独立星系軍ユリシーズ プロローグ
==銀河の出来事==
遠い未来、遥か彼方の複数の銀河で・・・前代未聞の複数の銀河を巻き込んだ大戦があった。
この大戦は人類にとって計り知れない損害を出し、緑輝く惑星の人為的破壊がきっかけとなり戦争は終結。一時的な平和が訪れたが・・・その5年後、離反軍、犯罪組織による海賊行為、麻薬売買、人身売買等が横行し複数の惑星で大打撃を受けていた。これを受け平和と秩序を守るべく銀河連合を結成し、各惑星の軍とは別に各惑星より徴兵又は志願者で集められた銀河治安維持軍「ギャラクシーフォース」を創設した。だが・・・
==第7銀河 惑星イクシオル ユークリッド・ノヴェン遺跡==
かつて軍事大国として誇っていた惑星も今や崩壊寸前であった。銀河大戦時は物量質量共に質が高く無敵を誇っていたが、隣惑星のヴェクトル・ノルシディア帝国が銀河大戦終結と同時に宣戦布告を受け、軍事的重要拠点、政治的重要施設及び王家と家臣、政治関係者に狙いが絞られ、僅か1週間で王国全土が火に包まれ、指揮無き国と化した事により時代が退化。銀河連合軍の進駐により一時は平安が取り戻されたものの、送られてきたのはならず者部隊で有名な連合軍第999機甲軍であり、殆どの地域で時代退化の追い打ちをかけられていた。
「おい!こんな金じゃ足りねえんだよ!」
「しかし役人様!・・・」
「俺が言ったのは10万フォルドだ!10フォルドじゃねぇ!!!」
「どうしろと!」
「こいつを頂いて行くぜ!」
放火、略奪・・・他の惑星と比べ1000年以上もの時代を退化した事により民は何も出来ずにいた。
「何故こいつらを送って来たんだ!?」
この古の遺跡が残っている村は平凡な人達が暮らしていたが一部の部隊が欲を出した事により辺境の村で略奪・拷問・殺戮を繰り返しては遺跡を探している。
前もって村人は少年を遺跡の中に匿っている・・・
「オレルドさん!フォスさん!」
「君は・・・かの軍を・・・率い・・・この惑星から彼方の惑星へ逃げろ!」
「訳が分からない事を言わないで下さい!このままでは貴方方も!」
「俺は簡単に死なんよ・・・これでも王国軍第7騎士団だからな!」
「オレルドさん・・・」
「行け!銀河の為に!!!お前の真の名・・・ユウ・ムラサメとして!!!」
必死の説得を受け遺跡の奥へ行こうと100歩程歩いた時であった・・・ドア越しの銃声が響き、連合軍兵士の声が聞こえる。
「何の為の銀河連合軍だ!!!何が平和だ!何が秩序だ!」
ドアに張りつく連合軍兵士に向かって叫ぶ。
「大人しくしてりゃ楽にしてやるから動くんじゃねえぞ!」
返事がこれだ・・・ムラサメは遺跡の奥へ行くと謎めいたスイッチを発見する。
「こんな事をして許されると思っているのか・・・」
惑星で好き勝手続けている第999機甲軍を許すまい思いつつスイッチを押す。
遺跡の壁が動く・・・ドアのように開いた遺跡の扉の奥より艦船と思わしき物が置いてあるのを発見し、近寄ると入り口脇に何らかの認証装置が出現する。
「僕1人で軍と戦えと・・・?どう見ても軍艦だ・・・」
認証装置に指を触れると光が強くなり扉が開く。
「僕を受け入れるというのか・・・?」
モニターに文字が表示される。
「お待ちしておりました・・・ユリシーズ軍総司令官殿・・・何の事だ?」
「待っていたぞ。」
「誰だ?」
周囲を見渡を確認するも誰もいなかったが、スピーカーの音に気付き耳を傾ける。
「・・・この音声が流れているという事は私は既にいないであろう。私はユリシーズ・エレクトロニクス会長ハラ・グロスマン、この遺跡を開きし者よ・・・我が社の最後の技術・・・ユリシーズを授ける。人工知能と自立型AIシステムを搭載し、粒子から作られる兵士・・・そなたがどう使おうが、問わん・・・悪行に使われない事を祈り・・・」
爆発音が響きここで音声が途切れる。
「銀河大戦終了直後か・・・ユリシーズ・・・」
遺言とも言えるメッセージ・・・見ず知らずの人に任せるのはどうかと思いつつ足を踏み入れようとした時、銃声が鳴り銃弾がかすめ振り向くと村を襲った999機甲軍・・・
「おやおや・・・お子ちゃまが兵器という物騒な物を持つなんて感心できませんな。」
「チッ・・・」
「その兵器は生命なき兵士を作り出すとんでもない兵器なのだ。大人しく渡してもらうか・・・」
「生命無き兵士だと・・・?」
「そう!300年前に禁止条例を発布されたというのに・・・忌々しい兵器を。だけど・・・ま、いいでしょう。生命無き兵士・・・通称ガーディアンは人工知能を搭載したプログラミング実体兵なんですよ。難しいでしょうかね・・・つまりは・・・簡単ンに言えば2次元の兵士を3次元にしたと言えば分かりやすいでしょう。さて・・・鍵を渡してもらいましょうか!」
