Fate/key's memory 後編 上
前編→http://slib.net/5119
中編→http://slib.net/5809
後編 中→http://slib.net/8836
露出男です。前の更新から2カ月以上離れました。いや、忙しかったんですよ。アイドルマスターの7thライブにGRANRODEOのライブだったりで・・・
そんで今は学生にとっては一番厳しい試験の時期。辛いです。ちなみに上ってつけたのは後編の内容があまりにも多すぎるからですね。多分上中下になるのかな?
注意書き
・あくまでこれは私の妄想です。参戦作品についてはオリジナルも含んだりしています。その中で本編の設定を勝手に変えちゃったりしてます。
「あれ?こここんな設定だっけかなぁ」と思うこともあるとは思いますがご了承ください。その作品のファンの方は大変不快な思いをされることもあるとは思いますが
分かっていただけると助かります
ではお楽しみください。
聖杯戦争で敗れたマスターは監督役に保護されるという名目で普通の生活を送ることができる。正確には日常に戻ると言った方が早いだろう。ランサーのマスターのインデックスはランサーが消えた後、監督役から派遣された使い魔に期間中の保護を申請していた。これで一安心ということなのだが、上条当麻は納得がいかなかった。恐らく、普通に戦って普通に負けていたのなら彼自身、普通の生活に戻っていただろう。だが、バーサーカーが出現した際に取材に出た記者は皆殺しとなった。つまり、一般人も犠牲になってしまったとうことだ。この事件は世間では迷宮入りとなってしまったが、事実を知っている上条はなんとか止めたい。この戦いを止める方法はないかとずっと模索していたが、手掛かりなど何もない。何よりインデックスにそれがバレた時点で止められるのはわかっている。そこで上条は一つの賭けに出た。自らが信用出来ていい情報持ってくるであろう男、土御門元春への協力の呼びかけである。協力と言ってもただ情報を持ってきてもらうだけだ。だがその情報を持ってくるという作業がどれだけ危険があるか。予感は出来ていた。「聖杯戦争について何か知っているか?」というのも危険と判断し、言葉をはぐらかしてみた。
「この街で最近おかしなことないか?この前の記者の件と言いさ。」
普段の日常の会話である。そこから引っ張り出したいところである。
「なんだ?カミやん。珍しく世間話か?」
「日常的な会話だよ。なんか変なんだよなー最近。」
「・・・・・・・・どっかおかしいぞ?」
「別におかしくなんてないさ。物騒だなーと思っただけだよ。これから収穫祭もあるっていうのにこんなに物騒なんじゃ楽しめるかどうか・・・」
「うーん。やっぱりカミやんおかしいぞ?まぁ確かに最近物騒ではあるが・・・」
「だろ?原因なんだと思う?」
「どうだろうなー。あ、マーテル会だ。カミやん。マーテル会って知ってるか?」
「マーテル?あぁ・・・あの環境保護団体?だっけ?」
「そう!日本マーテル会!ここに本部があって本館はあそこだな。」
土御門が指を指す。そこには大きい建物があった。元からそれは知ってはいるのだが、なんで今更それを説明するのだろうか。上条は不思議に思った。
「そう。そのマーテル会。噂ではその中にもいろいろな組織があるらしい。俺もそれには興味があるんだが、いろいろあって手は出すなと言われてるんだ。だから手出しはしないな。まぁ舞夏がマーテルがどうのこうのってなったらいろいろ調べるけどさ。」
「へー。いろんな組織ねー・・・」
そこで上条はあることに気付いた。
「(・・・・ん?なんでこんな会話になっているんだ?土御門は俺に何か伝えようとしてないか?)」
「土御門・・・お前俺に何か伝えようとしてないか?」
核心に触れてみた。土御門の表情がいつものニヤけた顔から一変して強張った。
「カミやん・・・悪いことは言わない。これ以上マーテルについて調べるな。とは言っても調べるのがカミやんだってのは知ってる。だから忠告しておく。何かしら調べてガイアとガーディアンという言葉が出てきたら、逃げろ。すぐに逃げろ。じゃないと・・・」
上条は土御門の淡々とした口調に圧倒された。ガイアとガーディアンなんていきなりブッ込んだ話されても困るが有益なのは間違いない。だが、
「死ぬぜ」
現実を、突き付けられた。
病院の個室では阿東優とライダーがこれまでの状況をまとめていた。優自身が知っているのはアサシンとセイバーが戦ってほぼ相打ちになったということだけ、その相打ちの原因を作ったのが立華奏だということ。ライダー組はアーチャーの正体が音無結弦だということには気づいてはいない。奏を森に置いたあと、そのまま帰って来たのである。
「で、アサシンとアーチャーの行方がどうなったのかわからないと・・・」
「そうだ。だが感じなくなった気配があってだな・・・」
「マジか。で、それは?」
「アサシンだ。だが、アーチャーの気配も変でな。今は感じることが出来るが昨夜は感じることが出来なかった。それが意味すること。小僧、理解できるか?」
「・・・・・・異次元、か?」
「上出来だ。まだ仮説の段階だが、アーチャーは異次元に飛ぶことが出来る。それともう一つ。これに関しては元々気になっていた、ということか。」
「なんだよ。」
「我等が森に送り届けたあの小娘。あの小娘はアーチャーだと自ら言っていたな?」
「??? 普通はそうじゃないのか???」
「普通は、だ。だがアーチャーの気配として出てきたのは全く違う気配だった。」
「は?」
「アーチャーは、あの小娘ではない可能性があるということだ。」
「そんなことってあるのか?」
優は淡々とライダーに質問していくが、内心は驚きの連続である。
「無いな。むしろあってはならない。普通サーヴァントと言うのはマスターの命令に従って行動するものだ。だがあの小娘からは自らの意思で闘っているというものが伝わってくる。つまり、アーチャーは・・・」
「イレギュラー、ってことか・・・」
