「イチローがニューヨーク・ヤンキースへ」
スポーツの世界で一つの球団一筋の選手のことを「フランチャイズ・プレーヤー」と敬意を込めて呼ぶが、メジャーリーグのイチローは「そうありたいと思う」と熱く語ったことがあるが、結局それは見果てぬ夢に終わった。それとも、口ではそうは言っていても、今回のトレードは本人の希望であったというから所詮はチームのためでもなく、フランチャイズ・プレーヤーなどという名誉のある品格などよりもイチローには貪欲な性分を感じてしまう。
5年前の2007年に、マリナーズとの5年契約で1億ドル(当時の為替で約122億円)という巨額な大金を得るためにマリナーズへ居残っただけなんだろうか。そう思わざるを得ないのは、今年5年契約が切れるとなって活躍していないイチローは、「できるだけ早く去ることが、チームにとっても僕にとってもいいことだと決断した」とあっさりと移籍を志願したという。マリナーズも打率2割6分台と低迷する巨額な契約金のイチローを持て余していたから、マリナーズにとっても渡りに船だ。
一方、スター集団のヤンキースでは、今季、故障者で外野陣が手薄となり補強が急務だった。また、イチローにとっては、常勝の名門チームであるヤンキースに籍を置ける絶好のチャンスが到来した格好だ。イチローは、大リーグ12年間で過去10年間、アメリカン・リーグの西地区優勝すらも遠ざかり、2004年に262安打のシーズン最多安打、2010年には大リーグ史上初の10年連続200安打の記録を達成しても、この10年間も優勝にはまったく無縁の選手だ。
したがって、今回のヤンキース移籍によって、ワールドチャンピオンとなり、チャンピオン・リングを獲得してから引退すると花道を飾れるというものだ。因みに、日本人の大リーガーで初めて大リーグのチャンピオン・リングを手にしたのは、イチローがアメリカへ来る前の1998年にヤンキースでピッチャーとして在籍していた伊良部秀輝だ。その伊良部選手が自らロサンゼルスで命を絶ったのが、奇しくもちょうど1年前の7月の終わりだった。
日本人として初めて大リーグのチャンピオン・リングをヤンキース時代に手にした伊良部がこの世を去ったちょうど1年後に、伊良部が在籍していたヤンキースへイチローが移籍した。大金も個人記録も既に得ているイチローがチャンピオンリングのためにヤンキースへ移籍したのか?そうであれば、ロサンゼルスからニューヨークへ1年前に引っ越してきた僕にとっては、イチローにはニューヨークへ来てもらいたくない。イチローのピンストライプ姿をヤンキースタジアムで僕は観たくない、というのが本音だ。
「イチローがニューヨーク・ヤンキースへ」