巨神
詩の巨人は眠っていた
永とも思しき時間
横たわっていた
いつの間にか彼の躰には森が出来
いつの間にか彼の躰に河が流れ
いつの間にか人々は彼の上で
暮らし始めていた
巨人はその事に気付いたけれど
大きな生物の優しさで
そっと見守っていた
ある時人間の一人が
自らが神の上に住んでいることに
遂に気付いた
人間は詩を読んだ
能う限りの祈りを込めて
詩と世界が永遠に平穏であるよう
巨人は祈りを聞き届け
目を閉じ、彼ら人間が一人もいなくなるまで
微動だにしないことを
決意した
それから数千万年が経つ
時々薄目を開けて様子を見る巨人の
瞳を
人間たちは水晶と呼んで
今でも敬い
詩を捧げている
巨神