優はライダーの結論を遮り、代弁した。
「今我等がアーチャーと対峙するのは危険すぎる。ここは少し様子を見るとしよう。」
「OK。で、セイバーはどうなってんだ?」
「・・・・・・」
「ライダー?」
突如ライダーが黙った。だが少しの間をおいてライダーが口を開く。
「セイバーの傷が思ったよりも深い。今あの小娘が必死に看護をしている・・・そういえば変な子供もいたな・・・誰だ?あれは。どっちにしろ、セイバーはもう持たない。事実上、この戦いの生き残りはキャスター・アーチャー・ライダー。この3人ということだな。」
「なるほど。で、キャスターの能力ってのはお前何か知ってるのか?」
「それについては全く不明だ。キャスターが現れたという事実も無い。この戦いにおいて殆ど動いていない可能性が高いな。」
「それってアリなのかよ。」
「作戦のうちの一つだろう。結局は戦うことになる。相当な自信があるってことだ。」
「ふーん・・・」
優はライダーとの状況のまとめが終わった後、眠りについた。
上条当麻は考えた。まずはどのようにこの戦争に再び溶け込むか。どのマスターに溶け込んだ方が安心か。一応は考えてみたもののまとまることはなかった。むしろ、残り何人のマスターが残っているのかすらわからない。聖杯戦争から除外された人間は関わることは出来ないから何も知らないのである。少なくとも、ランサーとバーサーカーは消えてる。実際に顔を見たのはセイバーのマスターの雪村千春のみなのだ。
「(ああああああああ!わからん!こうなったら行くしかない!)」
上条は、千春の元へと向かうことにした。だが、行こうとして気付く。
「(どこにいるの?)」
また一から出直しとなってしまった。上条は千春の特徴を思い出す。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・着物。」
着物。普段から着物を来ている若い人はいないか?この質問で道行く人々に聞いて回った。そして辿りついた場所は、千春のいる道場だった。
「ここか・・・」
「ここか・・・」
「ここか・・・」
3つの声が同時に重なった。
「ん???」
3人がお互いの顔を見る。
「あーーーーーーーーーー!?」
「えっと・・・3人はどのような御用で・・・?」
道場内ではアーチャー・瑚太郎・上条当麻の3人が並んで座っていた。その向かいに雪村千春が座る。
「あ、俺の事は覚えてないと思うから自己紹介を・・・名前は上条当麻。以前、夜の学校でそっちのセイバーとこっちのランサーが戦った時にランサーのマスターと一緒にいた男だ。」
「!?」
アーチャーと瑚太郎が驚いたような表情をする。だが千春は
「・・・あーあの時の・・・その説はどうも」
なんて抜けたことを言っている。
「そのお隣が天王寺さんで・・・あなたは・・・」
千春がアーチャーのほうを見る。アーチャーは何もかも隠さずに答えた。
「俺は、この戦いにアーチャーとして召還されたサーヴァントだ。」
「!?」
今度は3人が同じ反応を見せた。千春は少しだけ戦うような姿勢を出している。
「あ、大丈夫。今日は戦いにとかそういう事で来たんじゃない。恐らく、この3人とほぼ同じ理由だろう。そうだろ?お前達がここに来た理由は、聖杯戦争についてのことだろ?」
「・・・・・・」
2人は何も答えなかった。
「でだ、今日俺が来たのは聖杯戦争についてと言ったな。ではその内容だ。キャスターの正体が判明した。だからここに来た。ライダーのところにも伺うつもりだったが、その必要はないようだな。ライダー。」
アーチャーは鏡のほうを見る。そこにはゆらりと赤い龍が浮かんでいた。
「ぬぅ・・・バレていたか・・・ちょうどお前らが来るのを見たのでな話を聞こうと思っていたが。」
「いや、むしろ好都合だ。わざわざそっちまで行かなくて済むからな。ライダーも来たということは下手したらそのキャスターも来る可能性が高い。どこか別のところで話をしたいのだが・・・」
「あ、それなら大丈夫です。みなさんそこで目を閉じて集中してくれませんか?私が目を開けていいと言うまで絶対に開けないでください。ライダーはこの前と同じような感じで。」
4人が目を瞑る。
「・・・・・・・・・・」
「目を開けてください。」
3人が目を開けた。3人が見た光景はさっきと何も変わらないが気配が違う。いち早くアーチャーが気付く。
「固有結界か。」
「そうみたいです。私はあまりわからないのですが、セイバーの力でもあるみたいです。特にこれは戦闘能力のない結界ですので皆さんの前でやっても大丈夫だと判断しました。ではアーチャー、続きをお願いします。」
「あぁ。だがその前に、セイバーはどうした。」
「セイバーは・・・・・」
「何勝手に人の家に上がりこんでるんだ貴様ら・・・」
道場の入口からセイバーが現れた。だが立っているのもやっとというような状態である。本人はそれを見せないようにしているがバレバレだ。
「そういうことか。」
「セイバー・・・!何してるんですか!傷はまだ治っていません!寝ていてください!」
「そういうわけにもいかねぇ・・・キャスターの正体がわかるんだ。これ以上の好機はないだろ・・・」
「ダメです!寝ていないと傷の治りが・・・・・・・・?」
言って千春は気付く。昨日よりも数段傷が回復している。それを見て千春はここにいることを許可した。セイバーは千春の手を借りながら床に座った。
「よし。じゃぁ本題だ。まずその前にここまでの情報をまとめよう。今残ってるサーヴァントは4人。セイバー・アーチャーである俺・ライダー・キャスターだ。これに関しては異論はないな?」
「待て、アサシンはどうした。」
セイバーが遮る。
「それが話の続きになる。アサシンは俺が倒した。」
「なに・・?」
「その時、アサシンのマスターは救うことが出来ずに死んでしまった。これに関してはこっちのミスでもあるが、死ぬ間際にキャスターのマスターの正体を教えてくれたんだ。キャスターのマスターは・・・・日本マーテル会会長・・・いや、ガイアの聖女である加島桜なんだ。」
