ふたりぐらし

ふたりぐらし

冬の嵐が窓を叩く。


生温い水分をたっぷりと含んだ空気が部屋の中いっぱいに広がり私を包み込む。



彼と初めて出会ったのは春の嵐の日。

春風に紛れて桜が散り、今日のような生温い雨を降らせていた。

お互い1人で桜を見に来ていたこと、桜の花びらと宴会をしている人達を交互に見るのが好きなこと。そして突然の雨に高円寺の陸橋に雨宿りしていること。

全てが重なって、私達は初まった。



駆け足で過ぎてく季節を2人で眺めながら、こんな日が続いていくんだなと思っていた。



でもどこかズレていた。

いつもより早めに起き、私を起こさないように腕を抜けて身支度を整えているのを私は起きていないフリをしてやり過ごした。

あの時私が起きていればなにか変わったかも知れない。



そんなことを考えながら私は部屋に残された抜け殻を抱きしめ、出会った日と同じ嵐の日をやり過ごそうとしている。



おやすみ。

ふたりぐらし

ふたりぐらし

生ぬるい空気でいっぱいになった部屋。あの春の日と似ている。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-03

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