ウナギ

高菜わさび

 
 「やってくれ!」
 「いいんですか?」
 「あぁ、構わない」
 ぎゅっと目をつぶり、覚悟を決めた豆腐は、すり鉢の上から飛び降りた。彼はこれからとある事に、身も心も捧げようと思っていた。
 「あっ、いい匂いがする」
 豆腐はその身をすりつぶし、蓮根と混ざった。もはやその形は豆腐だとは思えない。
 その姿のまま炙られ、秘伝のタレが塗られた。
 とあるウナギ屋の賄いとして買われた豆腐は、価格高騰で店が立ち行かなくなるのを間近で見たために、何とかしたいと思った。
 「へぇ~こういうのもありだね」
 豆腐は精進料理のウナギとなり、客に提供されることになった、お客様からの評判は上々、店に客足は戻ったが。
 「豆腐さんはもういないんだな」
 ポツリと初老の店主が言うと、長いこと連れ添った奥さんが、隣で涙がこみ上げてきた。
 

ウナギ

ウナギ

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日

CC BY-NC-SA
原著作者の表示・非営利・CCライセンス継承の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-SA