「!!!!!!!!!!」
瑚太郎は一人強い反応を示した。
「(まじかよ・・・・こりゃとんでもないことになってきたな・・・このまま行けば明らかにガーディアンは消される被害だけは最小限に抑えたいところだが・・・)」
「・・・どうやら心当たりがある人もいるみたいだな・・・」
アーチャーは瑚太郎のほうを見た。
「俺は・・・。・・・俺は今鍵を保護しているんだ。それは千春さん、確かアンタには言ってるはずだな?それをガイアは狙っている。それともう一つガーディアンってのがいてそいつらも同じだが、目的が全く正反対だ。でも今の話が本当だとしたら・・・ガーディアンは確実に消される。魔物にサーヴァントとなったら確実に勝ち目はない。今ようやくこっちの準備が整ったってのに・・・」
「準備?」
「あぁ・・・これに関しても千春さんには言ってるけど他の奴らは知らないな?俺は今、2つの組織を内部から壊滅させようと動いてる。それの準備がようやく整ってきたところなんだ。ここからが本当に大変なんだけどな。これまでの流れからして篝・・・鍵はサーヴァントには見えているはずだ。もしもこいつ鍵だなって思ったらまずは捕まえるじゃなくてその場から逃がしてあげてほしい。そうすれば敵視されなくなるはずだ。少なくとも、俺はそうだった。」
瑚太郎は鍵の特徴についても話し、確認をした。
「で、その加島桜についてなんだが・・・なんて言えばいいのかな・・・あいつは全てを見通してる感じがするんだ。対峙して座ったこともあるがけど・・・こっちの嘘を見抜いているんじゃないか?って感じの威圧感がある。あと最近になって加島に側近の秘書がついたんだ。若くてちょっと派手な服を着た女だ。話はしたことはないが俺は顔を見られてる。まぁ俺がキャスターとしてのあいつと接触するのは非常に危険だろう。ましてやガイア側で活動してる時にお前達に合う可能性も高い。その時はなんとかするよ。あ、あと俺今ここでは天王寺瑚太郎で名乗ってるけど普段こういう諜報活動は鈴木凡人で名乗ってるから、よろしく。」
アーチャーは今の話を聞いた上でコメントを出す。
「・・・俺はこれまでキャスターに何度も殺された。そしてその度に仲間に助けられた。今その仲間たちにガイア周辺の調査を依頼してるんだ。もう少ししたら俺のガイアの本部に乗り込んでみるつもりだ。恐らく修学旅行的な感じで行けば大丈夫だと思ってる。もし、新しい情報とかが入ってガイアとして活動中の天王寺に会ったらそれはそれで情報を伝えるよ。」
「OK」
「話は以上か・・・で・・・お前は一体誰だ?」
全ての話が終了し、セイバーは上条の方を見た。彼自身空気だと言うのは自覚していたのだが・・・
「いや、俺が聞きたいことも全てこの2人が話してくれたんだ。だから収穫はこれ以上ものはないよ。で、この結界というのはセイバーと千春さん、どっちかの意識で消すことができるのか?」
「あぁ、さっきは千春の意識でここに飛んできた。」
「もう消すだろ?」
「会話が終わった以上は消すしかあるまい。魔力も消費するからな。あ、お前ら今の話よく聞いてたな?少しまとめておけ。」
セイバーは誰かに声をかけているようだった。
「そうか・・・じゃぁ・・・」
上条は床に右手を当てた。何も起こらなかった。
「あれ?」
「おい、どうした。」
皆が奇怪な目で見る。
「(無理なのか・・・?いや、そんなはずはない。ランサーと城に向かってた時確実にあれは結界の中だった・・・つまりは幻想。作り出された世界だということだ・・・じゃぁその出口・・・入口か!)」
上条は立ちあがって道場のふすまの前に立った。皆が上条を見る。上条は右手をふすまにあてた。
「・・・・・・ッ」
セイバー達は、元の空間に戻っていた。
「な・・・・」
これには創造主のセイバー自身も驚きであった。
「貴様・・・何者だ・・・」
「俺は・・・ランサーのマスターだったやつの連れだ。見てわかるように・・・いや、言葉に出して言うのは危険だろう。ここはメモでもして説明するよ。」
上条は千春からいらない紙とペンを借りて紙に自らの事を書いた。「幻想殺し」彼が持っている唯一の力。さっきまでいた空間をどこかで感じたことがあると彼自身感じていた。まずはランサーといっしょの時。だが、
「(もう一つ・・・どこだっけかなぁ・・・)」
もう一つ、同じ感覚の場所があったと思っていた。だが、今この状況を覚えておけばもしもの時、対応できるはずだろう。上条は紙に全て書き終えた。
「そんなことがあるのか・・・」
みんな驚きだった。
「で?お前はこの力を使ってどうするつもりだ。もう敗退した人間がこの戦いに戻ることなど・・・」
「いや、そういうことじゃないんだ。お前らなら聖杯をちゃんとした形で使ってくれるだろうって思ってね。もしものことがあったら、俺を使ってほしいんだ。」
完全な嘘である。もしもここで「聖杯戦争を止める」なんて言ったら全てを敵に回してしまう。この瞬間に殺されるだろう。だからまずは味方を作ること。ここに徹底する。
「(流石にここは嘘つくしかないな・・・すまない・・・)」
アーチャーが時計を見た。
「あ、そろそろ仲間との待ち合わせの時間だな・・・そろそろ出るか・・・みんな今日はいきなりすまなかった。結構パニックになってると思うけどまずは状況の把握に徹してほしい。何かわかったらまた連絡するよ。それじゃぁ。奏、ゆり、帰るぞ。」
アーチャーは門の前で見張り番をしていた2人とそのまま出ていった。
「んじゃぁ俺も出るかな。なんせ篝が心配だ・・・。じゃぁな。いきなり来て悪かったよ。」
瑚太郎もその場から出ていく。
「さて・・・俺も出るかな・・・夕飯の飯も買わないと・・・」
上条が立ちあがる。するとセイバーが
「待て。お前、さっき言ったこと・・・本当か?」
ギクリとする。悟られまいと表情を変えずに返答する。
「本当って、何がだよ。」
