Colony / コロニー
銃声
倒れる男
街角
新聞で顔を隠して覗き見る女
ポンヌフの橋
運命を知りぬいた君だった
コロニーで起こるいつもの衝突と破局の物語。
僕は話しすぎて
死にたくなる
これは感染した愛ではない
たぶん寂しいだけ
たぶんこれはコロニーでの
はかない悲劇の始まり。
銃を取ってくれ
君を背後から撃つ
君は僕の裏切りを許すかもしれない
なぜなら君ほど愛の短絡を計算した人はいなかったもの。
僕は感慨よりもむしろ思想を選ぶ
硬直よりもむしろ先鋭を選ぶ
微笑よりもむしろ恍惚の狼煙をコロニーで選ぶ。
僕は
君の味を
確かめる
君は
僕の中で
更新される
それはきっと冬の灯台の下。
冬の道に夕べの湖水を拾ったので持ち帰る
火にくべて沸点に達したら
そこで僕は宿った君の生の軌跡を知る。
その軌跡が、綺麗な朱色であればいい
僕の望みはコロニーで君の言葉に投影される。
砂漠のベータ崩壊は生まれた
人々はなす術を知らなかった
君以外は
君だけは初めと終わりの原則の鼓動に静寂を注いだ。
街は埃だらけ
僕はただすべてのスペルマに仕掛けられたダイナマイトで
君の憐れみに垂れる
明日、蛇が創生を君に刻む
君こそはコロニーで膨張する欲望の刻印。
物語が息を引き取った舗道の上で
抱き合って手を結んで
儚く
灰色の街角
散ってゆくのだろう。
メトロの出口
拾った手紙に黄昏時のワイン
そっと手でなぞる
詩心を知る
君はもうコロニーに詩を届けてくれたと気づく。
月光の下
懐かしい色を採取した
部屋の小瓶に入れる
今朝はいつも通りの光が尊く見える
それは小瓶が放ったチェレンコフ光の幻惑。
慰撫のなかの眠りは薄らぎの光の中の孤高だった
君は投げた
暗黙に反芻する
確かにそれはコロニーでの過去を映す薄らぎの証だった。
ボードレールの一行に僕の血脈があった
昼の重力は夜の魂の灯
そこで君と集うチーズの欠片
確かに愛し合った日の木漏れ日。
ドレスよりも夜の語り部がいい
香水よりも甘い色の犬になりたい
唇はやめとく
頬にコロニーの呪文を残していくよ。
ヘブライ語で遺書を残す
ワインのボトルに詰めて流す
いろんな国を旅する
君だけが拾う
君はそこに名前を刻む
誰の名前だろう。
そのDNAは
何億世代を辿っても追いつかない
深い宇宙の孤独を背負ってきた
熱帯びた君の記憶からの
コロニーへの便りだった。
ミセス・ゴダイヴァは少年の僕のプライドを燃やして
午睡の上に君臨する
白色と白熱を帯びた境界で
彼女は僕に命じる。
「生きなさい」
告解は散文の懺悔に似る
暁は木漏れ日の残骸
骨肉と相食む実存の激雨
暫くコロニーを彷徨い夕べの証を拾う。
泣きたいぐらいに完璧な気持ちが
まず君へ
それから僕へ
降下して炸裂する
惑星上の時間だ。
見ることと触れること
遮ることしか知らない
執行猶予の間
このコロニーの先端で生きるだけ。
雨が降ってきた
日差しを求めて
一瞬だけ君の影を感じる
あの日
ベンチの隣で手紙を書いていた君の残照。
真っ直ぐに光りたい
朝焼けを感じていたい
透明な空気であたしはあなたに変りたい
唐突に人生が降りる
これからのコロニーだ。
明日の道を知っても決して僕は今夜には死なない
ただ一筋を僕は知る
その信仰は君であり僕の生涯だ。
明日希望が途絶えても
このコーヒーカップの中の陽だまりは消えない
理由は要らない
コロニーが死なないなら。
歩かないか
言葉がなくても
無言の冬の夕暮れであっても
陽が沈む場所はいつも僕たちの帰り道
そこにコロニーで迎える今日の奇跡がある。
Colony / コロニー
ツイッターで25人のフォロワーさんのために書いた詩を一つの詩に編集した。
作者ツイッター https://twitter.com/2_vich