スカイ2ダイブ

 9月1日。夏休みも終わり、中間的な気分で学校へ向かう。昨日までのもう夏休み終わっちゃうんだなメランコリーは遥か遠く、もう完全に過去のことだ。
ただ、すれ違う学生たちは、自分のような心境を顔に浮かべているのもいれば、夏休みが終わって学校でクラスメートに会えるのがよほどうれしいのか、やたらテンションの高そうな表情をしている女子高生もいる。
しかしまあ、こういう気持ちも否定しない。もともと家にいることの多い僕は、夏休み中もほとんど家から出ることもなく、両親も仕事があるので、基本的に一人だった。別に一人でいることは苦ではないが、さみしさぐらいは感じる。誰だってそうだろ。はやくみんなと会いたい。我ながら、らしくない。
 そんなことをぼんやりと考えながら、着いてしまった我が校の自転車置き場に自転車を珍しく2重ロックでとめ、教室に向かう。
暑い。少し歩いただけで汗が体から出てくる。さっきまで自転車をこいでいたのも理由の一つだろう。仕方ない。教室にはクーラーがついてる。急ごう。気持ちだけ。
時刻は8時15分。目の前に広がるクラスメートたちの数は、夏休み前最終日の同じ時間よりかなり多い。ほとんど全員が元気に登校してきているようだ。
僕にしては奇跡的な記憶力で覚えていた席につき、かばんをおろす。中身はほぼ宿題だ。
「あ、おはよう。」
そう挨拶してきたのは早川葵。小4の時にこっちに転校してきた、いわゆる幼馴染だ。
「…うん。」
「いや、うんって。もうちょっとなんかないわけ?」
「そっちこそなんかあるのか」
「いや、ないけど…」
「じゃあ、いいじゃん」
「太一今日なんか違うね。なんかあった?」
「いや別に?」
「そう。じゃあっ…」
そう言い残して、女子の輪の中に帰っていった。さっきの俺はそんなに愛想がなかっただろうか。
8時30分、担任の教師が入ってきた。騒めいていた教室内の空気はやや静まったが、それでもまだうるさい。今日の日直が思い出したように起立とかなり大きめの声で言う。その声に生徒たちがばらばらと立ち上がり、
「礼!」
「よろしくお願いしまーす」
「おはようございます」
「おあようーーーす」
こうしてまた学校生活が再開した。
 夏休み明け初日といっても、通常通り授業は行われる。午前に3時間の授業を受け、昼食をとる休憩の後、午後にも3時間の授業。夏休みのそれぞれの思い出話に華咲く授業もあれば、夏休みの余韻も早々に、いつもの変わらないペースで展開される授業もあった。
 そして放課後。僕は部活動を今はもうしていない。家に帰りたい。誰よりも早く帰り支度を済まして、机を下げ、教室を一番に飛び出した。
自転車にまたがり、学校を出ようとしたとき、後ろから声がした。
「待って待って!」
この声は。自転車を止めて振り向く。
「ああよかったよかった。間に合った間に合った。
「どうした?」
「あ、うん。えっとね、買い物付き合ってもらえないかなーって。暇でしょ?」
またか。
「いいの?だめなの?」
しかし、今日は月曜日だ。金曜日ならともかく。
「どうしてもか?」
「うん!どーしても!」
絶対うそだ。
「ねえ、どっち。」
「わかったわかった、行きます行きます」
「よろしい」
よろしいって…。
早川は自転車には乗らない。だから、俺の横を歩いている。仕方なしに俺も自転車から降りて歩く。聞けば、
「今日はね、お洋服買いにいくんだよ!」
 だそうだ。
「今日朝太一さ、なんか元気なかったみたいだけどなんかあったの?」
「いや、別に」
「ふーん。まあいいや。それよりさ、夏休みなにしてたの?」
「家にずっと。」
「ほんとにずっと?」
「まあほとんど」
「うわー。変。」
「お前は?」
「私は田舎のおばあちゃんちに行ったり、(ゆう)ちゃんたちとプールいったり」
 「元気だね」
「いやいや、これくらい当たり前だから。太一がおかしいだけだから。青春しないと。そんなんだから彼女できないんじゃん」
「別にそういうのは考えてないから」
「ふーんふーん」
「こっち見んな」
「まあいいや。」
学校の近くにある大型ショッピングセンターに着いた。自転車を適当な位置に今度は単ロックでとめ、中に入った。入ってすぐのエスカレーターに乗り、3階まで上がって、つらつらと両側に店が構えられている道をしばらく歩いたところで、
「あ、間違えた。一つ下だった」
「おい馬鹿」
めんどくさいやつだ。今度は階段で降りた。
早川はTINY BEARという服屋に入っていった。女物の服を扱っている店らしく、少々居心地が悪い。早川の買い物には今まで何度か付き合ったことがあったが、服屋は初めてだ。
「これどう?」
「知らん」
「こっちは?」
「知らん」
それより店員の目が気になる。微笑ましい笑みでこちらを見てくる。僕達そういうのじゃないんで。早く帰らせてください。
TINY BEARに20分、そのほか3店まわって、早川は3着買ったようだった。
「ああーいい買い物したー。付き合ってもらってごめんね?なんか食べてく?あたしおごるよ?」