「お前が再び戦いに介入しないという話。あくまで支援という形にするというのは、本当か?」
上条はその目に一種の恐怖を覚えた。ランサーの怒りの目とも違った違う意味での恐怖。鬼。それを感じ取った。
「本当だよ。俺には魔術なんて使えないからな。」
言いながら逃げるように道場から出ていった。
ギルド内でアーチャー達は調査の結果を話し合っていた。
「じゃぁ、報告会を始めるぞ。まずは遊佐と椎名と大山君と直井のチームから。」
「それじゃぁ、僕が報告しましょう。」
直井という少年は静かに、報告を始めた。
「まず僕達が行ったのは・・・ガイア本部への侵入です。」
「ざわ・・・ざわ・・・」
場が騒然となった。あまりにも突っ込んだ内容だったからである。
「待て。どうしていきなり突っ込んだところまで行こうとした。」
「だって音無さん言ったじゃないですか。催眠でなんとかしろって。それを使ったら結局は内部に行けるって思いましてね。で、です。まずはマーテル会の案内係の人に修学旅行の観光ということで中には入れてもらいました。あ、事前に電話のほうは入れておいたので不正ではありませんよ。中はすごく静かなところだったという印象です。なにより、メンバーがメンバーだったせいか怪しまれることも全くありませんでしたね。だからもうちょっと中まで行くことにしたんです。そしたら立ち入り禁止の個所が出てきて、普通に掻い潜ったら
「ここは立ち入り禁止だ。今すぐ出て行け。」
って言われて、「私達はガイアの人間だ。」という催眠をかけました。そしたら「調子はどうだ?」だの「魔物いる?」だのって訳のわからない内容ばかりでした。しかもそこに小さな女の子もいましたね。言葉を話すことのできない。もうちょっと奥に行っても良かったんですが、ダメでした。」
「どうしてだ?」
「いたんですよ。」
「いたって・・・!!」
「はい。キャスターです。」
「なぜだ。あいつは話によるとマスターの加島とずっと一緒にいるはず。」
「催眠をかけた相手から聞きました。加島はその直後に会合があったようです。その護衛といことでキャスターが動いていたのかと。でも変じゃありませんか?キャスターは霊体となって行動もできるはず。」
「いや、サーヴァントは全体的に霊体化で行動できる。俺は異端なだけだ。確かに変だ。だが、その答えはある意味簡単かもしれない。直井、キャスターを見た時、どう思った?」
「・・・・・焦りましたよ。奥に行きすぎたってね。」
「そうだ。畏怖。これだろう。雰囲気が強すぎるんだよあいつは。あとは霊体化出来ない事情少なからずはあるはずだ。ここは後でまた考えるとしよう。で、報告は以上か?」
「いや・・・実は・・・ここからが本題です。」
「?」
一同が「?」の顔で直井達を見る。
「実はそろそろ戻ろうって時に変なドアがあったんです。加島の部屋とは違った変な扉です。ガイアの人間ということで催眠をかけているから大丈夫だろうということでドアを開けたら、下に続く階段があったんです。それを下ったらトロッコが出てきてそれに乗ったら着いた先が・・・学校の教室だったんです。」
「は?」
「は?」
「は?」
「そう来ると思ってましたよ・・・証拠がこちらの写真です。」
「うわ、マジだよ・・・」
一同は珍しいものを見たとある意味感心していた。
「つまりその学校となんらかの関係がある可能性が高いですね。」
そこでアーチャーが口を開いた。
「これ、めっちゃ使えんじゃね?」
「ん?」
一同はアーチャーを見る。
「このトロッコの行き先を、うちの学校にすればいい。その教室の写真があるし、複写することは可能だ。」
「マジ?」
一同が口をそろえる。
「俺たちにとってはいつもいた空間だが、実際にはNPCの世界だ。書き換えることは簡単に出来るよ。実際に体育館だって修理してあるし。何より、体育館を壊したくないっていうのもあったんだ・・・」
「・・・・・・」
「ま、そういうことだ。その書き換えに関しては俺に任せてほしい。適当にトラップも仕掛けておくよ。」
「たとえば?」
「地雷。」
「うわー・・・」
「引くなよ。でも、そこまでしないと奴らを狩ることは出来ないはずだ。キャスターは攻撃を受けると何匹もの蝶になる。それ以上の事をしないと無理だ。それこそ、地雷。しかもただの地雷じゃなくて、時限式拡散弾を使った地雷だ。」
「うわー・・・」
「・・・・・・で、次の報告は?」
「よし、街の報告だな。・・・・特になし!」
「だあああああああああ」
皆が一斉にこけた。
「ひーなーたーくーん?どういうことかなぁ~?」
「いや、本当に何もなかったんだって。街の人にマーテル会について勉強してるって言っても出るのは同じことだけなんだよ。やっぱり表と裏があるのは間違いないってことだな。特になしとは言ったけど・・・気になる点はあった。」
「なんだ?」
「子供だよ。」
「子供?」
「あぁ。マーテル会の本部の前を通ったらそこで小さな子供が遊んでいたんだ。で、その相手が変なんだよ。」
「変?」
「ローブを被っていたんだ。しかも、すごく奇妙な。」
「あ、それ僕も見ましたよ。」
直井が日向の発言に食いかかる。
「直井、それはどこで見た?」
「本部です。しかも、ガイアのほう・・・」
「子供相手もあるってことかよ・・・」
皆が一斉に黙った。戦うと言うことの現実を知る。相手は子供の場合だってあるのだ。その場合は殺すことも視野に入れないといけない。その子供が魔物使いだとしたら、確実にやられてしまうからである。
「みんな、もし戦いに子供が出てきたとしたら・・・殺してはダメだ。戦闘不能までにするんだ。頼む。」
「大丈夫だ。それくらいわかってる。」
「よし、後はギルドの書き換えだ。これが終わったら・・・パーティでもしよう。」
「おいおい、そういうのは勝ってからじゃないのか?」
「いや、今やりたいんだよ。もうちょっとで収穫祭が来る。天王寺の言うことが本当なら、この日で全てが終わるんだ。楽しもうぜ。」
「そうだな。」
皆は笑顔であった。
