ある老鳥の死
人跡未踏の 空中寺院の
絢爛たる花々の 咲き誇る前庭で
百日紅の枝にとまった老鳥は
盲いた目で 茫漠たる雲海を見下ろす
「我、秘められたるこの寺を求め
同胞と別れ 遥かな旅路を飛び来しが
年老い 疲れ 目も霞み
今こそ落ちなんとする おりもおり
真理を極めしと音に聞く
古の僧の座すという
この御堂こそ見つけけれ
かかる僧侶は既に亡く
今や盲いし我なれば
残されし文も読むことあたわず
死に行く我は ただ祈る
我が肉体が朽ちてのち
小さき羽が風に舞い
同胞にまみえ ここに導かんことを」
ある老鳥の死