると人はほとんどいなかった。
そこにか弱い泣き声が響く。
「くぅ~ん…」
そっと俺はダンボールに入った子犬に触れた。
様々な感情や情景が俺の中に流れ込んでくる。
『助けて』。棒を持ち振り下ろす人間。それが強く伝わってくる。
普通ではないのは目だけではなかった。
この目のせいなのか。俺は触れたものの過去や感情が読み取れる。
「お前…そんな酷い仕打ち受けたのか…」
震える子犬を抱き上げて着ていた上着で包んだ。
俺のマンションまではここから2分ほどで着く。
少し早足で帰路を急いだ。
ガチャ
20階建てマンションの12階。1205号室が俺の部屋。
必要な家具、家電だけを配置した、生活感の無い部屋でただ一匹俺の帰りを出迎えた。
「にゃん」
1ヵ月前に拾ってきた黒猫。
「ミント、ただいま。」
そっと頭を撫でてやると、『寂しかった』という感情が強く伝わってくる。
「ごめんな」
そう言うと足に体をすり寄せる。
ミントは、不思議そうに上着に包まれた子犬を見つめた。
紫の瞳