ある老鳥の死

人跡未踏の 空中寺院の


絢爛たる花々の 咲き誇る前庭で


百日紅(さるすべり)の枝にとまった老鳥は


盲いた目で 茫漠たる雲海を見下ろす



「我、秘められたるこの寺を求め


同胞(はらから)と別れ 遥かな旅路を飛び来しが


年老い 疲れ 目も霞み


今こそ落ちなんとする おりもおり


真理を極めしと音に聞く


古の僧の座すという


この御堂こそ見つけけれ


かかる僧侶は既に亡く


今や盲いし我なれば


残されし文も読むことあたわず




死に行く我は ただ祈る


我が肉体が朽ちてのち


小さき羽が風に舞い


同胞にまみえ ここに導かんことを」

ある老鳥の死

ある老鳥の死

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-03

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