失意

 脳は腐る。眼球の奥で膿が視界を遮り心臓は蛆と共に鼓動する。夕方になると沼の手に捕食され身動きが出来ない、息を吸うにも見えない影に恐れながら、不安のガスに謝り、吸う。身体は無力になり脂質の栄養だけの塊になっている。意識はループを続け活力を飲み干す。
 かつて友と遠出をしたあの日が懐かしく、眩しく、尊く、静かに蘇る。桜門を潜り抜け、刺す冷たさの外の空気を閉め出し、解く様にして浸かった湯は若い私たちを暖めた。そうして、これからの行く末を語り合ったものだ。しかし、それは蛍の光の粒よりも脆く、容易に消え去った。灯はもはやない。先で味わった馬刺しの肉汁も私の舌は何も欲しいと願わない。
 今、私は鼻を濡らし、懇願する。鞭を打ってくれ、抉り出してくれ、熱した鉄で骨を焼いてくれ、皮膚を裂いてくれ、この沈んだ無力な塵の結晶にパンを与えてくれ。

 彼は言った。「君は良く頑張ったよ、大丈夫、すぐに暖まるから、僕が薪を放ってく置くよ」
 暖炉の炎はパチパチと弾けて暖色の風が舞い、部屋を明るくした。
 「この部屋、意外に広いじゃないか」

失意

失意

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-20

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