芳春
三年くらい前に書いた詩です。もうすぐこういう時期になると思います。
私は春になると、環境に慣れず憂鬱を背負っていた新入生の頃の自分を思い出ししまいます。
「蛙に目を貸す」って何だったか忘れてたんですけど、「蛙の目借り時」という季語から引用したみたいです。
花びらも舞い尽きて葉ばかりになった桜並木
ふわふわと若草を泳ぐ白い蝶々
柔らかなスカートを翻す女子学生
整然と色とりどりの花が並んだ花壇
どこまでも広く高く澄んだ蒼穹に
世界を揺るがす鐘の音が響く
蛙に目を取られそうな眠さに耐えられず
一つの大きな欠伸をしてベンチに座る
ぼくを包み込む青い春
これからを知らない若い春
ぼくの座る目の前をあの日のぼくが歩いてゆく
真新しいものたちを身に着けて
黒いオーラを纏ったぼく
死人のような顔をしたぼく
そいつにぼくは元気出せよと声をかけた
向こうはこちらに気付かない
きっと大丈夫になれるさ
そして安心して蛙に目を貸した
不安と憂鬱の病の春
そして草花の芽吹く希望の春
芳春