やさしい おわり かんがえている

やさしい おわり かんがえている

 


  






 

 







    







しあわせを


つかもうと


思いながら


明日


この隔離棟


お別れしていく


君のこと


思っている


しあわせを


つかんでくれよと


お祝い


しながら


君との


やさしい


終わり


考えている



  






 


  






 



「ひとりぼっちかもしれない」


そう言ったから


「ともだちになってやる」


言い返した


中庭


鉄条網


長い沈黙


目を見ていた


かわいかった


とても


地味な


病装を


からかって


やりたくなる


くらい


きれいだった


とても


悲劇的に



  






 


  






 




通りすがり


だったんだ


交差する


横断歩道や


逆行する


二つの


エスカレーター


みたいに


この


病の


雑踏


ほんの少し


足早に


通り過ぎたんだ


顔面


ひきつって


ほほえんで


小刻みな


副次作用



ふるえで


ぎこちなく


ふざけあった


そのうち


ときおり


孤独な


病が


互いを


見えなくさせる


そんな


病棟の


日々の


速度に


守られて


いずれ


もとの


スピードで


外界へ


飛ばされる


だろう・・・・・・


今は


傷みで


鈍く


衰えた


情感の


人間


二名


女の


ような


かけら


男の


ような


ぶざまな


かたまり




  






 


  






 




ここを


去った後


どうか


さがさないで


引き受ける


から


別々の


場所で


別々の


リアリティ


君は


僕に


やさしかった


僕は


君に


甘えていた


そして


いつか


どこかの


街で


君に


言い残した


僕の


いつかの


言葉の


いくつか


君に


知らせた


僕の


いたわり


君は


そっと


もう一度


見かける


どうか


さがさないで


僕を


忘れて


ゆきながら


移ろう


時間を


身に包みながら



  






 


  






 



生きて


いる


生かされて


いる


それは


この


病棟の


自転の


軋みに


ぺしゃんこに


なって


しがみつく


僕のこと


君のこと


僕は


君は


学んでいる


楽しむってことを


僕は


楽しんでいる


閉じ込められた


初めより


楽しくなった


君の目を


この先を


楽しみに


ほころんで


やがて


消えていく


君の顔


残像・・・・・・


はかなくって


せつなくって


わからない


だけだ


わからない


だけ


きっと


僕は


君は


いつの日か


拘禁の


外の


世界の


楽しみ方を


別れ別れに


知るんだろうね




  






  






 




 


お祈り


しながら


君との


この隔絶の


日々との


やさしい


終わり


考えている



  




  






 






 



君が 生きている




  






  






 




 



僕は 生きていたい。


  






 


  




  






 




 

やさしい おわり かんがえている

1999年に一度目の精神科に入院した時のことを書いた。
一部に、入院によるホスピタリズム(施設症)に侵された状態を描写している。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

やさしい おわり かんがえている

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-29

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