広い宇宙の月光
プロローグ
神様はひどいものだ。人を平等に創らない。
いつもいつも同じ思いをするのは同じ人…
でも
運命って信じる?
宇宙の中の輝く月
星和病院。ここに少女が入院していた。
「つまらないっ。まらないっ!私は…私はなにもしていないじゃない!うまれてきてから、ずっと。ずっと。ただ待っているだけよね…12才の人生を、楽しく、歩みたい…なのにっなのにどうして神様は助けてくれないの!?」
生まれつき身体が弱い少女は、ベッドから起きることも難しかった。両親は事故でなくなり、少女はずっとひとりだった…
人生に憎しみしかなかった少女にイキルチカラが舞い降りたのは、12才の誕生日、桜が舞い散る春のことだった。
「光っ光!!」
少年は病院の廊下を走り『光』と呼ばれている子に飛びついた。
「良かった。無事だったんだね。」
「うん。ごめんなさい。お兄ちゃん。」
(あぁ、兄弟か…仲がいいね…)
少女は笑ってはいられなかった。ずっとひとりだったから。
「じゃあ帰ろうか。」
二人が帰ってしまう。
(いつものかとか…)
病院にはたくさんの人が来る。だけど少女と話すことも、目を合わせることもしない。
「治って…よ…かった…ね…。」
うまく声がでない。
(聞こえない…か…)
兄弟が病室を出て行く。
「…!?」
目があった。少年と。
「光、先帰ってて?お兄ちゃん、ちょっと用事思い出した。」
「お母さんは?」
「大丈夫だよ。病院の待合室にいるから。」
「わかった。あとでね!」
少年は『光』ちゃんを送った。
「じゃぁね。」
そういって、少年は少女を見つめた。
「君、名前は?僕は、そら。宇宙って書いてそらって読むんだ。」
「私に言ってるの?」
病室には宇宙と少女しかいなかった。
「君以外に誰がいるのさ。」
「…。フフっそうよね。…私はるな。月って書くの。」
こうやって誰かと話したのはいつぶりだろうか。
「月かぁ。僕は宇宙だから、すごいね!僕たち仲間だよ!友達だよ!」
『友達』いつからいなくなっただろうか。
(宇宙…)
「友達ね…うれしいっ!!仲間なんて…久しぶりすぎる…」
「うんっ。…エ!?何で泣いてるの?!」
「え…嘘…」
月は泣いていた。
「な、なっ何でだろう。ちょ、ごめんね…」
「うん…いいよっ泣いて。
きみはずっとひとりだったの?」
「…生まれたときから、ずっとひとりだった…。」
「そっか。寂しかった?」
「!?寂しくなんかない!だって、だって宇宙が来てくれたもの。私、ひとりじゃない!一人じゃないよっ!!」
「そっか。そうだよね。僕も、君と会えて良かった。」
宇宙は学校に友達がいなくて、ずっとひとりだった。
「ねえ、月のことがもっとしりたい!だから、こっこれからも、ここに通っていいかな!?」
月は口と目を大きく開いた。信じられなかった。
「うん…いいよっ!きてっ!」
これが月にイキルチカラを与えた出会いだった。
金の鍵
「宇宙、宇宙!!!もう一そらっもう、そら!!きいてるの!?」
「あぁ。ごめんごめん。」
月と宇宙はあの日から毎日のように会っている。
「ねぇ、続きを教えて!!」
月は、驚くほど元気になった。
「えーっと、僕が習ったのはここまでだよ。明日には分かるから、ちょっと待ってて。」
「ムスーッ」
月は頬を膨らまして怒っている。
「ちょっと教科書かしてっ!」
「え…。うん…。」
月はまだ習っていない新しいページをじっと見つめている。
「月…?まだわからないよ?」
「…。」
首をかしげながら、月を見守る。
「あっ。…わかったかも!?」
「なにが!?」
「これ、教科書見れば解けるよ!」
「へぇ、すごいね…。」
「私が教えてあげる!」
月は頭も良くて、宇宙が教えていた勉強も、もう追いつかなかった。そして幸せな日々を送った。
「月ちゃん、月ちゃんしっかり!」
宇宙が熱を出して、2日病院に来なくなって、月は急に倒れた。
ピッピッーピッー
機械の音が鳴り響く。
宇宙が病院に来たのは、その次の日のことだった。
「イヤー、ごめんね。ちょっと風邪をこじらせちゃって…。」
宇宙は立ち尽くすことしかできなかった…。
「月…?えっ…嘘…?どうしたのっ!?ねぇ…。」
ピッピッー
機械音が鳴り響く。
いつもは月の色に包まれていたベッドも機械一色だった…。
「宇宙…、やっと来てくれた…。」
「…!?」
月はマスクごしに必死に言った。
「月っ!月!!!ごめんね…ごめんねぇ!!!」
泣きながら叫ぶ。大好きな月のために…。
「月、まだ勉強しようよぉ!楽しかったじゃん!!!」
声をからして叫ぶ。大好きな月のために…。
ピッーピッーーピッーーー
心臓の音が小さく、驚くなっていく…。
「月、ねぇ遊ぼ?もっといっぱい…」
看護婦が外に出て行くように言う。
「月…。」
しばらくして、看護婦が出てきた。
「宇宙くん…とても悲しい事だけど、月ちゃん、とても重い病気にかかっているの。それで、悪化しちゃったのよ…。それに、もう一月も保つかわからないの…。」
「…!?月は…助からないんですか。」
「…。命には限りがあるのよ。」
月はとても重い病気で治すことはできない。
「なんで…なんで月なんだよ…なんで今なんだよ…!」
その日、宇宙は夜中ずっと泣いた。ご飯を食べることも、寝ることもしなかった…。
そして、昔のことを思い出した…。
広い宇宙の月光