序章(送信)
その一文の送信から。 (私たちは、また ひとつになれた)
その一文の送信から。
(私たちは、また ひとつになれた)
今となって思い返せば。
常に、心の奥底に 大切に大切に
幾重にも折り重なった記憶の
そのまたずっと 奥底に
その記憶は 呼び起こされるのを
ずっと待っていたのに違いなく。
きっかけは何だったのだろう。
日々繰り返される 何の面白みもない
単調な生活に
子どもたちが生まれてからずっと 演じてきた
無償の愛という名のもとの
この母という役割に
ほとほと 嫌気がさしていたわけでもなく。
むしろ誇らしく 生きてきたのに。
ただ魂だけは
ずっと 叫び声をあげていたに違いなかった。
声という声にはならずとも。
気がつかないふりをしていた。
皆が寝静まり、満月を見上げ
ひとり涙した
あの時にも。
子ども達の寝顔に
今日一日の懺悔を繰り返していた
あの日々でも。
それが。
前世の約束だったのか。
遠い未来での記憶だったのか。
私たちは出逢うべくして出逢い
お互いの胸の、
奥底に蒔いた種の存在にも気づかず
ただ、時が流れ。
そして また 巡り逢えた。
今だからこそ。
自らに下した人生の課題を
自らの力で 何とか乗り越えてきた
今だからこそ。
私たちは また ひとつになれた。
やっと。
だから。
きっと。
序章(送信)