額縁の中に
静かに開く事件のトビラ
額縁がひとつ。
窓からはいる静かな光に照らされて。
「長澤 昨春さん」
「ハイ。」
マイクから聞こえる聞き慣れた声。
胸を張って舞台に上がる。
「最優秀賞。長澤昨春 あなたは第21回全国青年芸術会において、優秀な成績を修めましたことをここに賞します。」
きらきら光るその紙にそっと、手を伸ばす。
『また長澤さんですね。』
『三年間ずっとじゃなくて?』
周囲に飛び交う声に胸が高鳴る。
「さーくー!!すごいね!今年も最優秀賞もらってさ。」
「別に。普通だよ。」
親友に抱きつかれて少し照れながら言う。
「もーまた照ちゃって、カワイーな!」
「なっ!?照れてないし!それに梅だってまた作品出版決まったんだろ?」
「ウン!そーなの。」
梅は、小さい頃から、物語を作るのが好きで、高校にあがってからいろんな本を出している。
そのたびに、昨春に一番に読ませてくれる。
いつも面白くて、感動して、めったに泣かない昨春も、梅の作品を見たら涙が止まらない。
「ねえ、昨春私、あの…ね」
「いいよ。来るか?」
「ウン!ありがとう!」
梅は小学3年生の時に、母親を亡くしている。
今は家に父親と、妹がいて一緒に暮らしている。
けれど、母親がいなくなった家はあまりに広すぎて、居場所をなくしてしまった。
それからたまに、昨春の家に泊まることがあって、一人暮らしの昨春とよく遊んでいる。
「つらく…ないか?」
よくかける言葉。でも梅の応える言葉はいつも一緒。
「大丈夫だよ。」
「そうか…。ならいいけど。」
たまに梅はつらそうな顔をする。何か重いものを背負って。
天才少年 界樹
「オハヨー!」
「おはようさん。」
よく晴れた日だ。こんな日には、いいことありそう。
そんなことを考えながら学校に向かう。今日から新学期が始まる。
「一緒のクラスになるといいね!」
「あぁ。そうだな。」
「…。今日は素直だねー!」
大きな目をもっと開いて昨春をみる。
「別に、思ったことを言っただけだろ!」
「あー照れてるぅ。」
「照れてない!」
いつもの会話。
学校についたらクラス表が貼られていた。
「昨春。また賞もらったんだって!」
「うん。」
愛那が言った。
「愛那ちゃん。なんかスッゴく久しぶりな感じする。」
「あぁ。だって愛那、1年Americaに行ってましたから。」
無駄に発音がいい。さすが。
「そっか。楽しかった?」
「ええ。お父様がいろんな所につれてってくださったのよ。」
「そっか。愛那ちゃんはお父さん大好きなんだね。」
「愛那は昔からそうだよな。」
「当たり前ですわ。」
お金持ちのお嬢様の愛那は、去年からアメリカに行って一年過ごした。
「んで、クラスどうだった?」
「それは自分でみたほうが楽しくってよ。」
「ん。分かった。」
梅の手を引っ張ってクラス表に向かう。
「んーと、ア!私3組だよ!」
「んー?ウチどこ?」
「ふふん。やった!昨春も私と一緒だね!3組だよ!」
「マジか!」
クラス表の端っこに見慣れない漢字をみた。
「ん?あれ、誰だ?」
「えっと…、渡部界樹?転入生かな?」
「あった…3組…か…。」
聞き慣れない声がした。
「あの子かな。」
「えー!誰々?!」
「いっちゃった。」
「えー見たかった!」
まあまたクラスで会えるから、そうやって梅を落ち着かせてクラスへ向かった。
やっぱり、新学期の教室は騒がしい。
「昨春!最優秀おめでとう!」
「あ、ありがと。」
クラス入っていきなりそれか。
「昨春、人気だね!」
「そんなことないって。」
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなる。
「もうそんな時間か。」
「ホームルーム始めんぞー。」
教室にスーツ姿のだらしない先生が入ってきた。
「えー…。今学期から新しくこの3年生として一緒に過ごす仲間が増えた。界樹、でてこい。」
「ハイ。渡部…界樹です。よろ…し…く。」