なぜ、アーチャーが「天王寺が言うには・・・」と言ったのか。雪村千春の家に集まった時、瑚太郎はこんなことも言っていた。
「もうじき収穫祭が来る。恐らくガイアはその収穫祭での騒ぎに乗じて何かしてくるはずだ。ガーディアンもその情報自体は掴んでいる。つまりキャスターも何かしら仕掛けてくると言うことだ。俺は俺で鍵を守ることに専念するが・・・厳しいことには変わりは無い。なんでそんなことが言えるかというと・・・わからない。でもそんな気がするんだ。どこかで感じたような・・・」
アーチャーの陣営はそこが聖杯戦争の最後だと考えた。だからこそその前のキャスターとの決着が必須なのである。失敗したら確実に大量の犠牲者が出るだろう。この聖杯戦争の勝利者。それが加島桜になるということだ。だがアーチャーは違うことを考えた。
「この戦いに勝利者など生まれない。」
全市民の一瞬の死。聖杯を手にする者は誰もいなくなる。それだけは避けないといけない。アーチャーはどうするか必死に考えた。考えがまとまったのは2日後。収穫祭まではその日残り2日だった。アーチャーがまとめた事。自らの願いである。キャスター陣営の願いが「鍵による救済」ならアーチャーの願いはその逆である。
「全ての人間の日常そのままにする」この聖杯戦争というものを無かったようにする、ということだ。このことはアーチャー自身が考えたことで戦線も人間には言っていない。むしろ言わない方が得策だろう。アーチャーが考えをまとめている2日間の間、戦争に動きは無かった。逆に不思議なくらいである。ただ、森の方が多少騒がしかったということだろうか。アーチャーは森に向かった。森では何らかの戦闘があったようだ。木々が折れている。もちろん、人間の死体もあった。腐りかけの状態で異臭を放っていた。その奥には一本の大きな木。そこにも死体があった。比較的新しい死体である。だが、その死体だけはなぜか綺麗に整えられていた。森では瑚太郎が行動を取っているはずだと思いだし、電話をかけたが留守電の状態だった。
「(死んだわけではないよな・・・・・・・・・・・・・?)」
誰かが見ている。不思議と殺意は感じない。むしろ怯えているのか。敢えて言葉をかけた。
「俺は何もしないぞ。大人しく出て行け。帰るべき場所に帰るんだな。」
感じたこともある気配だったので会ったことのある人間なのだろう。そう諭し、森を出た。
「(天王寺・・・無事でいろよ・・・)」
アーチャーの考えがまとまる2日前、天王寺瑚太郎は、ガーディアンの大規模捜索の情報を手に入れた。恐らく、あちら側にも自分が何をしているか伝わっているだろう。会ったら、殺し合いになるに違いない。
「(もしも、あいつらや・・・江坂さんとあったら俺は・・・殺すことが出来るか・・・?)」
そう思っていた。だが、そうしないと先に進むことは出来ない。邪念が入れば簡単に殺されるだろう。瑚太郎は森へと向かった。だがその入り口にいたのは
「嘘だろ・・・?」
ガイアの魔物。いつもの犬型の魔物である。
「なんでガイアがいるんだ・・・」
ガーディアンが大規模捜査をするということ。確かにガイア側に漏れていても何もおかしい話ではない。だがなぜだ。
「そんなことはどうもでいい・・・急がないと・・・ッ」
瑚太郎はダッシュで森を駆け抜けた。
「篝!」
いつもの丘へと行く。そこにはなぜか小鳥もいた。
「お前・・・ッ!何してんだよ!千春さんのところを離れるなって言っただろ!」
「だって・・・そうしないと親が・・・」
「まだそんなこと言ってるのか・・・いいか。今ガイアとガーディアンが鍵の捜索に入ってる。今この森はとても危険な状態だ。お前ら2人を守りながら逃げるってのはそうとう大変なんだぞ。」
「知ってるもん・・・」
「じゃぁなんで来た!」
「!!」
小鳥は瑚太郎の怒り具合に怯えていた。それを見て瑚太郎自身も冷静さを取り戻す。
「もういい。今からお前ら2人を家に戻す。篝に関しては俺が新しく手配したマンションに行ってもらう。いいな?・・・・篝?」
「・・・・・」
篝の様子がおかしかった。
「(弱っているのか・・・?)」
「篝の様子が変なの・・・多分パワースポットの問題だと思う。」
「そうか・・・時間も無いってことだな。」
パワースポット。その名の通り篝の力の源である。森にたまに出てくる力の源泉。ガイアの魔物もそこから力を通じているというのを聞いたことがあった。つまり、
「相当な魔力を集中してきているということか・・・。行くぞ小鳥、まだガイアの少数しか来ていない。逃げるなら今だ。」
「いやだ!そんなのいやだ!」
「まだそんなこと言ってるのか!」
「どうして・・・どうして邪魔ばっかりするの?あんたなんか・・・あんたなんか死んでしまえばいいんだ!」
「・・・ッ!」
「え・・・」
瑚太郎は小鳥の背後に一瞬で周り、彼女の首とコツンと叩き、気絶させた。瑚太郎は篝と小鳥を急いで家へと送り返した。小鳥は千春宅へ。千春は小鳥が抜け出したことに驚きを隠せなかったようだ。一瞬の隙だったらしい。彼女自身も反省し、今度から千春宅から極力出さないと瑚太郎に言った。篝は瑚太郎が手配したマンションへと移った。瑚太郎はまたすぐ森へと引き返す。瑚太朗自身感じていた。
「(わかってる・・・恐らく今回は・・・)」
予想は、的中する。
森に入った瞬間血の匂いが広がっていることがわかった。
「(こりゃでかいな・・・)」
規模の大きさを伺うことが出来た。森を進むとガーディアンの本部で会ったことのある人間が瀕死の状態で倒れていた。その周辺には同じくガーディアン本部で見たことのある顔がちらほら。どれも酷い有様となっていた。
「田所か?」
「よぉ・・・天王寺か・・・すまん・・・やられたよ・・・」
「無理して喋るな。この先か・・・?」
「あぁ・・・気をつけろ・・・奴らの攻撃は・・・おかしい・・・」
「(ん?)」
魔物の攻撃ではないということだろうか。
「そうか・・・情報ありがとう。」
