特急 京都 河原町行

【十三】

小雨に川幅は広がり
週末の梅田は紫陽花模様
疲弊を滲ませる休日午後の戦士たち
武具然としたipadが鳴っているぞ


【淡路】

窓から眺める景色に
父母の顔が過ったならば少女よ
膨らんだ鞄を以て叩き割れ 幻想
依然として変わらぬ創始以前の面持ち


【茨木市】

小声の車内アナウンス
気怠げな走行音 溌剌とした踏切
カメラをぶら下げた小太りの男
狙うのは電車かスカートの中か


【高槻市】

鼠が走り回って生憎
烏よ 溢れた端から食らってしまえ
水溜まりの様な濁り知らずの瞳
今日 未だ拝めぬ陽の光に酷似


【長岡天神】

空腹に地団駄を踏めば
親爺の舌打ち 気弱そうな母 沈痛
感情と思惑が飽和している密室で
誰も首を吊らないのが不思議

【桂】

月よ 値札は隠すべきだ
空虚だな お前は空虚そのものだ
闇に染まり損ねた様で鬱陶しいよ
いや 瞼の裏にまでは流石に来れないか

【烏丸】

烏 まだ食らい尽くせないのか
急がないと今夜に間に合わないぞ
分別を弁えない下卑た街の灯りに
醜悪さを晒されてしまうぞ

【河原町】

腰が痛い 目的地でもない
人情もない 美人もいない
ないない尽くしで身動き取れず
僕は君との約束に遅刻する

特急 京都 河原町行

特急 京都 河原町行

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-22

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