泡と潮のオルカ
大きな優しさと繊細さで
膨らんだ小さきオルカ
珊瑚礁のタイプライターで
人の詩を嗜む
彼女の胸のヒレには
5本の骨があり
ペンだって持つことが出来る
ある年大きな台風が来て
蘇鉄という蘇鉄
椰子という椰子
ハイビスカスというハイビスカスが
薙ぎ倒された
彼女は親友のひよこや熊と共に
部屋に閉じ籠り
風が過ぎるのを待った
暴風で電気は止まり
雨音は兵器のようだった
熊もひよこも怯え震えたが
海から来たオルカは
あるべき正しい海を
穏やかな波音
白い砂が透ける波
海を反射して光る空
人懐こい魚を
思い描いて夜を越えた
明くる朝
台風一過
空は晴れ渡り
海は澄み渡った
3匹の家族は
優しい浜辺を安堵と共に歩いた
波打ち際には
無数の光るガラスが
すべすべと輝き
見たこともない貝殻が
宝石のように
雪から目を出した
強い芽のように
命を唄っていた
泡と潮のオルカ