カタストロフィ 和解 夜
みんなが 生きていて
どこか の ベッドで
眠りながら 共有する
夜。
この 惑星に
僕たちに 降りてくる
夜。
きみが もう 眠っているだろうか
今夜も 育児院で 家に帰れない子供を 抱いて 眠っているだろうか。
きみが すでに 眠っているだろうか
今夜も 少しだけ 左ひじを カッターで 擦って 安心しているだろうか。
きみが 眠っているのかと 想像している
今夜は リスパダールを 飲んで 眠りに落ちる前に 東病棟５階の あの思い出を 頭にかすめてくれただろうか。
夜。
そして いま
なにひとつ 変わらない 僕が 一番最後に
あのひとたちのことを 思い出して 眠ろうとしている
夜。
みんなが どこかの土地で 眠る
遠い 夜。
ひとつの 夜。
生きてゆきながら。 離れ離れに わかちあいながら。
20世紀に残した 僕のカタストロフィが
今夜 終わった。
この後の世界が 真新しくなった ように 思い込んで また 続けるのだろう。
僕が 生き延びようと してきた この 惑星の 夜。
救われない
自分を
感じてきた。
あなたに
してあげられなかった
しくじりが
淋しかった。
本当は
あなたは あなたで 救われて
僕は 僕で 救われなくちゃ いけなかったんだね。
べつべつの 時間で。
べつべつの 場所で。
惑星の夜の命に生きている
目にしている世界は 一つの夜の ほんの断片。
僕たちは まだ とまどいながら
そこにいる。
いつかきっと わかるだろう
運命のことや 彼や 彼女や あなたのこと。
惑星の夜の命が
うつろいゆきながら
僕は
たとえ命にとどまっても 通り過ぎてきたものを わすれたわけじゃない。
だれか 彼女の かわりに 語ってくれないか この場所へ 話してくれないか 彼女の 心を。
だれか 僕の かわりに 語ってくれないか あの場所へ 伝えてくれないか 彼の 魂に。
この 惑星の ひとたち。
僕の 半生の カタストロフィ。
僕は
ようやく
この 断片の世界と
今夜 和解できるのかもしれない。
あと数時間
夜明け
０１年
一日目 朝。
カタストロフィ 和解 夜
２００１年ごろに書いた幾つかの詩を組み合わせて創作した。
リスパダールは向精神薬の一種。
作者ツイッター https://twitter.com/2_vich
