それはいつもどおりの月曜日
それは いつもどおりの 日差しを浴びる月曜日
そうだ
桃色のいろに 包まれた
大好きな あの子に
お別れの言葉 言いに行こう。
僕を 真向かいに見つめて からかう
君の 視線。
その目の中に
体育座りして かたくなに こちらに背を向けた
背中がゆれてる もう一人の君が
僕には見えるんだよ。
僕も 君と同じように
冷たい水の底で 体育座りして
背中をくっつけあって
ながく ながあく
気の遠くなるまで 何度もおしゃべりを重ねた。
ふたりは 「トウメイニンゲン」で
誰にも見つからないまま
真夜中に いたずらを繰り返していたよね。
それは邪気のなく あどけない
僕らの しぐさだった。
それは いつもどんなときでも
ふたりにしかわからないココロの バクダン遊びだった。
アタマがゆるんで こぼれていった 僕と君
転んで泣き出しそうな コドモの男の子と女の子みたいに
すべてをすっ飛ばして 真夜中 笑いつくした。
世界がジゴクにおちていったあの時も
宇宙が腹をよじらせてひっくりかえったあの時も。
それは いつもどおりの 切ないたそがれ時の月曜日
そうだ
僕の持たない 列車の切符を買った
大好きでしかたない あの子に
もう二度と出会わない おまじないをかけた
お別れの言葉 言いに行こう。
新しいレールに乗った 君は
地雷に囲まれた 安全地帯をふりぬけて
別の未来の 安らぎの場所に向かっていく。
ひとつ ふたつ ぬくもりが消える
みっつ よっつ おもかげが溶ける
駅を通り抜けて 僕との安全地帯から
切りはなされて ゆく。
君はもう 体育座りの水の底を終えてゆくよ。
ココロのバクダン遊びの砂場に
僕だけを残して 新しいレールを加速していくよ。
僕は もう二度と
君とは 笑い合えないけれど
君へは もう二度と
僕には だっこもおんぶもフレンチなチューもできないけれど。
真夜中の温もりの毛布に包まれていた 僕と君
いまだって ずぶぬれの 思い出の中では
大切なカタワレの双子だった記しが刻まれるんだよ。
永遠に離れ離れに話せなくなる今この時に。
永久にひとりがふたりになって
影がひとつに重ならなくなる いまこの時に。
それは いつもどおりが やがて完全に失われる月曜日
そうだ
僕がいなくなっちゃう 時間を拾った
どこまでも迷子になっていく 大好きなあの子に
一生 隔てられる 僕からの祈りを こめて
ふたりが途切れる真夜中の古本屋の駐車場
ミニクーパのシートに あの子を僕のひざにうずめて
お別れのだっこ しにゆこう。
それは いつもどおりに やってきた あの子がいなくなった月曜日
そうだ
おもかげが 拾えなくなった あの川べりに
やられちゃった 僕を 映しにいこう。
でこぼこになった 頭の中で
崖っぷちで 思い出そうとしている。
電話をかけてみたら
あの子の言葉の なまり 変わってた
うつろになった あだ名を
川面にむかって 口にする
僕は きっと負け続けたんだよね。
それは いつもどおりが 消えた 月曜日
そうだよ
いつもどおりが引き返さないように
ちゃんときちんと あのあだ名
消えてしまうまでの時間
じゃぼんと落とした 石ころの さざなみに
かぞえているつもり。
いち、 にぃ、 さん、 しぃ、 ごぉ、 ろく、 しち、 はち、
いち、 にぃ、 さん、 しぃ、 ごぉ、 ろく、 しち、 はち、
いち、 にぃ、 さん、 しぃ、 ごぉ、 ろく、 しち、 はち、
いち、 にぃ、 さん、 しぃ、 ごぉ、 ろく、 しち、 はち、
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それはいつもどおりの月曜日
かなり昔の詩。
たぶん小島麻由美という人の音楽を聴きながら書いたと思う。
最後の終わり方は模倣している。
作者ツイッター https://twitter.com/2_vich