「いい。早く帰りたい。」
「太一って今日ほんと変だね。じゃあ帰る?」
「うん。」
自転車を置いた場所に戻る。時刻はもう7時を回っただろうか。あたりはだいぶ暗くなっていて、涼しい風すら感じられる。朝はあれだけ暑かったが、それでも秋はちゃんと近づいてる。きわめて通常。ありがたいことだ。
広い駐車スペースの中の駐輪場の中で自転車を探すが、見当たらない。おかしい。たしかにここに置いたはずだ。
「どうしたの?」
「このあたりに置いたよね。」
「うん、たぶん」
「おかしいよね」
「お、かしいね…もしかして」
「まさか。どこかに移動されたとか?」
「うーん。それはないと思うけどな。でもそれぐらいしか思いつかないね。」
「ちょっと別のとこ探してみよう。」
この大型ショッピングセンターには駐輪スペースがいくらかある。僕が今日とめたのは正面にあるやや小さめのやつだったはずだが。とりあえず、隣接する地下駐輪場に入る。絶対あるわけがないとは思うが、それぐらいしか心当たりがない。
「なんか、ごめんね…」
「いや、いい。たぶんどうせすぐ見つかる。」
やや急な坂を下りて、黄色とも白ともつかない蛍光灯の光る駐輪場についた。普段使わないせいか、思ったよりも広く感じた。しかし、自転車の数は少ない。これならあまり時間はかからないだろう。
ない。もともとあまり期待してはいなかったが。
「ないね。」
「うん。」
「どうする?」
「うーん。」
「そこにいる警備員さん?に相談してみたら?」
そういえばさっきからこっち見てるな。
「いや、でもそこまでは。」
「じゃあ警察?」
「それはもっと。」
「じゃあ、あの人に話してみようよ」
「でもあんまり初対面の人と話すのは気が進まん」
「太一かっこ悪いよ。そんなんだから彼女でき」
「わかったわかった、行ってくる行ってくる。」
「よろしい」
あまり気が進まない。僕は高速道路の料金所にあるあの小さな部屋のような場所にいる一人の警備員の方へ向かって歩き出した。もうすでに目が合っている。気まずい。
「あのう、すいません」
「はい。」
「ちょっと自転車がなくなっちゃったみたいで。しばらく探してみたんですけど」
「そうですか。自転車を止めていた場所と時間は?」
「とめたのは4時ちょっと過ぎだと思います。それと、正面にあるやつです。ここの近くの。」
「分かりました。では、こちらにお名前と住所と連絡先等をお願いします。」
「は、はい。」
「書き終わったら、少し一緒に探してみましょう。単なる勘違いかもしれませんから。」
「なんかすいません。」
「いやいや。」
電話番号って、携帯かな。自宅かな。どっちだっけ?
「こちらにはご自宅の電話番号を市外局番からお願いします。」
「はい。」
恥ずかしい。後ろで早川がにやけているのを背中の目が見る。
「書き終わりました。」
警備員が用紙を受け取る。
「では行きましょうか。」
「はい。」
警備員と2人で歩き始めた。早川もついてくる。
「なんかうけた」
「うるさい」
 今度は、入ってきた時とは逆の、ショッピングモールの外側に出る出口から出た。
坂道をあがり、外にでる。もう完全に真っ暗だ。早川が心配になってくる。
「お前時間大丈夫か?」
「え?なになに?心配してくれるの?太一くん今日は男らしいなあ」
「じゃあ一人で帰れるな。気をつけて帰れよ。」
「うそうそ。怖い、怖い。送って送って?」
聞くんじゃなかったかな。
 再び正面の駐輪場に戻る途中、駐車場内の横断歩道を渡っている途中、左目の視界のさらに左端にまぶしい光が入ってくる。早川と思わず左を見ると、そこには

スカイ2ダイブ

このお話は半分は音楽を作るために書き始めました。

僕は小さい時から音楽をやっていて、高校生になって
作曲を始めました。
そして僕は映画を見るのが好きで、
その影響もあって映画音楽に興味を持ちました。

映画音楽はその映画のためだけに作られる音楽で、
その映画を踏襲しているといえます。

逆にいえば、音楽は映画なくしては生まれません。

かといって、僕のまわりに映画を撮っている人や
アニメーションを制作している人、僕と一緒に
映画を作る人はいません。

ここで、映画の原作、
文章によって映画の世界を表現するのなら
僕にもできるんじゃないかと思いました。

原作、そして音楽。
両方の完成を目指して頑張ります。

スカイ2ダイブ

「世界が狂い始めた。」 「この世界がうまく行き過ぎてるって思わなかったのかよ」 夏休みを利用して、「アニメ映画の原作」という設定でSF小説を書いています。 すこしずつ更新していくので、よかったら読んでみてくださいね。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-22

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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