分速3メートル 第3章 「時空を外れたもの」
その日は梅雨時にしてはとても晴れていた。澄田花苗は鹿児島市街を歩いていた。
私はしっかりやってきた、お姉ちゃんみたいに福大には行けなかったけど、しっかりと短大を出て、まじめに仕事をしてきた。自分でもしっかりわかっている。そして、東京へ行く事も。
姉、つまり澄田美穂は二年前に島を出た。姉は、たまたまロケット打ち上げの都合で島に来ていた男性に一目惚れし、結婚して、今は京都に住んでいる。そして私も今、東京へ行く
今から二か月ほど前の事だ。
「澄田君、東京へ行かないかね。」
部長にそうすすめられたのだ。私は無論断る理由はない、しかし、やはりここよりもっと大きな町に行くのは抵抗があった。そして遠野貴樹の存在も、私の東京行を押しとめる原因だった。
二日前に島の実家に戻って荷物整理をしてきた。母は、やはり東京へ行かすのにはまだ早いと、反対したが。やはり私は、東京への期待を捨てきれなかった。
「花苗、本当に大丈夫なの?」
いつまでも心配そうな母…。
「大丈夫よ、お正月には帰ってくるから。」
「でも…。」
母は心配性ではないが、まだ娘を一人は手元に置いておきたいのだろう。
「何かあったら電話するんだぞ。」
父はそれしか言えない。
「大丈夫、向こうにもすぐ慣れるわよ。」
「そうね、等分したら遊びに行くわ。」
母も少しは元気でいようと思っているのか、照れ隠しか、ただ笑っていた。
「それじゃあ行ってきます。またね カブ!!」
私の犬のカブは、精いっぱいの声で「ワンっ!!」と叫んだ。
その後鹿児島市内のアパートを引き払い、ほとんどの荷物は会社経由で東京に送った。市内のビジネスホテルに一泊し、翌日はついに出発だ。
部長も自分の部下を手放すのは辛いだろう。
「しっかり、務めを果たすんだよ。澄田。向こうの空港に、東京支社の方が迎えに来てくれてるはずだから。」
「はい、澄田花苗。行ってまいります!!」
深くお辞儀をして、オフィスを後にした。ホテルのチェックインを済ませ、ベッドに腰を掛けていた。東京にはどんなものがあるのか、何か、リゾートスポットがあるのか?そんな想像をして、夜になったら自然に寝ていた。
ついに東京に行く当日が来た。少しの手荷物を持って空港へ行った。きっと遠野君が初めて島に来たときは、似たような道をたどってきたのだろう。搭乗手続きを済ませ、支社の人たちに手土産を買い、飛行機に乗っていたら自然についた。
支社の人たちは丁寧に答えてくれて、タクシーで私をアパートまで連れて行ってくれた。場所は杉並区の「阿佐ヶ谷」という所らしい、JRの駅があって新宿まで20分ちょっとと言った所だろう。会社は恵比寿にあるから1時間はかからないと言われた。
この頃私は、土日に必ずどこかに行くというルール?を決めていた。東京だけでなくいろんなところに行った。横浜にも行ったし、千葉の海岸に行くこともあった、気に入るところもあったし、海に行った時には島が凄い恋しくなって、家に帰って凄い泣いた。『東京の空は狭っちいし、人も多いし…便利なんだけど不便な矛盾したことも多いし』まぁでも、それはそれでいい、だって空が広かったら、遠野君との距離も遠くなっちゃうと思う。
これからどうしようか、迷う。会社には慣れたし、友達も出来た。新しい発見があれば、何か新しい事も始めようとした。
『もう何となくじゃイヤなんだ!!』
何となくはイヤ、それでいい、そういうと荷物をカバンに詰めて、一通の手紙を手に取って、私は出かけた。 会いたい人がいる。この東京に…会うべき人が。
分速3メートル 第3章 「時空を外れたもの」
まぁ…今回も書き換えが多いですね、これは仕様ですけど…。
「阿佐ヶ谷」が出てきたのは、当時親戚の住んでいた場所が阿佐ヶ谷だった。 と言う理由です。
何度か親戚の家に遊びに行った際は、「良い街だな」と感じた所為があります。
何となく、家の近く(ブログを見てもらえばわかります。)でもいいな、と思ったことはありますが、あえてここは都会に住んでる事を表現したかったので、極力新宿に近づけました。