今日も君にプロポーズする
通りなれた近所の商店街も並木通りもここ最近は真っ白で行き交う人も小さく丸くなって動く。背筋を伸ばし長靴をパタパタ言わせながら雪の中をスキップして居るのはただ1人だけだ。
「唯勿ー」
白い中に赤い点が手を振っている。
「あ 、い 、 りぃーーー」
ぱっと笑顔になり唯勿は雪の中を駆ける。転がりながらも何とか彼女の元に着くと抱きついた。
「嬉しそうねぇ 、」
藍李は呆れながら唯勿を追い払う。今日はあんなに苦労したテストが終わった次の日なのだ。
「だって今日から春休みだよ?!
圭ちゃんと沢山会える!!」
圭ちゃんとは唯勿の恋人である圭悟のことだ。2人は小学校で出会って以来ずっと恋人同士である。喧嘩はするが別れることはなく周囲の人に"公認"されているカップルである。今日も久しぶりに同じクラスの彼に逢いに行く予定なのだ。
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目が覚めた。 カーテンから差し込む光の色は向日葵色で昼頃であることがわかった。きゃあきゃあと向かい側のカーテンから聞こえる声が雪にはしゃぐ。あぁ、寒いのか、冬か。そう思った。
この部屋に閉じこもって1ヶ月が経とうとしていた。家のベッドとは違い少し硬い。お気に入りの枕もない。ただただ、帰りたいと思った。
今日も君にプロポーズする