「なんか、すっごいまったりしてるね。」
隣の席の梅が話しかける。
「ああ。だな。」
「んじゃ、始めんぞー。」
そして最初の授業が始まった。
放課になると、界樹の周りには人々が群がっていた。
「転入生ってのも大変だな。」
「ソだね。」
心の中でため息をつきながら、教室をでる。
「ねえ昨春。次に出すやつ、できたんだ。読んでほしいの。」
「オオ!早く読みたい!ウチんち来るよね!」
高ぶる気持ちを抑えられない。
「うん。帰ったらすぐいくから。」
「オオ!待ってるぞ!」
「んで、私も、昨春の次のコンクールの作品、みさせて、ほしいの。」
「うん。分かった。いいよ。」
やっぱり、いつもの会話。すごく楽しい。
その時。
「あの…。」
後ろから声がした。
「ん?」
振り返るとそこには転入生、渡部界樹がいた。
「探偵団、作らんが?」
なまってる。
「探偵団!?なぜに!?」
「渡部くん、何かあったの?」
「…。いんや。何にもないんやけど。なぁ。君ら、絵の天才と、」
「絵の天才?」
「物語の天才やろ。」
「物語の天才?」
「それ、ウチと梅のこと言っとんの!?」
「うん。」
「なんでわたしのことしってるの?」
そうだ梅は、周りに作家ということは言ってない。
「会話。聞いてたん。」
「あぁ。なるほど。」
「昨春!なに納得してるの!?」
「ん。ごめ。」
「ねえ。探偵団、ドオ?」
「…。なんでうちらなん?」
「昨春…。なまりうつってる。」
「君らがいいん。話しやすいん。やから、お願いできんが?」
「ドスル?」
「昨春…。頼まれよ?いいじゃん。楽しそう。」
「んー。梅がいいならいいけどさ。」
「決まりでいいな?」
「しょうがないからね。」
「ありがと。昨春!」
「別に。普通だし。」
「また照れてるぅ。」
「照れとらん!」
「…。かわいいなぉ。二人とも。」
「んな!」
あまりにも、当たり前のように言う。
「よかったね。昨春!」
「ウチか!」
「そうやで。」
顔が熱い。
「んじゃ。明日、昨春の家いっていいか?」
「ええ!明日!家!?」
「いいじゃん。昨春の家、楽しいよ!」
「決まりじゃな!ちなみに、オレ、前の学校のアダナ、天才界樹だからなぁ!!覚えとくといい!」
「勝手に決めんな!もう!!天才だって知らない!」
こうして、昨春、梅、界樹が結成した、探偵団ができた。
探偵団 瞬解
ピンポーン
玄関のチャイムがなる。
「ホントに来た。」
「そりゃ来るよ。来るって言ってたもん。」
「そうだけど。」
ピンポーン
「五月蝿いな。」
ピンポーンピンポーン
「だー!もうわかったから!」
ガチャ
ドアを開ける。
「やぁ。こんにちは。」
「「こんにちは。」じゃないよ!」
「さぁ。あがってー。」
「梅!なに自分の家にしてんの!」
「いや‥なんとなく。」
「もうわかったから!いいよ!あがって!」
「昨春ちゃんカワイー(笑)」
「そう何回も簡単にカワイーなんて言うなー!!」
「ごめんごめん。」
「と、とりあえず、部屋ではなそ?」
「あぁ。」
「それがいいね。」
リビングに向かう。
「それにしても、なんで一人暮らししようとしたの?」
「エー?なんでわかったの!?」
「そんなん、昔から…。いや。なんとなく。」
「ウチは、両親、海外行ったきりなんだ。」
「さく…。」
「ふぅん。」
「ね、この話、やめよ?」
「そうだね。ごめん。」
「お茶、煎れてくる。」
「うん。」
昨春は台所に向かった。
「昨春はね、中学あがった頃、両親が、一週間だけって約束で、外国に旅行にいったんだよ。昨春をおいてね。んで、空港にいく途中、交通事故で亡くなったの。」
「そうなんだ。大変だな。…けど、どうしてウソついたん?」
「あれは…。ウソじゃないよ。昨春にとっては、ね。」
「…。どういうこと?」
