雨の七夕
quicksort256
数奇な雨によって隔てられた恋人の物語
天界に彦星という若者と織姫という娘がおりました
彦星は働き者のイケメンであったし
織姫はしとやかでしっかり者の美人でありました
それが必然であったかのようにふたりは出会い恋をして
どちらもお互いに夢中になったのでした
ふたりは皆の進めもあって所帯を持つことになりました
働き者のイケメンとしっかり者の美人であっても
楽しい新婚生活に浮かれてしまって遊んでばかり
神様達はふたりが一緒に居るのは
お互いのためにならないと考えて二人を離別させました
ふたりは離ればなれになったけれどお互いのことを想っていました
そんなふたりのことを神様達は可哀相にと思って
年に一回天の川が現れるときだけふたりが再会することを許してあげました
ふたりは年に一回のそのときを待ち望んでいました
はじめての七夕その日は雨でした
次の年も次の年もあいにくの雨で
七夕の日に会えるはずのふたりはとても恋い焦がれていました
奇妙な偶然で七夕の雨は10回続いて降りました
11回目の七夕
とうとう晴れ間がやってきました
果たしてふたりは10年ぶりに出会いました
10年ぶりのお互いを見て
ああ年取ったなぁと内心感じましたが
再会はやはりうれしくふたりは共に夜を過ごしました
明けて
「また十年待たされるのかしらね」
「十年だって百年だって待つさ」
「百年経ったらもうわたしおばあちゃんよ」
「僕だっておじいちゃんさ」
ふたりは笑みあいました
そしてまた離ればなれになりました
つぎにふたりが会えるのはいつのことでしょう
それはお天気だけが知っているのです
雨の七夕