瑚太郎はその男の胸をブレードで貫いた。男は一瞬驚いたような顔をしたが、その後納得の表情を浮かべた。その先へ、瑚太郎は急いで向かった。魔物の攻撃ではない。その言葉だけで自分がこれから何と戦うかは想像がついた。奥で見た光景。洋風の服を着た女が、いつもガーディアン本部で見ていた、いや、一番多く見た瑚太郎にとって大事な人の腹部を貫いていた。
プツン
何かが途切れた音がした。
無言で瑚太郎は女に切りかかる。それに気付き女は江坂を捨て後ろへ下がった。
「ほう・・・まさか貴様がね・・・」
「お前は・・・お前はあああああああああああああああああああ」
問答無用で切りかかる。
「ウヒャヒャヒャヒャヒャ!そんなんじゃ当たらんぞぉ?」
それを言われて瑚太郎は我に変える。
「我に戻ったか・・・ククク・・・お前がそっちの人間だとはなぁ・・・実に面白い!」
「そんなことはどうでもいい。お前が、キャスターだな?」
「ほう?どうしてそれを?」
「耳に入った。それだけだ。」
「では、それを聞いてどうする?」
「どうもしないさ。俺は俺の目的を遂行する。だから、お前・・・ガイアもガーディアンも潰さないといけない。」
「!? ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ1これはこれは!つまり貴様は2重のスパイで動いていたということか!これは気付かんわ。でも、今妾に見られたぞ?どうする?」
「どうもしないさ。そろそろバレるって思ってたからな。でも、お前は今ここで倒す必要があるみたいだ。」
「ほう。」
「(とはいっても・・・どうする・・・)」
瑚太郎は様々は選択肢を浮かべる。そしていつもの現象が起こる。火の導きだ。瑚太郎はその導きに従って動いた。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」
動いた瑚太郎を見てキャスターは笑う。だが、その動きは予想を超えていた。キャスター自身が瑚太郎を舐めていた。
「!?」
一瞬にして目の前から瑚太郎が消える。殺気が後ろから来る。瑚太郎はキャスターの体を切り裂くが何羽もの蝶に形を変え、また個体に戻った。
「ほう・・・なかなかやるではないか。少なくとも、そこに転がってる雑巾よりはできそうだなァ」
ほくそ笑む。その表情が瑚太郎の怒りを更に出させる。瑚太郎は火の導きにずっと従った。だが何も出来ない。切っても切っても分散される。これが、正しいのだろうか。なぜ、一撃を入れることが出来ないのか。するとキャスターが
「もう時間だ。妾はこれで帰るぞ?何心配ない。お前の相手は・・・こいつだ。」
キャスターが指を鳴らす。すると出てきたのは、キャスターのように派手な格好をした女だった。
「(冗談だろ・・・?)」
「さらばだ小僧。妾はこれで帰るぞ?お前との戦い楽しませてもらったわ」
「待て・・・!?」
女はキャスターのほうを見た瑚太郎に向かって一直線に蹴りを入れた。
「ガッ・・・・」
瑚太郎は吹っ飛んだ。
「にゃろう・・・(油断してた・・・)」
「弱い弱い弱い!ベアトリーチェ様はこんな弱い虫を相手に私を選んだというの!? もっと信用されるためには完璧に殺さないとダメね!安心して!痛みは無いからすぐ殺してあげる!」
女は自らの体を杭に変え、瑚太郎に向かった。
「死ねええええええええええええええええええええええええええ!」
瑚太郎はその杭を、一撃で切り落とした。
「え・・・・・・・・?」
女は元の体に戻る。上半身と下半身が2つにわかれていた。
「遅いんだよ。」
「う・・・そ・・・・」
女はそこから消滅した。
その気配の消失にキャスターが気付いた。
「ぬ?」
キャスターが7姉妹の一人を召還してわずか数分の出来ごと。キャスター自身はもう森からは抜けていた。
「(ほう・・・7姉妹の一人をわずか数分で殺すとは・・・なかなかやるということか・・・面白い)」
7姉妹の一人を倒した瑚太郎はすぐさま倒れている江坂の元へと向かった。
「江坂さん・・・」
「天王寺か・・・ふ・・・やっぱりそういうことだったんだな・・・」
「・・・・・・」
「わかってる・・・ガーディアンを裏切ると言うことは・・・あっち側についた、ということなんだな?」
「いや・・・俺はガイアにもガーディアンにも属しません。両方のやり方に納得がいかないだけです。でも、俺は鍵を守るつもりでいます。」
「ふふふ・・・そうか・・・・どうせなら・・・お前に負けて死にたかったよ・・・・」
「!? そんなこと言わないでください!あなたはここで死ぬような人じゃない!」
「でも・・・もしあの女がいなかったら、お前はどうしていた・・・?結局は、そうなるはずだったのではないか・・・・」
「・・・・・・・・」
何も言えなかった。結局はそうなるはずだった。心のどこかで否定していた部分があるのかもしれない。
「お前の動き・・・私には見えなかったよ・・・成長したな・・・天王寺・・・」
「あなたのおかげです・・・江坂さん・・・」
「そうか・・・それは嬉しいな・・・。・・・天王寺・・・・これからは・・・敵が増えるぞ・・・・それでもお前は自分の信念を貫くことが出来るか?」
「はい・・・俺は鍵を守ります。」
「そうか・・・がん・・・ば・・・れ・・・よ・・・・・・・・・・・・・」
江坂の口はそれから動かなくなった。
「・・・・・・江坂さん。ありがとうございました・・・・・」
瑚太郎は近くに咲いてあった一輪の花を江坂の胸へと置いた。そしてそのまま、森を抜けていった。その一部始終を見ていた神戸小鳥は瑚太郎の戦いを直で見て腰が抜けている状態であった。小鳥が千春の元から抜け出せた理由。魔物の使役である。千春に睡眠をかけた。ただそれだけ。下手をしたらセイバーに殺されかねない行動であるが、彼女は千春がマスターであることなど知らない。陰から出ようとした時、また足音が近づいてくるのがわかった。一人の青年である。それこそ、森での騒ぎを聞きつけたアーチャーである。何やら携帯電話で電話をしているが繋がらないらしい。そのまま森を去って行った。小鳥はその時間から夜中まで森で過ごし、魔物の気配が消えた後に千春の元へと帰った。当然、怒られた。