「昨春は、すっごいお母さんとお父さんが大好きなんだよ。それで、旅行に行くってきまった時に、昨春だけいかなかったのは、私のせいなんだ。両親に、私のために、ここにいてって、言われたんだって。私、お母さん、いないから。それで、昨春はここに残って、両親の帰りを待ってるんだ。だから、両親の死を認められなくなって、認めたくなくて、まだ帰ってきてないだけと、心にしまったんだよ。」
「そんなことあったんだな。あのあと。」
「あのあと?」
「あぁ。オレが、じいちゃん家いく前、よく昨春と遊んだんだ。あいつ、覚えてないみたいだけど。名字も変わったし。親が離婚して。けど、帰ってきたんだ。昨春に会いに。約束したからな。別れぎわに告白したんだよ。返事、くれるって、言ってたからな。」
「そっか。」
(この気持ち、どうしよう。きっと、昨春は界樹くんが、好きで、二人は結ばれて、私が恋しても、かなうはず、ないよね。)
「入れてきたよぉ!!」
「ありがと。」
「ハイ、梅、いつものコップ。んでハイ。」
「すくなっ!」
明らかに、界樹のコップには一口もない量しか入ってなかった。
「…。はは」
梅は複雑な気持ちにおそわれた。
「んじゃ、探偵団瞬解!カンパーイ!」
「しゅんかい?」
「なに?それ」
「オレ達、天才が集まってる訳だから、瞬時に解決する。それで瞬解!」
「安直だけど、いいんじゃない?」
「ウン!いいね!瞬解!私好き!」
「オッシャー!決まりだな!」
「改めて、カンパーイ!」
「オオ!梅!のりいいな!」
「呼び捨て!」
「ちょっと、なに梅を自分のものにしてんの!」
「まあまあ、いいやないの」
「まぁ、呼び捨てくらい、許してあげる。」
『照れちゃって!』
「ハモるな!」
新団員 愛那
「今日、事務所に集合な。」
「ウチん家は事務所じゃない!」
「えー。いいじゃん。な、梅。」
「え!うん。さ、昨春の家、事務所でいいと思う。」
「梅まで!?界樹に毒されたか!?」
「ちげーよ。梅はノリがいいんだよ!」
「そうだよ!昨春!もうあなたの家は事務所です!」
「もう、わかったから。いいよいいよ。私の家は探偵団瞬解の事務所でございますぅ。」
『はい。決定。』
「ダ、カ、ラ。ハモるなー!!」
「昨春?何がハモるんです?」
「愛那?どうしたの?」
「いえ。そこの彼に呼ばれましたのよ。」
「界樹?」
「渡部さん、お二方といらっしゃる時は、よく口が動くのね。」
「…。あぁ。そうだね。二人とも、新団員の立木愛那さんだ。」
「新団員!?愛那が?」
「新団員…。どして?」
「新団員とは、あなたがたの探偵団というものかしら。」
「うん。そうだ。明日、この地図の場所まで来てくれ。そこで細かいこと説明するから。」
「愛那は、あなた達と違って、忙しいんですけど。」
「無理にとは言わない。来てくれたら助かる。」
「…。だから…」
「待ってるからな。」
「…。」
三人で帰り道を歩く。
「ねえ。」
「…。」
「ねえーなんで愛那を誘ったの?」
「そうだよ。界樹くん。」
「…。あいつ、音楽の天才だから。」
「音楽の天才!?」
「あぁ。」
「まぁ確かに愛那はピアノと歌はプロレベルだけど。」
「愛那ちゃんは、お父さんとずっと一緒だから…。お父さんがいいって言わないと何にもしないよ?」
「…。」
「まぁ。んで、ウチん家くる?」
『行く!』
白い歯を見せて二人は笑う。
「今日、来るかな…。」
あの日の24時間後、つまり次の日。
「来るよ。」
「でも、愛那ちゃん、スッゴく悩んだ顔してたよ?」
『そうか?「オレ」「ウチ」には何か決心した顔に見えた。』
「…」
「ちょっと!まねすんな!」
「界樹こそ!」
「二人は仲がいいね。」
「梅!なに言ってんの?」
「ハハ。」
「なんで笑うの~?」
ピンポーン
「ん?今、チャイムなった?」
ピンポーンピンポーン
「なったね…。」
「ちょっと!呼んどいてこの仕打ちですか!?」
「今でるから!」
ガチャ。扉を開ける。
そこには、愛那が立っていた。
「もう、どれだけ待たせば気が済むんですの?」
「愛那ちゃん、来てくれたんだね。」
「あんなに頼まれたら断れないでしょう?」
「お父さんはいいって言ったの?」
