石段

西国寺の石段の上から
港が見える。

金剛力士の仁王門を跨いで、
君が登ってくる。

青き空の下、
山より吹く風が
僕の背中を通り過ぎていく。

朝からスケッチブックを
何枚も描き終えた。
君が覗き込んだページに、
描いた無数の墓石の一つに、
白いユリの花が咲いている。

君が、泣き出しそうに、
僕の腕を掴んで揺さぶる。

港を眺めて、
じっと待っている。
明日は、雨雲がやってくる。
明日は、雨に濡れた黒い屋根瓦の上に、
きっと、気持ちを休めてくれる風が吹くに違いない。

あの時から、
僕達の未来が、
金剛力士のように、格子に囲まれている。
でも、ここまでは誰であろうとも、追いかけてこない。
きっと、睨みつけ、踏みつけ、
怒りを忘れてしまうまで、何も考えず暮らしていれば、
再び、僕達の未来が、今日のように、
青い空ときらめく海が、予感もなく現れてくる。

石段

石段

  • 自由詩
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-22

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