2日後、アーチャー達はギルド内で集合していた。
「いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!出来たああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
一同が沸く。マーテルの本部の隠し通路の行き先をギルドへ結ぶ作業が完了したのである。当初は隠し通路からの通路になっていたが、予定を変更して学校側からもギルドに行けるように設計したのである。同時にギルドの強化も完成した。一見変わってないようにも見えるが罠の増加と武器の増加である。一同はそこからパーティを行った。明日から収穫祭まで2日間は行動しっぱなしである。今楽しんでおこうという考えからだ。戦線の時ではありえなかったくらいの騒ぎようである。その騒ぎは夜明けまで続いた。
「・・・・・・・・・・・」
アーチャーは宴の後の寂しさを感じながら休んでいた。同時にとてつもない疲労も感じる。ギルドに通路を繋げたということはずっとギルドを開いていないといけないと言うことだ。つまり、宝具の永続使用。アーチャーだからこそ出来る行動である。
「疲れたの・・・?」
奏が横から覗いてきた。
「あぁ・・・流石にここまで長い時間ギルドを開いていると流石に・・・な。」
「珍しいわね、あなたがそういう発言するの。」
「そうか?人並みにやってるつもりなんだが・・・」
「でも人じゃない。そうでしょ?」
「・・・・・・・」
「みんな楽しんでた・・・」
「奏は・・・楽しかったか?今日のパーティ。」
「ええ。楽しかったわ。でも、どこかみんな無理やりって感じがしていたわ。」
「それは俺も感じていたよ。でもそれはみんな感じていたと思う。今こうおやってバカできる時間が少なくなっているって自覚しているんだ。それにギルドを繋げたってことは・・・」
「わかってるわ。」
「そうか・・・。多分、明日明後日でこの戦いは終わりを迎えると思う。収穫祭どころじゃなくなるだろうな。街の人には悪いけど。でも、そのためのギルドだ。最後まで生き残らないといけない。そのためにはキャスターを先に倒す必要があるんだ。マスターまで動けないようにしないと、救済が起こってしまう。キャスターがいるということはガーディアン側には勝ち目はない。そこは天王寺に任せるけどな。俺達は俺達のやることをしよう。」
「ええ。」
「もう休もう。明日から忙しい。」
その頃、瑚太郎はマンションの一室にいた。
「篝、見てみろ。いい眺めだろ?」
「綺麗な・・・眺めです・・・。」
「俺はこの眺めをずっと見ていたいんだ。俺はこの眺めが大好きでね、篝にも見せたかった。どうだ、もっとこの眺めを見たいとは思わないか?」
「・・・・・」
「(やはり・・・ここに置いておくのはダメなのか)そうだ。明日もう一回森に行こう。そしたら篝もちょっとは元気になるだろう?」
「そんな暇はあるんですか・・・?」
「ないなぁ。だからもっと暇が欲しいもんだよ。月とかそういうところに行けたらそりゃぁ暇で楽しいことがたくさん出来るだろうな。」
「月に行けるのですか・・・?」
「無理だな。千年はかかりそうだ。」
「星が潰れてしまいます・・・」
「そうだ。だから俺は救済を止めるんだ。それをお前に良い記憶として見せてやる。」
「急いでください・・・篝は・・・もう・・・」
「大丈夫だ。絶対に大丈夫だ。」
瑚太郎は深夜に森へと篝を置いた。久々に携帯電話を覗くと、アーチャーからの着信があった。生憎、電話には出ることが出来ない。いろんな可能性があるからだ。その可能性と言うのも単純な話である。盗聴。これを回避するのは基本中の基本だ。だからこそ、電話には出れない。
収穫祭が2日後に迫っていた。街は準備に余念がない。収穫祭というものが始まるのは2日後なのだが、明日、つまり収穫祭の前日は普通に夜店が出る。前夜祭というやつだ。アーチャーと瑚太郎はそこでガイアの連中が動いてくると思っていた。それはセイバー・ライダー陣営には伝えてある。あの2組がどう動くかはアーチャーと瑚太郎にはあまり関係が無い。アーチャーはキャスターを、瑚太郎はガイアを潰すことしか頭に無かった。翌日、前夜祭の日。アーチャーはギルドメンバーを街に繰り出させた。普通の一般人として行動させるためである。瑚太郎も昼から街に繰り出した。だが、瑚太郎は異変を感じる。
「(変だ・・・・)」
ガイア、マーテル会の人間と思える人たちが街から消えていた。まさかと、ある考えが浮かんだがあり得ない。絶対にあってはならない。それをしてしまったらガイアはもう、後に戻ることは出来ない。
「(だが、今のガイアならやりかねないかもな・・・マーテル会員の存在の抹消なんてことを・・・)」
存在の抹消。殺すとかそのような意味ではない。「救い」だ。これはマーテルではなくガイアの考えである。ガイアの連中は地下にシェルターを作り、それを第2の人類の住処にしようとした。それは救済の後の話である。救済が発動する前に市民を地下に避難させる。だが、避難した人間達はもう二度と地上に戻ることは出来ない。だが、地上にいたらいたで死ぬ確率が高いのは確かだ。そんなことを考えながら森に近づいた瞬間、
「(囲まれてる・・・)」
集団に囲まれていた。
「よぉ・・・天王寺・・・」
「今宮か・・・」
「お前、自分が何をしているのかわかってるのかぁ?よくも裏切ってくれたなぁ?」
「・・・・・・・」
「お前は、俺が殺す。」
「待て。」
「あ?この期に及んで命乞いか?そりゃそうだ。お前は訓練の時点でドベだったからなぁ!そりゃこの人数+俺相手に勝てるわけもないか!じゃぁなぜお前は江坂さんを殺せたんだ?あぁ?」
「そうか、俺が江坂さんを殺したことになってるのか・・・」
「あ?」
