海物語
1. 島守り
海のことなら、よく知っている。
その恩恵、その脅威。
私たちは、常にそれらに翻弄されながら生きてきた。
四方を海で囲まれたこの小さな島ではそれが当然であり、受け入れるものとして日々の生活を営んでいる。
その恩恵ともいえる漁業と、僅かな特産物、そして驚くほど本土の昔の様子が残っているという風土が、島の僅かな取り柄だった。
私たちはそんな島で生きることに特に不満はないが、
気候が良い時に、遥か彼方で霞む本土が見えると、向こうのあることないことをよく話し合っていた。
島の人々は、今の生活に何の疑問も持たず日を過ごす。
私もその1人だった。
海物語