雨の七夕
数奇な雨によって隔てられた恋人の物語
天界に彦星という若者と織姫という娘がおりました
彦星は働き者のイケメンであったし
織姫はしとやかでしっかり者の美人でありました
それが必然であったかのようにふたりは出会い恋をして
どちらもお互いに夢中になったのでした
ふたりは皆の進めもあって所帯を持つことになりました
働き者のイケメンとしっかり者の美人であっても
楽しい新婚生活に浮かれてしまって遊んでばかり
神様達はふたりが一緒に居るのは
お互いのためにならないと考えて二人を離別させました
ふたりは離ればなれになったけれどお互いのことを想っていました
そんなふたりのことを神様達は可哀相にと思って
年に一回天の川が現れるときだけふたりが再会することを許してあげました
ふたりは年に一回のそのときを待ち望んでいました
はじめての七夕その日は雨でした
次の年も次の年もあいにくの雨で
七夕の日に会えるはずのふたりはとても恋い焦がれていました
奇妙な偶然で七夕の雨は10回続いて降りました
11回目の七夕
とうとう晴れ間がやってきました
果たしてふたりは10年ぶりに出会いました
10年ぶりのお互いを見て
ああ年取ったなぁと内心感じましたが
再会はやはりうれしくふたりは共に夜を過ごしました
明けて
「また十年待たされるのかしらね」
「十年だって百年だって待つさ」
「百年経ったらもうわたしおばあちゃんよ」
「僕だっておじいちゃんさ」
ふたりは笑みあいました
そしてまた離ればなれになりました
つぎにふたりが会えるのはいつのことでしょう
それはお天気だけが知っているのです
雨の七夕