ぼくの妹がこんなにコワイはずがない
あのさ、ちょっとぐらい年が上だからって、エラそうにすんじゃないよ、バカアニキ。毎日学校から帰るなり、ゲームばっかりやってさ。高校生にもなって、成長しないにもほどがあるっての。しかも、すぐにあきちゃってゲーム機放り出してさ。だったら、少しは勉強でもしなよ。
やばい、こっち見た。あ、こっち来なくていいから。かまわなくていいから。
「やあ、雫ちゃん。元気にしてたかい?」
ニヤッと歯をむき出して笑うんじゃない。キモイっての。ああ、もう無視、無視。
「なんだ、ご機嫌ナナメなのか。それともお腹でも空いたかな。ぼくもオヤツ食べたいし、おふくろに聞いてみるとするか。ママー、ねえ、ママー!」
出た。いないところでは「おふくろ」って呼ぶのに、いざ、面と向かって言う時には「ママー」だって。うー、気持ちワルッ。
「困ったなあ。いないみたいだぞ。そんなに遠くへは行かないだろうから、お隣かな。うん、そうだ。雫ちゃん、ぼくが作ってあげるよ。ついでに、ぼくもカップラーメンでも食べようかな」
あ、いらない、いらない。お腹なんか空いてないっての。
「とりあえず、お湯を沸かして、と」
ああ、危ない。もう、見てらんないわ。どんだけ不器用なのよ。
「あら、章太郎、帰ってたのね」
ふう、助かった。
「あ、お帰り、ママ。どこに行ってたんだい?」
「お隣に回覧板持っていったら、ちょっと話し込んじゃったのよ。それより章太郎、あんた何やってんの!」
「だってさ、雫ちゃん、お腹空いてるかなあと思って」
「さっき、ちゃんとあげたわよ。さあ、危ないから、もう向こうに行ってちょうだい」
「はーい」
やれやれ、これじゃ先が思いやられるわ。あと何ヶ月かして、あたしが本当にしゃべれるようになったら、絶対に文句を言ってやるんだ。それまではしかたないから、こう言っとくわ。
「バブーッ!」
(おわり)
ぼくの妹がこんなにコワイはずがない