青い車と二人目のユウスケ 3

すすきの野原へ



秋が好きだ。


もっと言えば秋から冬にかけて
どんどん寒くなるのが

もっともっと好きだった。



山へ行こう



と約束したユウスケは約束を健気に守ってくれた。

男の人は、約束を破るものだと
どこかで信じてなかった私は、それはそれで嬉しかった。


私の喫茶店仕込みのサンドイッチは、焼き玉子とハムと胡瓜を挟む。
和辛子と味の素が隠し味だった。

それしか出来なかったけど、最高のサンドイッチをぶら下げて私は、ユウスケの青い車に乗り込んだ。

都会のビルから田舎へと町並みは変わり、北へ北へと進んでいるみたいだ。

運転はユウスケ、私はいつもの助手席だった。


手を握ったあの日からもう二週間は過ぎたけど、相変わらずユウスケは何にもしなかった。

その二人の距離が妙に心地良かった。


ユウスケは感情とか心とか気持ちとか相手のためとかそういうのを大切にしていて、それが今の私の支えになっている。



でも、でも、

女の子慣れしていないユウスケは、時々テンションを間違える。

やたらと感情が高ぶっていて、疲れないのかなと思うくらい、自分の話をたくさんたくさん話し始める。

そうなると私は次第にイライラする。
何故か無性に腹が立ってくるのだ、ユウスケのこの空気読めない感じに。

それは言い訳だけど、旋律の合わないピアノを弾いた違和感のような感覚だった。

そして私はワガママ女に変身する。

思い通りにならないからと、泣いて怒っているスーパーのお菓子売り場にいる女の子みたいに。

とっても大人げなくて、自分でも分かっているけど、そうなると歯止めがきかなくなる。


ユウスケはそんな私に気付いて
慌てふためいている。

あの手この手を使ってご機嫌取りをしてくる。
美味しいものや、甘いもの、きれいなお花
スピッツのうた


そして無償の愛




こうしていると
すすきの野原へ到着。



どこまでも続く野原 山 空 鳥の声


ベージュ 黄色 黄金色 一面のパノラマ


波のようにはためくのは
すすきだけでなく 私のこころ。


さっきまでの私は
この景色と共に吹き飛んでいく
全てが帳消しとなる。


日々のこんな小さなストレスや
わだかまりも
さらりと 忘れられる。


わたしという人間がちっぽけに思う。


そして素晴らしい この大自然に驚いている。
この美しさが わたしを洗う。


癒されたよ ことばはなくても
全てがリセットされたみたい。


黄金の光の草原
小さな二人は
お互いを想いあう


こころからの信頼をよせて
ユウスケにご褒美を



ユウスケに生まれて初めての
ファーストキスを
あげるわ。


あの時のキスは


ユウスケのにおいに混じって
特製サンドイッチ
の味がしたね。









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青い車と二人目のユウスケ 3

青い車と二人目のユウスケ 3

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-01

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