私は魚
「私は魚」
「私は魚だ」
そう人間の言葉を話す魚が漁師さんに釣り上げられたのは、今から二日前のことでした。
「私は魚だ。魚なんだから、人間の言葉を解するからと言って、他の魚と違う扱いをしないでくれ。私はこれからセリにかけられて値段がつけられた後、きっとどこかの高級寿司店に運ばれていくんだ。そこできっと、高校2年生17歳のセーラー服姿の美少女の口の中へと運ばれていく。」
気味の悪くなった漁師さんは、船の上から魚を海に投げ込もうとしましたが、お前を呪い殺すだの、お前の娘を苦界に落とすだの言われて、仕方なくその魚をセリまで運んでいくことになりました。
「私は魚だ。魚なんだから、人間の言葉を解するからと言って、他の魚と違う扱いをしないでくれ。私はこれからセリにかけられて値段がつけられた後、きっとどこかの高級寿司店に運ばれていくんだ。そこできっと、高校2年生17歳のセーラー服姿の、美少女の口の中へと運ばれていく。」
気味の悪い魚に値段をつける人は一切いませんでしたが、そういった魚は格安ファミリーレストランの工場に運ばれることになってたので、魚はトラックで運ばれていきました。
「私は魚だ。魚なんだから、人間の言葉を解するからと言って、他の魚と違う扱いをしないでくれ。私はこれからこの工場で下処理をされた後、きっとどこかのファミリーレストランで焼き魚になって、高校2年生17歳のセーラー服姿の、美少女の口の中へと運ばれていく。」
魚は工場でも相変わらずの口ぶりでしたが、パートのおばちゃんはそんなことは無視して、魚の腹に包丁を入れます。
「う、ぐっ、あっ!あっ!」
内臓が全て取り除かれて、魚はお頭付きの切り身になりました。
「私は魚だ。魚なんだから、人間の言葉を解するからと言って、他の魚と違う扱いをしないでくれ。私は昨日まで工場で下処理をされていた。このファミリーレストランで焼き魚になって、高校2年生17歳のセーラー服姿の、美少女の口の中へと運ばれていく。」
バイトの高2男子ははうわっ、気持ちわりぃと思いましたが、とりあえず運ばれてきた魚は、全て使い切らなければならないので、巨大なベルトコンベア式の高温オーブンに魚を通します。
「熱いいいいいいい!!!!熱いよおおおおおおお!!!!!誰か!誰か助けて!!嫌あああああ!!!!焼き魚になんてなりたくないいいいいいいい!!!!!!!」
生命力の桁が外れていた魚も、苦しみながら、とうとうそこで息絶えました。
「お、なんだよ格安だから大したことないと思ってたけど、この焼き魚結構うまいじゃん。」
何も知らないお客さんは、もぐもぐと美味しそうに運ばれてきた魚を食べました。
ちなみにこのお客さん。ぱっとみ外国人に見えるほど顔が濃くて、ショッキングピンクのTシャツにこだわりのスニーカーを履いた30代の男でした。
さて、みなさん。お客さんは魚が気持ち悪い生き物であることを知らずにご飯を食べて、お腹を満たしましたけど、それで一体どんな不都合があったと言うのでしょうか。
あのぱっとみ外国人に見えるほど顔が濃くて、ショッキングピンクのTシャツにこだわりのスニーカーを履いた30代の男をみならって、皆さんも図太くあれば、何も問題はないじゃありませんか。
ましてや、苦しんだのは、せいぜい魚ぐらいなものなんですし。
私は魚