終りの朝。

終りの朝。

朝。

頭を抱えられるように抱きしめられながら目覚める。

レースカーテンから朝日が射してくる。 冬に入りかかった寒い秋の朝。

こうやって目を覚ますのも今日で最後だろう。
変わらない愛情で僕を包み込んでくれた彼女。
変わってしまった僕。

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彼女と出会ったのは雨の高円寺。
桜の花びらが水たまりに落ちているのをぼぅっと眺めていたら。

「キレイですね」

と声をかけてきたのが彼女。
白い肌に長い睫、まだ肌寒いというのにカットソーにジーパンという装いに少し不安を覚えたが、
その薄着が彼女の女性らしい部分をより一層際立てていた。

お互いの事を話しているうちに雨が止み、そのまま電車に乗って下北沢に行き、
猫カフェとうさぎカフェをハシゴして、彼女いきつけのちょうちん居酒屋に行き朝まで飲んで帰った。

自然と嫌な気はしなかったし、お互い無言になっても気にしないルールを適用していたからかとても心地良くなった。

また次の日もなんとなく会いたくなり、今度は僕の地元で飲んだ。

それからどちらかのアパートで週末を過ごす生活を繰り返す。

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起こさないように彼女の腕から抜け出し、身支度を整え部屋を出た。

合いカギはポストに。 彼女は僕からのメールを見て途方に暮れるだろうか。
僕は携帯に保存した彼女との写真を見ながら。

あの春の嵐の事を思い出す。

終りの朝。

終りの朝。

1日のはじまりでもある朝。でも長い夜の終わりでもある。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-03

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