「そ、それはっ。い、言いましたわよ!ていうか、あなた達に関係ないでしょう!?」
「ごめん。」
「愛那、ありがと。」
「うん…。」
「んじゃ、新団員、愛那が入ったところで乾杯しましょ!」
「そうだね。」
新団員 華音
『また、あの子?』
『いい加減譲れよって感じだよな。』
新学期が始まってすぐ、実力テストがあった。
クラスの掲示板には、順位が張り出されていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
国語1位 相沢梅 2位 渡部界樹
数学1位 渡部界樹 2位 立木愛那
理科1位 一条華音 2位 岡崎花
社会科1位 立木愛那 2位 渡部界樹
英語1位 立木愛那 2位 坂本シェリル
美術1位 長澤昨春 2位 伊藤美嘉
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「もうびっくりだよー!なんで美術入ってんの!てね!」
「だね。けどさすが!昨春は美術大好きだね!」
「界樹もすごい!愛那もさすがだよ!梅は国語凄すぎ!圧倒的だね!」
「ありがと…。長澤さん…。」
(ホント学校ではしゃべんないね…。)
「うん…。」
「理科、一条華音さん…満点だね…。凄い。去年も一昨年だよ。」
「…。」
周りがじっと見つめる先には一条華音がいた。
『一条さん…スゴいね。』
『さすがだよ』
笑顔にかくれた憎しみ。
「…。」
「一条さん、気まずいだろうね…。結果がいいのに、胸を張れないの、かわいそう。」
「ハイ、その一条さんです。」
「界樹!?」
「ちょっと!お願いゴメンナサイ許して!」
「なにやってるの!離してあげて!?」
「だって逃げるもん。」
「にっ、逃げないから!許して!」
メガネ越しに涙が見える。
「ほら!」
パッ!
「ごめん…別にいじめないから。」
「…。」
「でも、なんでそこまでしてつれてきたの?」
「新団員。」
「また!?」
「新…団…員?」
「ほら、混乱してんじゃん。」
「一条さん、急にごめんね…うちのものが…。」
「梅!?いつ界樹が梅のものになったの?」
「ずっと。」
「梅!またノリよくなったな!」
「エヘヘー。」
「…あの…。」
「もう、お二方、一条さん困ってますわよ!」
「簡単に説明すると、探偵団瞬解に入ってほしいってことだ。」
「私なんかがいいの?」
「え!逆にいいんですの?」
「だって私友達いないもん。欲しい。入りたい!」
「ありがとう!」
「意外とあっさり決まったな。」
「うん。絵と物語と音楽英語社会と理科と数学。けっこう揃った!」
「インや。あと一人。」
「まだいるの!」
「ラストだ!」
初事件
「あと一人ってどんな人ー?」
「…。」
「決まってないの!?」
今日は愛那は都合があわなくて、四人で会議?している。
「ねぇ、渡部さんはここではよくしゃべるんですね。」
「あぁ。愛那にも言われた。」
「一条さん、こんなやつ、界樹って呼び捨てでいいんだよ!」
「え!ハイ!では私も華音でお願いします。」
「OK!華音!」
「ハイ!さ、昨春!」
「昨春ずるい!私も、梅って呼んで!」
「梅さん!」
「えー。」
「梅!」
「やったー!」
どうみてもこれは会議じゃない。団員全員が思った。
「なぁ、団長決めよーぜ!」
「えー。探偵の?」
「そうそう」
プルプル プルプル
家の電話がなる。
「とってくる。」
「ハーイ。誰だろ?」
「愛那さんじゃないですか?」
「そうだといいな。」
カチャ
「ハイ、長澤です。…ハイ。…え!どうしたの!?…うん…う…ん…。学校?…今からだね。…わかった。探偵団瞬解に任せて!」
ブツッ
「みんな!初事件だよ!」
「誰から!なにがあったの?」
「愛那からか?」
「事件ですね…。なんかワクワクします。」
一斉に皆の興味が湧く。
「愛那から!朝霧陸翔さんの事件!学校!皆、頑張って!いや…頑張ろう!」
『あぁ!』
探偵団瞬解!初事件!
