解剖

私は袋のファスナーを掴んだ。
この中には献体が入っている。
動揺を周りに悟られないように落ち着いて、なるべく献体に触れないように袋を開けた。
薬品の臭いがきつかった。
白い布を広げると、中には黒に近い色をした1人の元人間がいた。
ここに来る前は一度でいいから他人を切って殺してみたいと考えていたが、目の前の献体をみるとそんなことは全く思えなくなってしまった。
身体の中の臓器をじっくりと観察し、その臓器の状態からこの献体がどのような人生を送ってきたのかを想像した。
私は今、散らかっていて不潔という意味で汚い自分の部屋にいる。寝転がった絨毯の上には食べかすやゴミ、適当に脱いだ服が投げ捨ててある。ゴミ箱に溜まったゴミからは異臭がする。
大好きな女の子に私は何もしてあげられないし、大勢いる友達のなかの一人である。誰かの特別になれない。それを理由に無意味に他人を縛り付けて、殺意を撒き散らすことはもうやめたい。ただ寂しい感情に終わりがない。
あの献体は悲しくはないのだろうか。閉じた目の睫毛が綺麗で印象に残った。目を閉じると彼の顔を思い出してしまう。ゴミの臭いが献体の臭いと似ていて苦しいのに忘れられない。あぁ、私は献体なんかになりたくはない。

解剖

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-16

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