青という名の男
理屈を超えた所の不思議な感覚
1
僕は青が大好きで、そして名前もそのまま青だったりする少年だ。
自分で少年だなんて言ってちょっと気恥ずかしさもあるが、そんな所も僕の魅力の一つだと思って欲しい。
そして、これも魅力の一つなのだけれど、僕は、とっくに少年と言われる年を過ぎて中年期にさしかかっている男であるが、それでも諦めずに少年の心を維持することにエネルギーを注いでいる。
僕は少年という響きを大切にしたい。
僕の中の少年、それが衰えてしまったら、僕は何を支えに生きれば分らなくなってしまい、僕は空と地面との上下の区別さえつかなくなってしまうだろう。それくらい僕にとって少年の心はかけがえのないものなのだ。
それから、僕の隣にいるこの女性は、僕の最愛の女性だ。名前は、陸。女性だけれど男の子のような名前だ。
内面も女性なのか男性なのか分らないような不思議な女性だ。でも今の時代は何でもボーダーレスになっているし、そういう意味では、彼女は最先端なのだろう。
陸は、僕の心を成長させようと、あれこれ仕掛けてくる。僕の中の少年はそれに対して抵抗に抵抗を重ねている。陸は、僕を成長させてどうする気なのか分らないが、僕の僕らしい所が最近気にくわないらしい。
もしかしたら、それは最近ではなくて、僕たちが出逢った時からそうだったのかもしれないが、少年の心を大切にしたい僕は、様々のことに深読みをするのはやめて、全て柔軟に受け止めたいところだ。
僕と陸との攻防戦に終わりはなく、来る日も来る日も続いて行く。
そんな僕にとって耳の痛いことばかり言う陸だが、僕にとっては彼女が最愛の存在と思っている。ちょうど磁石のプラスとマイナスの、、、N極とS極が引き合うようにして僕たちは出逢った。
そしてその引力は今でも続いている。もっとも、その間に他の強い磁力の存在がなかったとは言えない。でも僕たちは、離れることはなかった。
僕たちはそれぞれに引力を感じているし、お互いがお互いにとって最高のパートナーだと考えている。
でも人間というのは不思議な生き物だ、もしくは欲張りとでも言うのだろうか。僕たちは、いつでも他の磁石を探しているんだ。僕たちは最高のパートナーであるにも関わらず、、、。
さて、これからみなさんにお見せするのは、僕と陸、そして二人を取り巻くごく普通とも言える欲深い人達の物語だ。この物語の主人公は、当然僕、、、ではなくて僕たち人間の姿を天上から眺めている人間界では悪魔と言われ恐れられているが、実は、神のパートナーでもあるサターン 夢人だ。
ここからは、そのサターン 夢人にお任せしよう。
2
今日のターゲットは誰にするかな。
サターン 夢人は、退屈そうに伸びをして、そして間髪空けずに大きなあくびをした。
退屈というテーマのポスターに丁度良い光景だ。
お気に入りの雲の上から地上を眺めながら、その日のターゲットを絞り、ターゲットを決めたら、それをノートに記すのだ。
そして、それを神様の使いに渡して、神からの了解を得て、その日の任務がスタートするのだ。
神というのは、自分では動かずに、私達のように悪魔と言われるスピリットや天使などを使って目的を果たす存在だ。
その目的が何かって?
それは、まだ教えられない。それを教えてしまえば、人間が生きている意味そのものがなくなってしまうからだ。人間が生きている間は決して知らされることのない、その目的。
それを達成するために日々せかせかと働いているスピリットの一人が俺だ。
さて、そろそろ今日のターゲットを絞りにかかろう。
実は、神様というのは、ギブ&テイクの精神の持ち主で、きちんと仕事を完遂させないと、ご飯も食べさせてもらえないのだ。
俺は、筋金入りの食いしん坊だから、飯抜きは絶対にあってはならない。
しかも、手抜き仕事を見抜く才能ときては、誰にも負けないものがある。何たって全知全能の神様だからな。
そんなわけで、今日は、あいつにしよう。
夢人が、ギョロギョロした眼でまっすぐ見つめている先には、ラフなファッションに身を包んだ、どこにでもいるような中年男性の姿があった。青である。
青は、今日の夢人のターゲットに選ばれてしまったのだ。
夢人のターゲットに選ばれたことが何を意味するのか、それは青には知るよしもない。
陸、待ってくれよ〜、僕も一緒に行きたいんだから〜
青という名の男