Neo Shinjuku ward

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新・新宿区マニフェスト
一、全ての新・新宿区民に不安の無い生活を必ずお約束致します。具体的な内容と致しまして新宿区に住民票を移された区民の皆様の住居の確保、仕事の斡旋を必ず実現致します。

一、皆様からは住民税や社会保険の税金をお納めて頂きますが、税金の使い方を明確にしその使い方につきましても、区民の皆様が安心して暮らせる為にだけに使用させて頂く事をお約束させて頂きます。

一、乳幼児の保育園待機問題への取り組み、義務教育の無料化、高等学校や大学受験等の学校教育に対する不安も一切ありません。

一、所得格差やワーキングプア等の仕事や職業についての不安の緩和も保証されています。

一、未婚や既婚、子供の有無等の将来的な生活への不安もありません。またジェンダーレスの方々への差別や偏見もありません。

一、老人の方々には病気や介護のケアを充実させ、一人暮らしでも不安の無い余生をお約束致します。

一、全ての新・新宿区民に不安の無い生活を、ここに、我が新・新宿区のスローガンを掲げます。一週間後、皆様のお越しをお待ちしております。


婚姻率と出産率の低下により、この国は人口減少の一途を辿っていた。それに伴う所得の低下、税金の増加の悪循環によってこの国は崩壊寸前で、一つであったはずのこの国はやがて分裂を始め各都道府県や各市町区で独立が起きた。それぞれが様々な特色をアピールし、人集めに躍起になった。人がいなければ生活は成り立たない、国は成り立たないのだから。資本主義、平和主義、社会主義、どれにも長所と短所がある。何処に住めば良い?何処に行けば不安の無い生活を送れる?人々は悩んでいた。

「新・新宿区のマニフェスト凄くないか?」
「完璧ね、まさに完璧主義だわ!」
「安心して暮らせそう」
「新・新宿区に行こう」
「一週間後に集合よ」

新・新宿区のマニフェストを見た人々は目を輝かせた。これで貧困から解消される。将来の不安も払拭される。なんて素晴らしい区なんだ、新・新宿区!
そして人々の新・新宿区への大移動が始まった。我先にと人々が押し寄せたけれど、その殆どがこの国の貧困に喘ぐ者達でこの国の富裕層の者達は一人もいなかった。富裕層の者達にとって新・新宿区が掲げる完璧主義にはこれっぽっちも利益を感じられないし、第一これからの生活にこれっぽっちの不安も感じていないのだから。

一週間後の明朝、新・新宿区には溢れんばかりの人々が集結していた。これからは何の不安も無く生活していける…眩しいばかりの朝焼けを人々が眺めていると、空から大きな網が落ちて来た。人々は網に囚われ騒然とした。
「なんだこれは、まるで捕まったみたいじゃないか!」
「どういう事⁉︎網から出してよ」
「話しが違うじゃないか!」

人々が騒ぎ、喚いていると上空を旋回していたヘリコプターからアナウンスが流れ始めた。
「ようこそ!新・新宿区へ!皆様はたった今から新・新宿区の住民となりました。まずは住居の確保の為に只今から皆様には移動をお願い致します。移動先は隣国の◯◯国になります」

それを聞いた人々は愕然とした。◯◯国は社会主義を掲げる独立国だったからだ。
「◯◯国になんて行きたくない!」
「これじゃまるで、詐欺じゃないか!」
「奴隷の様に働かされるだけだ!帰らせてくれ!」

ヘリコプターのアナウンスは人々の声を無視しながら続く。
「新・新宿区の住民になられた皆様の移動終了後、直ちに仕事の斡旋を開始致します。皆様が不安の無い生活を送れる様に新・新宿区はこれからも邁進して参ります」

Neo Shinjuku ward

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-25

Copyrighted
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