花火
中途半端です。一応まとまってる
今年の夏は、昨年の夏と同じで、不気味なほどに暑かった。
日陰に居ても汗が吹き出て止まらなかったし、熱いアスファルトの上に立っているだけで指先から溶けてしまいそうだった。
「たつや、早く行こうよ」
ぼっーとしている僕に、麦わら帽子を軽く被ったゆみが急かすように言った。
彼女は小走りで、僕の前を走っていった。
僕も追いつこうとしたが、 少し走っただけで頭から滝のように汗が流れ落ちた。
「ゆみ、ちょっと待ってよ」
言ってみたけど、彼女は待ってくれなかった。
でも、僕とゆみが目指している目的地は同じだ。
山の向こうで打ち上げられる花火が一番よく見える、小さな丘だ。
去年も、僕と彼女はそこで花火を見た。
細い光の糸が空を上っていき、夜空に大きな花を咲かせる。
少し遅れて、どん、という低い音が耳に届く。
僕たちは、その花火を見るために丘を目指していた。
ポケットに入れていた時計を見てみると、時間はもう少しで18時になる。
「早く早く!」
ゆみが後ろを振り向きながら、だるそうに走る僕に言った。
花火は18時から始まるので、僕は少し焦って走った。
丘に着くと、向こうでゆみが手を振っていた。
「もう打ち上がっちゃった?」
「まだだよ、丁度いいくらい」
山と山の間に丁度、夕陽が沈んだとき、一発目の花火が打ち上がった。
オレンジ色の向日葵のような花火だった。
ゆみの方を見てみると、目を輝かせて花火に見入っていた。
それから、何発もの大小の花火が次々と打ち上げられた。
ひゅうう、と弱々しく打ち上がる音。
どん、と強く空に咲く音。
ときどき、ゆみの小さく笑う声が聞こえた。
最後の一発が打ち上がり、空に咲いたとき、不意にゆみが、僕の手を握った。
それが何を意味するか考えるでも無く、僕はただそれに答えて、ゆみの手を握り返した。
いくつもの小さな光が段々と小さくなっていき、夜空から消える頃には、ゆみは居なくなっていた。
僕の手の中には、まだゆみの手のぬくもりが残っていた。
花火
死んだ女の子と生きてる男の子の話。
思いつきでつらつらーっと。