あの日の記憶

また帰ってきなさい。と
手を振る姿が最後の別れになった。
雪道を走る車の中で
正気を保とうとメールを打つ。

こんなときどうすればいいのかは
本能的に知っている。

人とのつながりを求めて
メールを送ろう。
それは決して
もうすぐ家に帰る父には届かない。

この瞬間
置かれている状況全てが
他人事のように思えた。

(私はこの記憶を消してしまいたい。)
受け入れがたい出来事を
無かった事にしたい。の一言で。
人は死ぬとき無言のまま。
父はまだ若いと
言われ続けていたのに。

あの日の記憶

あの日の記憶

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-07

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