「そうだ。江坂さんを殺したのは俺だ。でもそうするしかなかったんだ。お前らを巻き込むわけにはいかない。あと、お前らはガイアには勝てない。そして、俺にもな・・・(脚力を・・・上書きさせる・・・!)」
「貴様・・・!」
今宮がナイフを能力を使って投げる。避けるがその瞬間を狙われて今宮に殴られた。吹っ飛んだ後には周辺の人間に銃を構えられていた。
「お前は・・・友達だと思ってたのに・・・なんで・・・なんで!」
「すまない・・・でも、俺は今でも仲間だと思ってるよ。今宮。」
瑚太郎は一瞬でブレードを使い周りの人間の銃を破壊した。そして上書きした脚力を使いジャンプ。屋根へをとびそのまま森に向かった。その動きを追うことができたのは今宮のみである。今宮は瑚太郎の行動ではなく、動きに驚きを隠せなかった。
「嘘だろ・・・」
今まで下にしかみていたかった瑚太郎が自分をいつの間にか超えていたのであった。そしてそのまま部下に指示を出す。今宮は江坂の後任を任されガーディアンの指揮を執っていた。
「天王寺瑚太郎をガイアの人間とする。見つけ次第殺害を許可。なお、標的は森へ向かった模様。鍵の捜索と思われる。至急、ヘリを森に出すんだ。鍵をあいつより先に捕獲する。」
森に着いた瑚太郎は篝を探す。篝は森を結構な速さで移動していた。森には切り傷が大量に生じていた。これが篝の辿ってきた道だろう。ちょくちょくある死体はガーディアンの人間だと理解が出来る。そしてその切り傷に合わせて上空にはヘリコプターが飛んでいた。
「早いよ今宮・・・」
ちょっと感嘆。瑚太郎はひたすら篝を追った。そしてその途中一つの死体に出会った。トランシーバーが動いている。
「おい!応答しろ!おい!」
声の主は今宮だった。恐らく今宮が派遣した部隊の人間なのだろう。そのトランシーバーを手に取る。次の通信が入っていた。ガーディアンのトランシーバーは全てのトランシーバーとつばがっている。
「こちら、上空のヘリコプター。天王寺瑚太郎は発見できませんが鍵を発見。現在無作為に行動中。すれ違う部隊がみんなやられています。」
「(探知型だと!?)」
すっかりその存在を忘れていた。
「(ということはあのヘリには探知型が乗ってるのか・・・悪いな。こうしないといけないんだ。)」
瑚太郎は自らのブレードを槍状にする。イメージしながら、腕を上書きして行く。傭兵に出されていた時の、仲間の、瑚太郎を救うために自ら犠牲になった最高の仲間の特技をイメージする。その技には歴史がある。瑚太郎のイメージは歴史を辿った。投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる。イメージが膨らむ。そして辿りつく。最高の投擲のイメージ。
「いっけええええええええええええええええええええええええええ」
普通では考えられない速度で放たれた槍は、雲を、空を貫いていく。探知型は異変に気付き、その原因を見る。自分に向かって高速で迫る槍と、その槍を放った男の存在。通信をかけようとするが遅かった。槍は男の額を貫通し、ヘリをも貫いていった。ヘリはそのまま上空で爆発した。
「へへ・・・・」
同時にくる痛み。腕はもう人間のような腕では無くなっていた。
「急ごう・・・」
この位置もすぐにばれる。今ので更に部隊が侵入するはずだ。急いで走り出す。ようやく、篝の背中を見つけた。
「篝!!!!」
「・・・・・」
返事は無い。強引に捕まえるが敵意は出されなかった。リボンの攻撃は無い。
「篝、ルートを外れるぞ。ここは危険すぎる。」
そう言って篝を抱きかかえた。そのまま小川へと入る。そのまま流れに沿って行くが、瑚太郎から見ても篝が弱っているというのは見て取れる。前よりもそれはひどくなっていた。実際に篝は森を這うように移動していたのである。ゆっくりと・・・ゆっくりと・・・。
「あなたは・・・どうするのですか・・・?」
答えてくれた。
「よし、そのまま意識を保つんだ。頑張れ。もう少しでお前が見たかったものを見せてやることが出来る。」
「そんな・・・時間は・・・・ありません・・・ヒトが・・・滅びてしまう・・・」
「そんなことは考えるな!楽しいことだけ考えろ!俺が・・・俺が見せてやるから!世界は変わるんだ!闘争の無い世界に変わるんだ!」
「・・・・・・」
返事が無くなる。だが篝はじっとこっちを見ている。まだ意識はある。その時に感じたもの。殺気
「(え・・・?)」
ずっと見られている感覚があった。それに街の方からは歌が聞こえていた。この歌が聞こえ出してから、篝は更に弱っている気がする。瑚太郎自身も嫌な気分になる。
「(なんだよ・・・)」
試しに魔物を放つが一瞬で消えた。
「(まずい・・・)」
その時篝が大声を出した。
「なっ・・・・・・」
篝は胸を押さえて苦しんだ。同時に指の間から瑞々しい緑の目が伸びてきていた。リボンは枯れ、樹木のような状態へと変化して行ったのである。
「ここまで・・・みたいですね・・・」
とっさに原因を探る。
「(この歌のせいってことか・・・止めようにもここを脱出しないといけないことには変わりは無いか・・・)」
少し先を見る。見たことのある男達がいた。
「(すまない。)」
瑚太郎は魔物を呼び寄せ男達の背後に配置し、一気に突進させた。男たちは簡単に貫かれ、包囲網に出来た穴を瑚太郎はすり抜けていった。
「篝、少し時間をくれ。」
瑚太郎は安全な場所に篝を横にして先に進んだ。街は、収穫祭どころではなくなっていた。巨大飛行生物が空を飛び、建物にはツタが巻かれていた。人々は避難をするが、間に合っている状況ではなかった。崩壊が、始まっていた。
Fate/key's memory 後編 上
主に瑚太郎の話でしたね。そうだよね(不安)
次からは誰が来るのかはある程度予想は出来ると思います。まぁ全部読んでいただいた場合ですが・・・
でも長いとあれだね。矛盾に気づいちゃうね。仕方ないね。素人だからね。
これから夏休みで実家とかに帰省+ゼミのやること多いで更に更新が無くなるかと・・・まぁ頑張ります。