「あいにく鍵は・・・ここだ。」
村雨は封印解除と同時に背中に刻まれた鍵を見せる。この紋章はユリシーズ・エレクトロニクスの技術全てを保有する権限と動かす権限がある。ムラサメに引き継がれたのはユリシーズ社最後の会長が死の直前にスイッチに紋章を封印し、ムラサメがスイッチに触れ封印を解いたと同時に自動的に村雨に権限が引き継がれた。
「紋章・・・だと・・・」
「惜しかったな!この軍はあんたらが好き勝手使う軍じゃない!」
「この生意気な人間がぁ!!!」
銃を向けられ、一歩下がる村雨。
「何もかもが人類が恨みし存在!ここでくたばれ!!!」
引き金を引こうとした時、何者かが高官と部下を一発で射殺する。
「誰だ!?」
発砲のあった方向へ向くと見慣れぬ人間と思わしき兵士がアサルトライフルを持ち立っているのを発見する。
「お待ちしておりました・・・ユリシーズ軍総司令官。我が艦に歓迎します・・・」
「ちょっと待て!総司令官って・・・」
「貴方の背中に付いている紋章・・・それが我がユリシーズである証です。」
謎めいた人物に招かれ乗艦する村雨はブリッジに案内される。
「貴方の席です。」
「いきなり総司令官と言われても何をするのか・・・それに貴方達は?」
「失礼、説明が遅れてしまいました・・・」
機械のような人間は電磁式ホルスターから銃を取り出すと自らの腕を撃ちぬく。
「!!!」
「吃驚させてしまい申し訳ありません。我々は自立型AIで動く兵士・・・ガーディアンです。この通り機械でもなければ人間でも無い・・・」
撃ちぬいた腕は何らかの粒子が働き、既に穴が塞がれている。
「製造は・・・?」
「艦の中央生産庫・・・セントラルコンピューターにより1日に100体程生産されています。メモリの関係もありますので・・・兵種は4種類で陸空海宇でそれぞれ25体程です。生産数が少ないのが難点ですが、訓練を必要としておらず熟練者級の腕を持って軍事的活動から平和的活動に従事・・・更に学習システムを搭載しておりますので更なる強化も可能です。」
「分かった。でも・・・目的地を・・・」
「とりあえず。宇宙に散らばる原始的惑星へ行き、ブリッジの人員を収集するのが得策かと思われます。流石に我々では補えない部分がありますので・・・」
「待て!原始的惑星って・・・銀河関連の・・・て、無理か・・・」
「ええ・・・」
「だからと言って・・・石器時代の人間にいきなり機械を使えとなるんじゃないか?」
「そこの点については我々がしっかり指導を・・・」
「あんたらがやればいいんじゃないか?」
「それが・・・ユリシーズのルールなんです・・・」
「削除しろ!」
「それが・・・何やっても削除出来ない仕様に・・・なので最低限の動作でしか艦を・・・ID、パスワード共に100年前に・・・」
「・・・分かった・・・見る限りでは・・・」
「操艦を中心とする航法管制官、この艦の兵装を管理する兵装管制官、電子戦からレーダーまで管制をする電子管制官、艦の全ての動力を管理する機関管制官となります。オプションで秘書官を付けておけば艦内の生活を・・・」
「もういい・・・それより出発しないと・・・」
モニターを見ると艦の入り口に兵士が集まっている映像が確認できている。
「少なくとも外部には揚陸艦1隻・・・航空機が12機程ですね。例の狙撃した人間・・・撃ったのは少々まずかったでしょうか?」
「まあ・・・いいんじゃないか?あんな人が司令官ならいいんじゃないか?別の意味で言えば気絶の方が時間が稼げた・・・」
「とりあえず・・・第23銀河星雲へ向かいます。」
「どんな銀河だ?」
「銀河連合軍の管轄外となっている星雲で・・・我が軍最大の艦隊であるユリシーズ統合軍第1艦隊が今回の封印解除に伴い、行動を開始している筈です。元々、ユリシーズ軍はこの王国ですら極秘にしていた存在なので・・・」
「何の為にだ?」
「会長の意志に関しては分かりかねます・・・」
「一応聞くが、必要な人員がいなくても艦全体の機能は動かせるんだよな?」
「ええ・・・人間が動かすより30%程稼働率は下がりますが・・・」
「動ければ十分!!!」
別の扉より兵士が出てくるとそれぞれの配置に就く。
今回に限って村雨は働きぶりを見る。
「艦内の報告を!」
「機関出力上昇中、ハイパードライブ使用可まで60秒!」
「主砲は洞窟内の為、動作を確認できません。対空機関砲、高射砲、パルスレーザー、各VLS共に正常に作動。」
「周囲、コロラル級重巡洋艦3隻、小型戦闘機20機を確認!衛星軌道上では1隻・・・」
「第1艦隊との通信・・・座標データを受信、大気圏内にて光学航法を使用。」
「了解、オーディン・・・発進!!!」
独立星系軍ユリシーズ プロローグ