運勢12位の幸運
目覚まし時計が鳴らなかった朝
つけっぱなしのテレビから流れてきた 今日の運勢
「ざんねーん!」
少しも残念じゃなさそうに アナウンサーの声が軽やかに告げた
「今日の運勢12位は水瓶座です」
へこむ暇もないまま 家を飛び出す午前8時
焦る気持ちで走らせる自転車のペダルが 呆れたように空回りを繰り返す
自転車置き場では鍵がうまくかからない
汗ばんだ手のひらで鍵が滑って、
アスファルトの上で小気味良い音を立てた
心臓破りと言われる長い坂道を必死で駆けあがる
ふと見つけた、慣れない足取りで走る君の後ろ姿
ポニーテールに結わえた髪が、名前の通り尻尾のように
首もとで頼りなく揺れている
思わず顔がほころんだ
珍しいねと、後ろから追い抜くように声をかけた
一瞬驚いた表情を浮かべた君は、すぐに困ったような顔になった
「どうせなら、一緒に遅刻しようよ」
汗だくでよろよろと走る君に、腕時計で時刻を見せる
走ったところで、もう間に合う時間じゃない
君は諦めたように笑った
走ることをやめて 君と二人 並んで歩く
目覚まし時計が鳴らなくて寝坊したと言う君に
一緒だねと また笑った
教室に入ると、待っていたのは仁王立ちの先生
二人そろってこっぴどく叱られた
長いお説教から解放されて チャイムが鳴る
席につく前に、君がこっそりと耳打ちしてきた
「ごめんね」
一緒に遅刻させてごめんね
そんな意味だったのかな
少しうつむいてしょげている君に、僕は答える代わりに言った
「帰りも一緒に帰ろうよ」
ちょっと驚いた表情の後に、君は晴れるような笑顔を見せてくれた
運勢12位の1日
ツイてないからこそ、君と笑いあえた1日
運勢12位の幸運
昔に書いた詩?もどきです
ツイてないなー、が重なってハッピーが生まれる時ってありますよね
終わりよければ全て良し(笑)
全体のイメージした景色は初夏の朝。
優等生タイプで遅刻ゼロの女の子と、明るくて楽しいバカな男の子です。
高校生かなー。 こんな青春欲しかった(笑)
読んで頂きありがとうございました。