事件1 進藤 陸翔 失踪事件
プルプル
「愛那!ついたよ!今どうなってる!?」
「昨春、すぐ近くですわ。」
「いましたよ。」
そう言って華音は指差した。
「昨春、教室で詳しいことを話しますわ。」
「わかった。」
五人は長い廊下を歩く。
ガラガラ
いつもより重い扉を開ける。
「ここだね。」
そこには、私達と同じ、3年生の少年がいた。
「誰!?」
少年が怯えた声で叫ぶ。
「君が、進藤陸翔さんですね。」
「そうだけど。誰?」
「私たちは、探偵団瞬解です。あなたの事件、解決します。」
「天才少年、渡部界樹!」
「物語の天才、相沢梅!」
「音楽の天才、立木愛那!」
「理科の天才、岡崎華音!」
「そして、探偵団団長、長澤昨春!」
『私達に、解けない事件はありません!』
「プロアーティストに二言はない!何でも瞬時に解決します!」
(このキメゼリフいるだろうか…。)
「探偵団瞬解って、俺の…解決してくれるってコト?」
陸翔はキツい眼差しで、そのうえ、頼るような眼差しで、五人をみてる。
「当たり前だ!んで、お前の事件は何だ。」
「…。俺の、妹が、いなくなったんだ。」
「妹さん、いなくなったって、いつからですか?それに、出かけてるだけかもしれませんよ?」
華音が冷静に聞き返す。
「いや…。舞夜に連絡がつかなくて。家の周りも探した。でも…いなかった。」
その場の全員が黙り込む。
その空気を切るように、界樹が口を開いた。
「任せろ。俺達がその事件、解いてやる。」
「そ、そうよっ!愛那達にかかればこんな事件、楽勝よ!」
「ホントか?」
「嘘なんてつく必要無いだろ。」
界樹の目は、どこか遠い、他の人には到底届かない所を見つめていた。そして、自信に溢れていた。
「…。わかった。任せる。妹を…頼むぞ。」
『任せて!』
手掛かり1
「失踪事件ねぇ…。」
部屋に沈黙が流れ込む。
「二日、二日で解決する。」
「ハァ!?」
突然界樹が宣言した二日で解決するという言葉に昨春が反応する。
「二日って、何の手掛かりもないのになに言ってんの?」
「これから探すんだよ。」
二人の会話に団員が口を紡ぐ。
「まぁ、瞬間に解決って言ってる位ですから、急がないといけないことはたしかですわ。」
「そうですね。解決は早い方がいいと思います。」
愛那と華音が言う。
「そうだね。頑張ろう!探偵団何だから!」
「ウン!」
団員全員の意見が一致して、陸翔の事件に取りかかる。
「すみません。女の子、みてませんか?」
道を通る人に声をかける。
「女の子っていわれても、そこら中にいるじゃない。」
当たり前の応えが返ってきた。
「そうですよね。すみませんでした。」
「はぁ、こんなんじゃ見つけれないわよ。」
いかにも機嫌が悪い愛那がため息をつく。
「んー。陸翔の妹さんって、何でいなくなったんだろう。」
「昨春、何か手掛かりがないと、難しいことだよね。」
「まぁね、難しいでしょうね。そりゃそうだよ。」
このまま道行く人に聞いたって答えが見つからないことはとっくに気づいている。
「明日、色々調べてきて、意見を交換しましょう!」
空気に耐えられなくなった華音が口を開く。
「そうだね、そうしよっか。」
「団長がそういうなら仕方ないな。じゃあ、明日それぞれ調べてくるように、よろしくな。」
「ハァイ。」
陸翔の簡潔な意見でこの場がおさまった。
額縁の中に