Snow Dance
Snow Dance
俺の感情に合わせてか粉雪が降ってきた。こりゃ積もるかもなと思いつつ、人気のない道を歩いていく。
『また、来たの?昨日も来たじゃん』
と呆れたように、呟く声がした。立ち止まって振り返ると、白いコートを身にまとった、まるで、雪の精霊のように美しい人がいた。
「別にいいだろ」
『よくないわ!んも!昨日、二度とこない、これが最後だからって言ったの誰だったけ?』
と、少し怒ったような口調で俺に言った。
「うるせ。お前だって、別れる時に、もう二度と会わないとかいいながら、俺に会いにきただろ」
『あー!まだそれを言うか!馬鹿貴久!』
「それは俺の台詞だ、馬鹿美希」
っと、ぎゃあぎゃあ不毛ないいあいをしてしまった。まあ、いつものことなのだが。
ふと、美希が空を見上げた。
『そう言えば貴久〜、雪降ってるね〜』
と、灰色の空を見つめながら美希は何処か寂しげに呟いた。
「だな」と、俺は短く彼女に返した。
美希は寒そうに、はあと白い溜息をついた。
「寒いの?」と尋ねれば、美希は悲しそうに首を振った。
『寒くはないよ、ただ…』
「ただ?」
『なんでもない(笑)』
と、ふわりと笑った。
「なんだよ、それ、気になるじゃん」
『気になる?気になるなら捕まえてみろ!』と、彼女はお決まりの台詞を言った。
俺はまたかよ、と思いつつ彼女を捕まえようと、手を伸ばすが、美希はひらりと避けてしまう。まるで、雪の精霊がダンスをするように…。
いつもなら、疲れて諦めるのだが、今日は違う。俺は一旦立ち止まり、彼女に言った。
「今日は絶対捕まえるから」
と、宣言すると、彼女は、ほー、と言う顔をした。
『じゃあ、捕まえてみてよ』
「ふふふ(笑)簡単だし」
そう言って俺は地面を蹴り、身体を浮かばせ、彼女に抱きついた。そう、すでに、俺には重力なんて関係がなかった。
『そっか、貴久もか』
と美希は哀しげに呟いた。
「まあね。でも、これでまた、ずっと一緒にいられるね」
『うん』と美希は泣きそうな声で言った。
なんで、泣きそうなの?ねぇなんで?と聞こうと口を開いた瞬間、
『あ、そうだ!』
っと、彼女は何か閃いたように言った。
「ん?何?」
『最後にもう一度だけ社交ダンス踊らない?雪降ってるし』
「いいよ」
そう、彼女に返し、社交ダンスの姿勢をとる。
『準備はいいね?行くよ?』
という彼女に頷き、ステップを踏む。
真っ白な雪の中で踊るダンスはとても、楽しく、とても、悲しかった……。
そして、二つの魂が紡ぐステップは朝に消えていった。
翌日ー
〈今朝、8時ごろ、○○墓地で男性の遺体が発見されました〉というニュースが流れる。死因は心不全だったそうだ。
が、しかし、仏の顔は何処か、ホッとしたように微笑んでいたそうな。
ーENDー
Snow Dance